表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、この人生が終わったら、異世界行ってSSR嫁と冒険するんだ  作者: 新木伸
ハルナテーア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/35

#012.檻のなかの私 【ハルナ視点】

 私は檻の中で居住まいを正して、座りつづけていた。

 月光が格子の隙間から差しこんで、私の揃えた膝のうえに縞を落とす。


 あの人が、言った。

 私をここから出すと。必ず戻ってくると。


 私は、言った。

 信じますと。


 私はあの人の名前を知らないし、あの人は私の名前を知らない。

 だけど一目見たときにわかった。この人なのだと。


 昔、いまは亡き父母に言われたことがある。

 狼牙族に生まれた者は、いつか必ず、お仕えするべき相手と――真のあるじと出会うのだと。

 私は、そんなことは信じていなかった。父と母は部族の誰よりも強く、自分はその父母に仕えるのだと思っていたから。


 だがその父母は倒れた。

 狼牙族にとって、それが尋常なる勝負であっても、たとえ尋常ならざる勝負であっても、勝利と敗北とは、神聖なものだった。

 騙し討ちで罠にかけられたのだとしても、私に恨む気持ちはない。狼牙族の信仰する「真の強さ」というものは、騙し討ちや罠や、その他ありとあらゆることを越えたところにあるものだった。

 そして〝戦利品〟として、自分が奴隷に身を落としたことにも不平はない。


 ただし、〝主人〟と称して私を買おうとする者に、従うかどうか――それは別だった。


 服従の首輪を付けられていても、それで縛れるのは体のみ。心までは決して縛られない。

 私の心は、いつか出会う真のあるじに捧げられている。

 そして、その方とは、もう出会った。


「まったくおまえは、困った不良在庫だね」

「ご迷惑をおかけしています」


 声の主は、この奴隷店の店主。

 しばらく前から店主がそこにいたことに、私は気づいていた。狼牙族は狼とおなじぐらい鼻が利く。


「迷惑を掛けていると思うなら、売れていってくれると助かるのだけどね」

「すみません」


 私は本当に済まない気持ちで、そう言った。


 四度、私は返品された。

 そのうちのどの一回でも、殺処分されても仕方がなかった。

 なのにこの店主は、私を生かしてくれた。チャンスを与えてくれた。


 この人は悪人のふりをしているが、いい人だ。狼牙族は匂いで人を嗅ぎわける。この人からは、いい人の匂いがしている。


「そういえば、小耳に挟んだのだがね……」


 店主は世間話をするような口調で、そう話しはじめた。

 私は耳を傾けた。


「今日、冒険者になったばかりの若者が、大金を求めて、一人でダンジョンに潜ったのだそうだ。そしてこんな遅くになっても戻ってこないそうでね。明日の朝には、捜索隊が組まれるそうだが……」


 私の尻尾が直立した。

 迷宮に何度も潜った私には、その恐ろしさを、よくわかっている。


 明日では遅い。今夜。いますぐに出る必要がある。


 そう……。

 私にはわかった。わかってしまった。

 あの人が私を身請けするお金を稼ぐため、冒険者になったこと迷宮に潜ったこと。

 そして捜索隊の目的が、初心者冒険者の救出ではなく、遺体回収にあること――。


「彼には期待していたから、残念なことにならなければいいと思っている。なにしろ。うちの不良在庫を買い上げてくれるかもしれない人だからね」


 私は物凄い焦燥感に駆られていた。

 店主がなにを思って、このことを告げてくれたのか、正直、わからない。


 いますぐに迷宮に駆けつけたいところだが……。奴隷である身の私には、逃亡は数分後の〝死〟を意味している。

 あの人の元に辿り着くことさえできないだろう。


 私は凄い形相をしていたかもしれない。獣の顔をしていたかも。


「ああ……、そうそう」


 立ち去りかけていた店主は、なにかを思い出したかのように立ち止まった。


「今夜は。よい月だね」


 夜空を見上げて、そう言った。

 正直――。月なんて、いま――。


「散歩に出かけることを許可しよう。――あまり遅くならないうちに帰ってくるんだよ」


 店主は、こんどこそ、歩き去っていった。


 ああ。やはり私の嗅覚は正しかった。

 店主からは、いい人の匂いがしていた。


 私は、月に向かって高々と遠吠えをすると、檻を打ち破って、外へと出た。

 満月の夜の狼牙族は、すこしばかりスペシャルなのだ。


 そして私は――。

 あの人のもとへ――。


 ---------------------

 名前:ハルナテーア

 種族:狼牙族

 年齢:17

 職業:獣闘士Lv23


 HP :115/115

 MP : 78/78

 STR:131

 CON:120

 INT:85

 WIS:98

 DEX:87

 AGI:250

 CHA:48

 LUK:20


 装備 :奴隷の服

 スキルポイント:0

 取得可能スキル:(一覧)

 スキル:

 『爪闘技』『剣術Ⅲ』『盾装備Ⅱ』『鎧装備Ⅲ』

 『腕力上昇Ⅱ』『敏捷上昇Ⅳ』『体力上昇Ⅲ』『器用さ上昇Ⅱ』

 『フットワーク』『超集中』『ド根性』『嗅覚Ⅲ』

 『チャージ』『ソニックブーム』『フィニッシュクロウ』『獣咆哮』

 『礼儀作法』『もふもふ』

 転職可能職業:

 『戦士Lv10』『村人Lv5』

 ---------------------

 獣闘士は、獣人種限定の戦士の上位職です。

 ぶっちゃけ、現段階の主人公よりも強いです。この第一の嫁さん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ