逆転の発想
更新再開します!
「紫乃さんを元に戻すにはどうすればいいだろう」
いつものように寝る支度を全て済ませ、私は布団を敷いて横になっていた。
いろいろ対策を取るべきことはあるとしても、とにかく今は眠い。
目を閉じるとあっという間に疲れが出てきて、眠りに深く落ちていく。
「ん……」
そして、体に重たい何かがのしかかってくるのを感じた。
布団がめくられて肌寒く感じた。
かと思えば温かい体温がくっついてきたようで。
ふわっと香ってきたいい匂いに、意識が一瞬でクリアになった。
「……紫乃さん?」
「目を覚ました? 楓」
jigjwiamfklafjifejefagfagaggak――!!!!!!!!!!
吹っ飛ばしそうになるのをすんでのところで堪え、私は驚いた声をあげる。
「ど、どうしたんですか~? びびび、びっくりしましたよ……!」
「いつものことじゃないか。いつもこうして一緒に寝て、温め合っていただろう?」
一切そんなことありません! と思いながら、私はずりずりと布団から逃げ出す。
しかしすぐに肩を押さえられ、ズッと布団の中に戻される。
私はちら、と天井を見る。夜さんの瞳が輝き、音もなく立ち去った。
紫乃さんが胡散臭いので、夜さんに念のため待機してもらっていたのだ。
夜さんは羽犬さんを呼びに行ってくれたはずだ。時間を稼ぎつつ、私はこの状況について調べなければならない。
「紫乃さん……」
灯りのない真っ暗な部屋、覆いかぶさった紫乃さんの匂いはいつもと変わらない。けれど眼差しも触れ方も、話し方も違う。全体的に、妙に粘っこい。
本当の紫乃さんにこんな感じに迫られたら、私はどうするのだろう。
想像しようとしたところで、急に頰を撫でられて悲鳴が出た。
「う、うあー!?」
顔を思いっ切り押しのけると、しかめ面で紫乃さんが見下ろしてくる。
「なんなの? 恥ずかしがってるの?」
「え、ええと……」
紫乃さんがこんなことをするわけがないし、キスを拒否して嫌がるような人でもないはずだ。
「ほら。いつもしていることだろう? 目を閉じて」
「ひ、ひいい……」
まだ口にはされたこともないのに、このなんか変な紫乃さんにキスされたくない。
私はどう振る舞うべきか、必死に考える。
目の前の紫乃さんらしき人は、私が抵抗しないと思っている。
今のこの気持ち悪い行動が「紫乃さんらしい」と思っているのだ。冗談じゃない。
普段の紫乃さんを知る人が見たら、明らかにおかしいと思うような行動をするのはなぜだろう。
これでは、入れ替わってもすぐにばれてしまうというのに─。
「もしかして……私がすぐに気づくように……?」
わざと本物の紫乃さんが、噓を教えた?
「楓?」
目の前の気持ち悪い紫乃さんが、真顔で私を見据えている。
ハッとして、顔をぶんぶんと横に振ってごまかした。
「あはは、その、紫乃さんにぼーっとした寝顔を見られて恥ずかしかっただけです」
「可愛いよ楓。愛しい俺の妻。もっと近くに来て? 体温を感じたいんだ」
「うわぁ……」
「うわ?」
「あ、あはは……どきどきしちゃーう」
今すぐにはやかけんビームでぶっ飛ばして逃げたい。
しかし今は穏便に話を合わせるしかない。
私もへらへらと笑いながらもじもじと距離を取る。けれどまた、引き戻される。
耳元にキスをされ、悪い意味の悲鳴が出そうになるのを堪える。
するりと衣擦れの音を立て、紫乃さんが後ろから私に腕を回してきた。
「楓」
耳を掠める囁き声。うなじの産毛が総毛立つのを感じる。
体に触れようとする大きな手をそっと摑み、私は平静を装う。
「あ、あのちょっと近すぎません?」
「夫婦なのに、近すぎることなんてないよ。それとも……久しぶりだから恥ずかしがっているの? ずっと触れて欲しかったの?」
さりげなく久しぶりかどうかを確認してきたのは、私たちの関係を探っているのだ。
指を絡める。
紫乃さんの偽物が、ふっと微笑む気配がした。
もう嫌だ。普段の紫乃さんならともかく、今の紫乃さんとこんな距離でもちっとも嬉しくない!
むしろ気持ち悪すぎる! 顔も声も体も紫乃さんなのに、違う違う違う! なんか変だ! 変すぎる!
焦りと不快感が頂点に達した私に、電撃のようにアイデアが降りてきた。
攻撃は最大の防御なり。
私は例の大修行イベントの日を思い出す。
あのとき最後に私が紫乃さんに勝てたのは、守るのではなく攻めたから。
攻められるのが嫌なら、こちらから攻めるしかない。
「……紫乃さん」
私は覚悟を決め、胡散臭い紫乃さんに向き合った。
ええい! なるようになれ! と、迫ってくる紫乃さんの胸に手を当て─私は勢いよく押し返して、体重をかけた。
「え」
とすん、と紫乃さんが布団に倒れ込む。
茫然としている彼に、私はすぐに馬乗りになる。
「可愛いですね紫乃さん」
「楓?」
「いつもみたいに可愛がって差し上げますよ」
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中身については書報にてまとめてます。よろしくお願いします。
たっぷり書きました!






