尽紫の本心
贄山が外法でよみがえらせていた魂たちを、楓と紫乃が二人で禊ぎ祓いしたあの日。
生ゴミから作った肉塊に収められ、苦しみもがいていた神霊たちを全て肉塊から引き剝がし浄化した二人は、最後に外法で筋骨隆々になっていた贄山に暴力を与え続け、見事元の姿に戻した。
あのとき紫乃と楓の二人は疲労していた。
筑紫から遠く離れた、理の異なる関東の地で、霊力も低下し最も無防備な状態だった。
その隙を狙って、尽紫は楓に接触したのだ。
奥の間に手招きし、一人だけ密室に誘い込み、楓を奪うつもりだった。
しかし楓は強く、操り人形と化した魂のない肉塊を浄化の光条で一網打尽にし、ついに楓と尽紫二人だけの密室になった。
そこで楓は尽紫に言ったのだ。
─尽紫。もしかしてあなたは─。
─提案があるの。私はあなたと─。
気がつけば尽紫は、ありったけの霊力を使って楓から記憶を奪っていた。
無残に気を失い、血と肉塊で穢れた畳に横たわる楓。
尽紫は肩で息をした。
彼女から突きつけられた言葉に動揺した自分が許せなかった。
部屋から出て、あとは瀕死になった贄山から霊力を奪い尽くし、贄山秘蔵の呪具全てから霊力を奪い、生きながらえて今に至る。
「許さない。私にあんなことを言った、楓ちゃんを許さない」
紫乃の肉体を奪った尽紫は、ぎらぎらとした怒りと嗜虐の喜びに震えながら、楓の寝室へと向かった。






