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【コミカライズ開始】身に覚えのない溺愛ですが、そこまで愛されたら仕方ない。忘却の乙女は神様に永遠に愛されるようです  作者: まえばる蒔乃@受賞感謝
第五章・祭り

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九州場所にはまだ早い〜大画面から新天町の攻防

 行く手を阻むあやかしや神霊さんたちを回避しながら到達したのは、西鉄福岡天神駅の大画面。

 待ち合わせによく使われる天神の中心地だ。


 大画面には私たちの様子と会場の様子が画面を分割してワイプで映し出されている。


「楓ちゃん、頑張れー!」


 羽犬さんがどアップで映る。天神中央公園はすっかり野外フードフェス状態のようだ。


「なるほど、ギャラリーがちゃんと私の行動を見てるってわけね……」

「楓殿! 見ろ!」


 夜さんが改札口方向を見上げながらにゃにゃっと叫ぶ。

 改札口に続く大階段から、ドドドドドと手足の生えた梅の木がやってきた!


「な、何これ!」

「楓殿、あの光のびゃーっとしたやつを出すのだ!」

「はやかけんビームだね! えーい!!」

 しかし私のビームを、梅の木たちは弾き飛ばす。

「弾き飛ばせるんだ!?」

 そのとき菅原道真(せんせい)のダンディな声が聞こえてきた。

「甘いぞ楓殿。我が眷属たる梅の木の精霊たちに……地下鉄のはやかけんの光条は、効かぬ!」

「ええーっ、じゃ、なんなら効くんですか!?」

「うちの沿線のあれだ、白い長い獣がついているやつ」

「えーん! 誰かnimoca貸してーッ! あのフェレットがかわいいのーっ!」


 しゃんしゃんと神楽鈴を鳴らしても効果がない、むしろ霊力を吸われてる気がする。


「楓殿! ここは某が食い止めようぞ!」


 私を庇うように、夜さんが梅の木の大群の前で腕を開き立ち塞がる。

 そしてガバッと羽織を脱いだと同時、膨れ上がるように巨大な猫になっていく。

 菅原道真(せんせい)の声も嬉しそうに響く。


「ふむ、肥前の猫又よ。野見宿禰の子孫たる儂に相撲で勝負を挑むか、その気概やよし」


 巨大化した夜さんが梅の木の皆さんを食い止めてくれる。


「ふんぬーっ」

「ありがとう! せめて夜さんにパワーをあげるね!!」


 私は、はやかけんビームを夜さんの背中にぶつける。


「おおおおッ!!」


 夜さんの体がますます大きくなる。

 ついには天神駅からはみ出して、超巨大な毛玉のようになった。

 しかし巨大な猫一匹では隙間を抜けていく梅の木を全てフォローできない!

 その時、吹き抜けの二階からドスドスッと何かが落ちてくる!


「助太刀致す! 肥前の猫又よ!」

「そなたらは……牛尾梅林の梅たち!!」


 夜さんが嬉しそうな声を上げる。佐賀からやってきた梅は手足を生やしてシュタッと降り立つと、太宰府の梅たちと激突した。


 手足の生えた梅VS梅!


 熱い戦いに、私も先生も、そして大画面に映し出される皆様も目を奪われる。


「九州場所には早いが……良き勝負よの!」


 梅の木の一本が拳のような腕をわななかせる。多分あれが菅原道真(せんせい)が入ってるやつだ。

 夜さんが梅を二丁投げで打ち倒しながら、叫んだ。


「行ってこい楓殿! 必ずや修行をものにしてくれ!」

「ありがとー! 首輪何色がいいか考えといてね!」


 私は早速夜さんから手に入れた五色布の一つを神楽鈴につけ、駅から南に広がる商店街、新天町のアーケードを駆け抜ける。


 夏になると山笠が設置される開けた場所まで出ると、新天町サンドームのからくり時計が音を鳴らした。


「あらやだ、楓ちゃんだわ」

「花を散らすぞ、追いかけるぞ」


 オルゴールの人形たちが私を見つけ、巨大化して追いかけてくる。


「うわっ! はやかけんビーム!」

「おおお低刺激で心地よい」

「気持ちいいんですね!?」

「ずっとあそこにいるもんで、肩こりしとるんよ~」

「今回の件が終わったらたまにビーム当てに来ますね」

「助かるわ~」


 彼らは私のビームが心地よかったのか、そのまま壁をよっこいしょと登ってからくり時計まで戻っていった。肩こりがとれて満足したらしい。

 私は新天町を抜け、次はどこに行くか悩む。


「うーん、逃げ回るだけじゃダメだよね、五色布持ってる人、探さないと……」


 そのとき、柄にくくりつけていた五色布が、ピンッと中洲方面を指す。


「そっか、あっちに行けばいいのね?」


 五色布がこくこくと頷くように動く。便利な力だ。ダウジングくんと名付けよう。


「地下街通るとまた大変だから、次は上を通ろう」


 私は明治通りと渡辺通りが交差する、天神交差点まで走った。天神の繁華街の中心地にて、今はなき天神コアと福ビル、イムズが手を取り合って踊っているように見える。


「あれは幻覚かな……」

「いや、あれはビルの付喪神だ。現実で姿を失っても、ああして元気に過ごしておる」


 隣から女性のなまめかしい声で解説が入る。

 見ると、十二単の女性がストローで缶チューハイを呑んでいた。


「あっ、確かこないだ小倉から筍を持ってきてくれたお姉さん」

「妾は平教経の妻、海御前と申す」

「先日はありがとうございました」

「ほほほ、あの後楓殿も大変だったようだの。息災で何よりじゃ」

「海御前様……たしか壇ノ浦で河童を支配していらっしゃるんでしたっけ」

「ほほ、記憶を失ったと聞くが覚えておったか」


 私はいえ、と首を横に振る。


「最近はずっと修行であやかしや神霊の皆さんのことを学び直してたんです」

「偉いのぅ、学を大事にするおなごは好ましい」


 くぴくぴと缶チューハイを立ち飲みする姿さえ優雅なのだから、平家はすごい。


「先日は酔っていてすまなかったな。モノレールから新幹線乗って地下鉄乗り継いで天神に来て、それまでについ酔いが深く」

「……待ってくださいずっと呑んでたんですか」

「ほほほ」

「今日は何本目ですか?」

「……秘密じゃ♡」


 ウインクでごまかされる。

 踏み込んで聞くのもあれなので、ウインクの綺麗さにごまかされることにする。


「して、楓殿、可愛いなあそなたは」

「えっあっどうも」

「ほら」


 ふっ。

 吹き消すように息をかけられ、花が一つ─散る。

「あーッ!!」


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