お祭り騒ぎin天神中央公園
すみません、今めっちゃバタバタしてましてコメントお返事遅くなってます……!
有り難く拝読しております……!
数日後。
いつものように屋敷の門から飛び出し、水鏡天満宮に出た私と紫乃さんは、一緒に天神中央公園に向かった。
アクロス前の信号待ちで、紫乃さんが説明する。
「もう既に皆が霊力を合わせて、複製神域を形成してくれている。あとは楓と俺が入るだけだ」
「楽しみですね」
「大牟田の件より何倍も大がかりだからな。羽犬も会場のフード作りに奮戦してたし」
「待って、会場? フード?」
「福岡市役所西側ふれあい広場会場もあるぞ」
「待ってください会場二ヶ所って」
天神中央公園に入った瞬間、景色ががらっと変わる。
公園で憩う人々の姿が消え、にぎやかなフェスの喧騒が目の前に広がった。
「……」
目を擦り、二度見する。やはりフェスが開催されていた。
天神中央公園には長テーブルと出店が並び、ステージではライブが行われている。隣にタイムスケジュールが書かれている。人魚さんたちのダンスは夜らしい。って、そんな問題ではない。
「今日ってミュージックウィークの日ですっけ、博多どんたくの日ですっけ、クリスマスマーケットですっけ」
「違うな、人間社会ではただの平日だ。楓の修行大会をすると話をしたつもりだったんだが、なんか勝手に複製神域でお祭り騒ぎをやるって話になってしまったらしい」
「ああ……」
「祭り好きばっかりだから仕方ない。こうなってると知ったら博多の連中も来たかっただろうなあ」
舞台の上で華麗なダンスを披露していた筋骨隆々で翼が生えた和装男性グループの演技が終わる。TNG四十八とは一体。
「あ。もしかして天狗よんじゅーはち……」
私が気づいたところで、彼らがこちらに注目した。
「筑紫の神よ、そして楓殿! さあさあこちらへ」
拍手で迎えられ、私たちは流されるままに舞台に上る。
司会の天狗さんは大きな猛禽類の翼を背負った、腕を剥き出しにして剃り込みを入れ、更にタトゥーまで入れているお兄さんだ。ヤカラ感が半端ない。
「さあ、ついに今日の主役がやってきたぞ! 筑紫の神・紫乃様と、巫女の璃院楓殿だ!! 司会進行は儂、TNG四十八が一人、宰府高垣高林坊が務めまする!」
うおおおお! きゃあああああ!
野太い声と黄色い歓声、両方が響いてくる。
慣れた様子で片手を上げて声援に応える紫乃さんの横で、お辞儀をする私。
「さて、今日は楓殿の修行として、天神地区全体を大胆に複製神域としたわけだが! 楓殿にはまず、紫乃様より神楽鈴が授与される! 元々禊ぎ祓いに使っていたものだ!」
紫乃さんがスーツのジャケットの中を探ると、明らかにスーツの懐に入るサイズではない神楽鈴がぬっと出てきた。相変わらず時空が歪んでいる。
「そろそろこれを扱えるようになって欲しいと思ってな」
「あ、ありがとうございます……?」
紫乃さんがマイクを受け取り、私に向き合いつつもみんなに聞こえるように説明する。
「楓の霊力を鈴の数だけ周りに広く響かせる道具だ。ビームとは違って吹っ飛ばさず、禊ぎ祓いの作用だけが周囲に届く穏やかなものだ。元々五色の布をくくりつけて、その一本一本ごとに力を応用できるようにしていた。だが今は全て外している」
私はみんなの注目を浴びる神楽鈴を掲げてみせる。
確かにそこには五色布がついていない。
紫乃さんが指を二本立てる。
「今日の修行は二つ。攻めの修行と、守りの修行だ。まず」
紫乃さんが私の髪を撫でる。
後ろで一つに結んだ髪に、梅の枝を模した簪が挿される。
「梅花は五つ、触れられたら散るようにできている。ここにいるあやかしと神霊みんなで、この梅花を散らすべく襲ってくる。楓は全てを散らさないように守ること。これが守りの修行だ」
そして、と紫乃さんは周りを見渡す。
「ここにあるはずの五色布はあやかしと神霊のうち、特別な五名に渡している。それを全部奪うこと、それが攻めの修行だ」
「……け、結構大変ですね……?」
ここにはあやかしと神霊が山ほど集まっている。
彼らの攻撃から逃げつつ、同時に五色布を奪うとはなかなかハードでは?
唾を飲む私に、紫乃さんがにこっと微笑んで続ける。
「ちなみに楓の花を散らしたら一つ、楓が言うこと聞くようになっている」
「えっ」
「そして楓が五色布を奪ったら、相手は楓の言うことを聞くことになる。つまりは散らされたら奪え、奪われたら散らされるのを覚悟しろ、ってことだな」
「なるほど、そこで言うことを聞くのをチャラにするためにゲーム性が増す、と……」
「制限時間は日没まで。天神の範囲から出るのもあり、今日は特別にどこまでも複製神域を広げてやろう。……説明は以上だ。意気込みを、楓」
紫乃さんがマイクを私に向ける。
楽しそうな紫乃さんに、私も不敵に笑ってみせた。
「完璧にやり遂げて見せますよ。見ててくださいね!」
うおおおおとみんながはしゃぐ。
高林坊さんが、高らかに声をあげた。
「それでは皆の者、カウントダウンをいたすぞ! 楓殿、皆の者、準備はよろしいか!」
私は手のひらと拳をぶつけ、パンと音を鳴らして笑顔を向けた。
「いつでもどんとこいです! 皆さん、よろしくお願いします!」
「それでは……五、四、三、二、一、開始ッ!」
ブオオオオオオオオ!
高林坊さんの声に合わせて、TNG四十八の皆さんが一斉に法螺貝(ほ ら がい)を吹く。
「うおおお! 先手必勝!」
「わっ一斉に襲ってくる!」
「士気が高いな、いいことだ」
紫乃さんが綺麗に微笑み、私の背中を押してくれる。
少しかがんで、耳元で甘く囁く。
「気張ってこい、楓」
「はい、行ってきます!」
一斉にこちらに向かってくる皆さんに、まずは最初の一発を放つことにした!
「はやかけん……ビーム!」
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