第1話 転校初日。青春を謳歌したい。
「今日は転校初日。さあこれから青春を謳歌するぞーっ!」
『青春を謳歌する』なんていう古臭いフレーズを使うのは、作者のように、もう謳歌できない人だけだと思うのだが。
校長室に現れたのは、帽子を被った男性。
「早速だが、君のクラスが決まった。君は……馬組だ!」
「今なんておっしゃいました? 馬組?」
「いかにも。我が校は1学年に2クラスしかない。1組と馬組だ」
「それなら1組と2組でしょうが!」
「君は馬の指の本数を知っているかね?」
「馬の祖先は指が5本ありました。そこから中指だけが進化して、1本になったと聞いています」
「そうだ。だから指折り数えると、1組の次は馬組だあーっ!」
「私、こんな体型だから走るのも速くないし馬組は無理だと…」
「そんな事はない。君は適正検査の結果、満場一致で馬組編入が決まったのだ」
「そんな適正検査、やりましたっけ?」
「君の名前は馬田馬美だ。これ以上の適性はあるまい」
「ええっ、私そんな名前だったの?」
「自分の名前も知らないのかね? 今までどうやって生きてきたのだ?」
「(そういえば私、転校する前の記憶が無い。転校と同時に今までの記憶を失ってしまったんだわ)」
「名前でクラス配置を決めるんですか?」
「君は『リングにかけろ』や『聖闘士星矢』は知っているだろう?」
「バカにしないでください。これでも毎週日曜日には同人誌即売会に顔を出します」
ネタの古さに思わず溜息が出る若い読者の皆様。
「作者の車田正美先生は『車田組』に所属しておられた。君すなわち馬田馬美が馬組に配属されても不思議はないだろう」
「車田組はヤ◯ザの組織でしょうが!」
「そう見えるかもしれないが、漫画のプロダクションだ」
「初めに君を厩舎に案内する。ついてきたまえ」
「校舎じゃなくて厩舎……」
「おおっと紹介が遅れていた。私の名は『御主人様』だ。君を調教するのが私の役目だ」
「ええっ、私、ご主人様に調教されちゃうのぉぉぉ……」
つづく




