第31曲:勇気のしるし
・・・段々、タイトルがマニアックかつ、古くなってないか・・・(汗)
朝、目が覚めるとアルムとアンソニーの姿は、既になかった。
俺が寝坊したわけじゃないぞ?
まぁ、確かに良い夢は視たが・・・。
弟の周りに人がいる夢だ。
いや、多分、夢じゃないんだろうな。
勿論、俺の妄想でもない。
寝ている間に弟と少しだけ強く繋がれたんじゃないかと・・・。
「あれは・・・"アイツ等"だったな・・・。」
弟の周りにいた人物達の中には、俺の見知った顔もいた。
「なんつーか、すまん、弟よ。」
恐らく、この街に来た時の弟の能力の発動は、きっとアイツ等のせいだ。
あー、ひいては俺のせいなんだが・・・。
それでも、弟の周りに俺以外の人間がいる光景ってのは、悪くない。
悪くないというより、寧ろイイ。
久々に良い夢を視たもんだ。
「さてと・・・。」
俺は昨日アンソニーが買ってきた服に着替える。
丈夫そうな革で出来たズボンと・・・なんていうの?
頭からすっぽり被るカンジの、貫頭衣?
某有名RPGの僧侶さんが着てるようなアレ。
一応、俺は目が見えないという設定から、ボタンや紐があるような服をやめたら、この組み合わせが出来上がった。
まぁ、いっか。
「あとは、杖・・・杖?」
杖の代わりになるようなモノがないかと部屋の中を見回すと、アルムに渡しておいた木刀が置いてあった。
アイツ、丸腰で行ったんだろうか?
本人の判断だから、いーけどさぁ。
とりあえず、コイツを杖代わりに使う事にしよう・・・て、ナニ?
このヤンキースタイルは・・・。
少々歩きにくいのは、我慢だ。
かなりわざとらしくヨロヨロしながら、階下へと降りて行く。
「あぁ、アンタかい。どうだい、調子は?」
降りてすぐに宿屋の女将に声をかけられた。
商売上手で、本当、愛想のいいオバちゃんだ。
「大分慣れてきたっス。」
「そうかい?あ、今日はアタシの知り合い連中も来るから頼んだよ。」
笑顔で俺に語りかける。
しかし、これは願ったり叶ったりだ。
「本当っスか?」
「あぁ、礼はいらないよ。きっちり取り分は貰うんだから。」
これぞ、winwinというヤツですね。
うぅ~ん、ベンチャー。
いや、自分でなんだそりゃって思いましたさ。
「そうっスね、頑張りマス。」
「その意気だ。」
そう言うと女将は俺の肩をぽんぽんと叩く。
しかし、本当に商売上手だコト。
ヤレヤレと昨日営業した場所と同じポイントで陣取ると、すぐに客が入って来る。
最初の客から、女将のオバちゃんの知り合いらしい。
俺はすぐに仕事に取り掛かった。
しかし、冷静に考えるとだ、1日が24時間以上というコトはだ、俺って1日何時間働くんだ?
8時間労働メじゃないんじゃ・・・。
労働基準局も真っ青だな、この世界にはないけど。
と、こんなアホな事を考えていても客は来る。
午前中は坦々とマイペースに会話を楽しみながら揉んでいたが、昼食を食べて夕方にさしかかると客足はピークに達した。
「すいませんね。お待たせして。他にお待ちの方は、如何っスか?それまで一杯ってのは。仕事の後の一杯は格別っスよ~。何より女将の料理も美味い。」
仕事上がりで待っている客に酒や料理をススメつつ、マッサージ。
これでサウナかなんかありゃ完璧だね。
ん?サウナって簡単に作れんじゃね?
ローマ帝国にあったくらいだし。
いや、テキトーに考えてるだけだけどさ。
同程度の文明ってんなら作れない事もないんじゃないかなぁ・・・と。
て、仕事仕事。
「何処をお揉みしましょう?」
「ふふっ、貴方の好きなトコよ♪」
・・・なんか、勘違いの客来たよ・・・。
俺のマッサージは、医療行為(?)であって、風俗的営業ではありません。
で、どんな謳い文句だよ。
「あのお客様?」
「冗談、肩と腰をお願い出来るかしら。」
「承りました。・・・あ、女性の方にとっておきのがありますよ?」
「あら、なにかしら?」
俺は彼女の耳辺り(余り正確に近づくと、目が見えるのでバレる)に顔を近づけて内緒話。
「・・・是非、お願いするわ。」
俺の話に耳を傾けた女性は、急に真剣な表情で答えた。
決して如何わしいサービスじゃないぞ?
当店は一切の風俗的・・・以下、略。
とにかくスペシャルなマッサージをしつつ。
店内では、俺の勧め通りに殺到する注文に女将のオバちゃんが笑顔で応じている。
これなら売り上げにも貢献できるだろう。
「あ、女将ーッ?女将さんいますかぁ~?」
見えているのに見えていないって、メンドイ。
「あいよー、アンタどうしたんだい?」
俺が呼ぶ声に素早く反応する、流石。
こんな喧騒の中でも、俺の声と位置がすぐに解るってんだから、ウェイトレスの鑑だぁね。
ファミレス業界の皆さん、是非とも研修に・・・っと。
「あの、用意してもらいたいモノがあるんスけど。」
「なんだい?あんまり無茶なモンは無理だよ?」
「いえ、実は・・・。」
今度は、女将のオバちゃんに耳打ちする。
「そんなモン、何するんだい?」
「俺の生まれた国では、これが効くってもっぱらで。」
「解ったよ。そんくらいならすぐに用意出来るから、待ってな。」
「すんません、ホント。」
しかし、夜からは兵士が中心になるんだろうな・・・ホント、俺、何時間労働?




