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皇子達に福音の鐘を鳴らせ!  作者: はつい
第Ⅰ楽章:皇子は再び旅立つ。
14/54

第13曲:不器用じゃなきゃ恋はできない

「でぅ~意外と疲れた~。」


 バタリとイリアさんの家のベッドに倒れ込む。


「そう?」


 ケロっとしているアルムの体力に驚いた。

俺とたいして体格違わないってのに・・・あ?背の事は言うナ。


「大体、3時間強程度で一周出来たね、意外と狭い。」


「概算で直径4キロ、外周12.5キロ。面積も同じく12.5キロ平方ってトコか。確かに狭いなぁ。」


 歩行速度が時速4キロ毎時前後としての計算だけどな。

実際は壁の厚さや、歩行ルートの歪み、速度や地形が一定してないから、おおよその数値としか言えないが。


「やっぱり、イクミは自分で言ってる程そんな頭悪くないような・・・。」


「悪いってコトにしとけ。過度の期待はもうまっぴらだ。」


「・・・そう。でも、生きる残る為には頼むよ?」


「へいへい。」


 アルムの言い分も正しい。

今は難題、しかも他者の命もかかってるってんだからな。


「ところでイクミ?」


「あん?」


「イリアさんの事をどう思う?」


「どうって?」


 質問の意図が漠然としスギ。

何をどうだってんだ?


「よっと。人間・・・じゃないけれど、人柄とか、イクミの中での評価?」


 アルムは手近な椅子を机に引き寄せて座ると、机に頬杖ついて俺を見る。


「ん~、優しいし、律儀なヤツだと思う。」


「ほぉ、何で?」


「だってそうだろ?俺達と会った時、いきなり処刑なんてコトは、"自分がさせない"って言ったんだぜ?他種族で他人の俺達に。優しくなきゃ、少なくても命の大切さを解ってるヤツじゃないと言えない。同情だったとしても、結局それは優しさから来たものだろうし。」


「律儀というのは?」


「俺達をこうして家に入れて面倒を見てくれてる。同族を助けた人間だから。なんだかんだ言って世話焼きで面倒見のいいヤツだと思うぜ?」


「そうか。」


 アルムは気が抜けたのか、ぽけーっと視線をあらぬ方向へと向ける。


「というコトは、好きか嫌いかで言えば?」


「その二択しかないのか?"嫌いじゃない"と答えたいところなんですぐわ、その二択だったら・・・好きだな。」


 うん、多分、この世界でなく元いた世界に居たとしても、同じ結論に辿り着いただろうな。


「へぇ・・・。」


 ・・・なんだよ、それで終わりか?

つか、なんて尋問?

これ尋問だよな?


「ま、そんだけで関わろうってのは、考えが浅はかなんだろけどさ。」


「そう?」


「だって、俺達は漂流者だぞ?それなのに、過干渉過ぎるんじぇねぇかなってさ。それにほら、いずれは・・・さ。」


 この世界を出て行く事になるだろう。

ここはアルムのいた世界ではないし、旅立ったら同じ所に戻れる保障はない。

それにこの世界には、この世界の法則というものがきっとあるに違いないと、思う。

俺の力は下手したら、その法則を乱してしまうかも知れない・・・。


「・・・意外と繊細。」


「ほっとけ。」


「確かにオレ達が無闇にこの世界のバランスを崩すのはよくないかも知れない。」


 急にスケールがデカくなるのは仕方がないか。

アルムは、人差し指を立てながら、語り始める。


「どちらにしろ、そんなのは"えにし"だ。ここに流れ着いたのも、エルフと出会ったのも。オレ達の視点からすればそうだ。そしてオレ達は自分で考えて結論を出した。そこに後悔が発生する事があれど、無駄は無いよ。」


「・・・重いな。」


「それにさ、オレ達のする事なんて、世界からしてみればほんの些細な取るに足らない事かも知れないだろう?何処の世界だって広いよ。」


 経験者はかく語りき、か。

いやぁ、やっぱアルムを旅の相棒に選んで正解カモ。


「あ。」


「どうしたアルム?」


「ここのエルフの寿命ってどうなんだろう?」


「は?」


 何を唐突に?

今までの会話の流れに、それがどう関わってくるんだ?


「いやさ、エルフの寿命とか外見年齢ってさ・・・。」


 あぁ、俺が子供の頃に読んだ物の本によると・・・。


「寿命が長くて、外見で年齢を判断出来ないくらい若作りなんだっけ?」


「本人に聞くの怖いしね。イクミ、年上は好き?」


 年上が好きもなにも・・・。


「どのみちイリアさんは、外見年齢も俺より上だぞ?つか、年齢を気にして好きになるのを止めるのか?馬鹿らしい。」


 本質を見れば、そこはさして重要じゃないだろうに。

世界の本質を刹那でも垣間見る事が出来る力がある俺に聞くコトか?


「そうか、良かったな。」


「はぁ・・・。」


 なんやろね、このやりとり。


「今、戻った。」


「おかえり、イリアさん。」


「おぅ、おかえり・・・?」


 部屋の中に入って来たイリアさんの顔が真っ赤だ。

それに対して、アルムはニヤニヤしている。

えぇと・・・。


「アルムさんや?」


「なんでしょう?」


 そう言えば、コイツさっき俺には全く聞こえないレベルの牛の鳴き声を聞き取った・・・よな?

て、コトはだ・・・。


「テメェ・・・。」


「どうしたイクミ?何をそんなに睨んでいるのかな?」


 コイツ、いけしゃあしゃあと・・・。

やっぱり相棒として、人選ミスをしたか?


「機嫌が直ってるみたいだね?」


 わざとらしくアルムがイリアさんに微笑む。


「私は別に機嫌など悪くなかったが?」


 嘘つけぇッ!!

・・・まぁ・・・機嫌をとる必要がなくなって良かったっちゃあ、良かったけど。


「一体、何時から聞いていたのやら・・・。」


「何が?」


 まだ誤魔化しやがりますか、シラを切りますか、アルムさんや。


「私は別に盗み聞きなぞしてないぞ!」


 イリアさん・・・。

その言い分は、誰がどー考えても、盗み聞きしてたとしか思えない発言ですぜ。

俺は思わず、ベッドに突っ伏す。


「はぁ・・・まぁ、嘘ついてるワケじゃないし、いっか。」


 完全に脱力仕切った俺が、再びイリアさんを見ると、彼女は更に顔を赤くしていた。

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