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アンリとヴォルグの関係

挿絵はちょっと失敗ですがこのままいきます…

 ヒースの語る提案に、元々ヴォルグは賛同している。あとは長であるティアンが納得するかどうかの問題だけだ。


「――あまり長引かせるな」


 ティアンの言葉に、ヒースが頷いた。ティアンが、相変わらず感情の読めない凪の表情でヒースを見る。


「次の派兵の話は聞いていないが、例年通りであれば数ヶ月の内には本国からやってくる筈だ」


 ティアンの簡素な説明によると、年に一度、西ダルタン連立王国側に派兵されている兵と本国に待機する兵との入れ替えが行なわれるという。全ての兵がこの土地を通過する訳ではないらしいが、それでもかなりの数が通る。


 竜人族や爬虫類族などはそこまで鼻が利かないが、ティアン達と同じ獣人族は基本皆鼻が利く。鍛冶屋として留めている数名分であればさほど問題にはならないだろうが、あまりにも大勢の人間の匂いがすれば疑われるのは、この集落の本国に対する裏切りだ。


 そしてそれは、この平和な集落にとって最も避けるべき事態のひとつだろう。


 協力を受け入れてもらうということは、この集落の皆を危険に晒すことでもあるのか。そこまで深く考えていなかったヒースは、もっと魔族全体の動きに関して知る必要があるな、と考えた。それも、ヴォルグ達と共に魔族の国に踏み入ることで得られるだろうか。ヒースには分からなかった。それが分かるほど、ヒースには経験も知識もなかった。


 だが、急げば急ぐほど、集落への危険は軽減される。それだけは確かな様だった。


「分かった。ひと月を目処に準備する。勿論、ザハリとも相談してになるけど」

「では決まりだな」


 ティアンが解散を告げると、シーゼルとカイネがヒースの元に駆け寄ってきた。ヒースの腕に抱きついたのはシーゼルだ。


「ヒース! 怪我は!?」

「シーゼルこそ、もうどこも痛くない?」


 ヒースが答えると、カイネも前のめり気味で尋ねてくる。


「あの白い光、あれは何だったんだ⁉ あれのお陰で傷が治ったと推測しているんだが!」

「あれ、何かヒースっぽい感覚がしたんだけど」


 シーゼルが言う。すると、こちらをジーッと見ているヨハンの目がピクリと反応した。だが、ヨハンに背を向けているシーゼルは気付いていない様だ。日頃は気配に敏感な癖に、この人はどうもヨハンに対しては感覚が鈍りがちの様だった。


 ヒースとて、あれが何だったのか正確なところはよく分かっていない。だけど、感覚では何となく分かったつもりだ。なので、その推測を口にする。


「傷が治ったのは、ニアの属性だよ」

「ニアの?」


 ヒースがニアの属性『吸収』について簡単に説明すると、シーゼルがヒースの耳の横に垂れているニアの髪の毛にちょんと触れた。


「これを通して?」

「あと、羽根ももらってるんだ」


 首に引っ掛けていると絞まりそうな状況が続いていた為、ポケットに入れていた。谷で別れる時に、ニアが手で引き千切って渡してくれたものだった。


「どれが効いたのかは分からないけど、願ったんだ」

「願った? 何をだ?」


 カイネがキョトンとして尋ねる。特に隠す必要は感じられなかったヒースは、素直に答えた。


「皆に生きて欲しいって」

「え?」


 カイネが首を傾げる。ヒースも、こんなことをしたのは初めてだ。これまでは相手の強い感情に呑まれるばかりで、ヒースから放出されるものなどなかったから。


「多分だけど、俺の魔力じゃないかな」

「お前の魔力って何なんだ?」


 カイネが更に首を傾げた。首が痛くなりそうな角度だった。


 シーゼルが、相変わらずヒースの腕に自身の腕を絡めながらこちらも首を傾げる。横から感じるヨハンの厳しい視線をビシバシ感じたが、今はもう少しこの話題について語りたかった。


 すると、気遣わしげな表情のカイネが言う。


「アンリに聞いてみるか? この集落にいる者で魔力に一番詳しいのはアンリだろうし」

「アンリか。確かに、何か分かりそうではあるけど……」


 正直ちょっとどう接していいか分からない人だ。王族の様な態度を取ったかと思えば、怪しげな研究者の様な雰囲気を醸し出したりする。


「とりあえず聞いてみよう。何か手掛かりでもあればいいだろう?」

「うん……」


 アンリと言えば妖精族だ。そういえば、といつぞやに聞いた話をふと思い出した。


「カイネ、俺達がここに来る前に、獣人族がこの辺りにいる妖精族を捕まえようとしてるって話とか、獣人のひとりが接点から妖精界に行こうとしたって聞いてたんだけど」


 来てみれば、随分と色々なことが違う。話の伝達は伝言によるものだろうから途中で変わってしまうのはある程度は仕方ないとはいえ、あまりにもここの印象と違わないか。


 すると、暫く首を傾げていたカイネが手をポンと叩いた。どれのことか分かったらしい。


「違う、それは逆だ」

「へ? 逆?」

「アンリが来た時の話じゃないかと思う」


 どういうことだろうか。ヒースが不思議そうな顔をしていたのだろう、カイネが小さく笑うと教えてくれた。


挿絵(By みてみん)


「何回か前の満月の晩に、接点を通ろうとしてきた妖精族がいたんだ」


 十中八九アンリの話だろう。ヒースは軽く頷き、先を促す。


「まあ当然僕たちにとっては喜ばしくない。だから接点の前で警護の者が武器を構えてたんだが、あのアンリの魔力は強烈でな」


 ヒースは、ハンのあのでろでろ具合を思い出していた。確かに強力だ。やばいくらいに強力だ。間違っても絶対あんな魔力は浴びたくない。


「こちらに出ても大丈夫かと様子を窺っていたらしいんだが、何を思ったか念の為に制御の足輪を外し始めて」


 なるほどな、とヒースは心の中で頷いた。あの力があれば、敵でも味方になり得る。その場合相手に影響を受けるだけの魔力が必要な様なので、あまり魔力を持っていない獣人族の集落に出て行くのに、アンリは魔力全開で向かって行くことにしたのだろう。敵地に赴くのであれば、適正な判断とも言える。言える、が。


「だが、見張りの奴には効果が強過ぎた様で、アンリが出てくるのを待てずに自分から入ろうとしてしまってな」


 再びなるほど、と心の中で頷く。妖精界に行こうとした訳ではなく、アンリの元に行こうとした訳か。納得である。


「接点が閉じたら一大事だと思ったアンリは、急いでそいつに飛びついてこちら側に出てきた。で、その見張りというのが実は……」


 カイネが、目元に笑みを浮かべてティアンと何かしら話をしているヴォルグを見た。ヴォルグはこちらの視線には気付いていない様だ。


「まじか」

「アンリは見張りの男がこの集落の中で偉い奴だと知ると、制御の足輪を付けないままそいつと交渉を始めた」


 あくまでヴォルグの名は言わないらしい。怖いのだろう。カイネが段々と声を潜めていくので、自然ヒースとシーゼルもカイネに顔を近付ける。シーゼルの顔には、意地の悪そうな笑みが浮かんでいた。


「で、ヒースも行ったと思うが、今は空き家になっているあの家を提供してもらい、足輪を嵌めた後も、こんな醜態を晒したことを一族に話されたくなければ自分を受け入れろと交渉したそうだ」


 それは交渉じゃない。脅迫である。


「ヴォ……見張りの男は、自分の情けない様子をばらされたくはない。ということで、研究が趣味だというアンリに毒物等の研究をさせるという名目で集落に置くことにしたんだ」


 なるほど。アンリが何枚も上手という訳か。ヒースが感心していると、シーゼルが小声で尋ねた。


「カイネはそれを誰から聞いたんだよ」

「僕か? アンリ本人からだ」

「一番黙っていて欲しい人に喋っちゃってるじゃないの」


 シーゼルが可笑しそうに笑うと、またヨハンの気迫に満ちた視線がヒースの身体にビシバシと突き刺さったのだった。


次話は、挿絵書けたら投稿しまーす

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話が進んできたー! だいぶ具体的になってきた感ある [一言] ヨハンの嫉妬、みてて楽しい∩^ω^∩ 勝手に敵視されるヒース不憫
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