第二十一話 大会一週目を終えて
遅くなりました。
翌日の月曜日。
登校してきた俺を待っていたのは、テンションの高低差が激しいクラスメイト5人だった。
「で? デ? DE? 勝った? 勝ったのか? 真鍋さんちのカラムスくんは勝っちゃったのかいよぉ? うひひひひ」
水島はテンション高いなぁ。
機嫌はかなり良いようだ。
これはひょっとすると。
「水島は……勝ったみたいだな」
「モチのロンよ! 余裕のよっちゃんだったぜ!」
「そして太田は負けてしまった、と」
俺は自分の席で白くなって放心している太田をちらりと見た。
本選に行ってなのらと再び会いまみえると豪語してたからなぁ。
「ぁぅぁぅぉぅぃぇ~……ふふふ、なのらタンとの逢瀬が……「強いのらな、切満邪露……」「フ、なのらタンに相応しい漢になるために我武者羅にやってきただけで御座るよ」「かっこいいのら!」「なのらタンはかわいいで御座るね」「て、照れるのら……っ」「なのらタン」「切満邪露……」『むっちゅ~』……!」
駄目だ。これは駄目だ。
表情は死んでるのに妄想だけが口から垂れ流し状態になっている。
クラスの女子たちからは遠巻きから汚物を見るような目付きで見られていた。
悪いとは思うが巻き込まれるのもゴメンだ。少し放っておこう。
「そんで、真鍋はどうだったんだよ?」
「ああ。一応、2回戦は突破した」
「ブッ……もう2戦目やったのかよ。本気と書いてマジで本選行く気だな」
ということは水島はまだ1回戦突破しただけか。
意外に慎重派だな。もっとアグレッシブに攻めていくかと思ってた。
「まあ、今週の土曜には俺も2回戦目やるけどな!」
水島のレベルも技量もかなり上がってるし、案外本当に本選まで行くかもな。
一応、試合の時間を訊いてバッティングしないようにしておこう。
「あれ? そういえば観月も大会に出るって言ってたよな? どうなったんだ?」
「えっ!? わ、わたし?」
「なんでそこまで驚くんだ」
こっちが驚いたんだけど。
「ふっふっふ。なんと理織はな、勝っちまったんだよ。1回戦」
「へぇ、凄いな」
素直に感心した。
観月=メーゼは支援特化型の魔術師だ。
基本的に戦闘中は後方にて前衛に守られているから、敵の攻撃に晒されるなんてほとんどなかっただろう。たった1人で戦う今大会で勝ち残るには敵の攻撃に対しての耐性が無さ過ぎて圧倒的に不利だろうと思われたのだけど、どうにか勝利することが出来たようだ。
とりあえずお祝いの言葉を贈ろう。
「おめでとう」
「あ、っと、その、ありがとっ。真鍋君に教わった【説話引用】タグの使い方、すごく助かったわ」
「そっか。それは良かった」
対人戦闘用の魔術に困っていた観月に俺が教えたのは、童話などの伝承から使用要素に関係する逸話を引用して事象強化に用いることの出来る【説話引用】タグのいくつかの使用方法だった。
中でも童話系はタグ取得が比較的容易で、図書塔にて童話を読み、その後特定の場所で起こるクエストをクリアするとタグが得られる。呪文が多少長くなるというデメリットは当然あるが、適切な文章を使えば物理科学関係なしに呪文強化が出来るというのは非常に大きいメリットだ。
「うへへぇ。リオりん、ようやく真鍋くんにデレ期ぃ?」
「なっ、何を言ってんのよ芽衣!! 意味わかんないし!」
そう言えば【大王古城跡】でのレイド戦以降、厳しかった観月の当たりが少し柔らかくなった気がする。質問しても返してくれるし、逆に質問をしてくる時もある。
ようやくちょっとは受け入れてくれたような気がして、少し嬉しい。
「俺と芽衣はー大会に参加してないからー、現在負けたのは吉秋だけだねー」
「ぐふっ……」
何気ない飯倉の言葉で、背後の太田から声が漏れた。
「くはは! まあ、なにはともあれ。次も頑張ろうぜ!」
「リオりんの快進撃はいつまで続くのか!? だねぇ」
「言わないでよ! わたしだってビックリしてるんだから……」
「頑張ってねー、応援はしておくよー」
「うぅ……なのらタぁ~ン……!」
こんな感じで騒がしい学校生活。
それが、俺の日常になりつつあった。
◆○★△
「おーい。真鍋!」
「え? はい、なんでしょうか先生」
放課後。
水島たちはそれぞれ用があるというし、そもそも家が正反対の場所にあるということで帰りはほとんど1人だ。
早く帰ってMLOを――いやその前に本日の予習か、などと考えて帰宅準備をしているとちょっと草臥れた感じのメガネ中年男性、担任の小谷先生が話しかけてきた。
「悪いんだがこれに書かれている本を図書室で探しておいてくれないか? 今度の授業の資料にしたいんだ」
訊くところによると、小谷先生も校長先生に頼み事をされていて、それが終わるのは夜になってからだから、自分で探す時間が無いんだそうだ。
「わかりました。探して先生の机の上に置いておきます」
ちなみに、小谷先生だけで頼みごとの回数は既に両手足の指の数を超えているので、勝手知ったるなんとやらだ。
「それじゃあ、これが探しておいて欲しい本だ。あとはよろしくな」
「はい。それでは」
早口にそう纏めると、スタスタと教室を出て行く小谷先生。
俺はその様子を見送ってから溜息をひとつ吐き、図書室へと向かった。
「えっと、最後のやつは……」
小谷先生は歴史の教師だ。頼まれた本もそれ関係のを7冊。
ウチの図書室は大雑把なジャンル分けはされているが、図書委員がいいかげんなのか同ジャンルの場所に無い場合もある。
一応パソコンで管理されているので貸出中ではないことは分かっているが、ジャンルの場所に無いあと1冊が何処にあるのか分からない。
「何処にあるんだよこれ……」
探し始めてから1時間が経過した。
この図書室は蔵書数も多く、広さも2クラス分の教室ほどもある。
何処に置かれたかも分からない本を探して端から端までくまなく見ていれば夜になってしまうだろう。
「はぁ、まいったな」
帰りが遅くなれば予習の開始も遅くなる。
つまりMLOをする時間も少なるわけで。
「なんという本を探しているのでしょうか?」
「えーと、『戦国武将珍烈伝』という本らしいんだけど……」
こういう時間を無為に消費している感じは好きではない。
勉強でもゲームでもいいから頭を使っていたい、と思う俺はどこか変だろうか。
「はい。これでしょうか?」
「うん? ああ、これだ。ありが……と、う?」
そして探していた最後の本を手にして、違和感に気付く。
――俺はいったい誰に話しかけてたんだ?
何となく既視感を感じながら振り向くとそこには。
「どうかしましたか?」
黒髪の大和撫子、クラスメイトの仁科が微笑んでいた。
「仁科……?」
「はい。仁科涼湖です」
「どうして、此処に?」
「図書委員ですので」
「そ、そっか」
仁科は図書委員だったのか。一目見れば引き付けるような存在感がある容姿なのに、今までまったく気付かなかった。
「真鍋君はまた先生から頼まれごとですか?」
「あ、ああ、うん。そうなんだ」
「うふふ。……変わりませんね」
「え? 何か言った?」
「いえ、なんでも御座いません。そういえば、最近は水島君たちとよく一緒にいらっしゃるようですね」
なんだ? 毎日挨拶はしているけど、此処まで話を続けるなんて彼女にしては珍しい。
「水島君たちはどんな話をなされているのですか?」
「ええ? えーっと……」
その後、下校時間になる寸前まで、俺と仁科さんは話をしていた。
ほとんどが水島たちとの馴初めとMLOの話。
仁科は静かに、でも興味深そうにいくつも質問をしてきた。
――もしかして、仁科は水島に気があるのかな?
水島は裏表が無く無邪気で、クラスでも人気者で結構モテる。
仁科がそういう気持ちを抱いても不思議じゃない。
――あ、でも観月も水島のことが……だったよな。
うーむむむ。
いや、それは俺が考えることではないか。
気持ちを入れ変えて、帰ってからの予定を考えておくか。
◆○★△
帰宅後、予習復習を含む家でのあれこれを終わらせてからようやくMLOにログインした。
俺の研究室にて約束通り2人と合流した直後、開口一番ガルガロは言った。
「一旦保留にしていたアダマンタイト、もしくはミスリル。あるいはその両方か、それに匹敵し得る鉱石を、金曜までに手に入れる」
それは、これまで大会に向けて色々と準備してきた中で、未だ成しえていない項目の1つだった。
「僕は甘く考えていたようだ。僕たちが大会に向けて準備しているように、他の学生も準備しているということを」
「……うん、確かに。色々と想定通りとはいかなかったな」
後衛同士での試合しかり、前衛との試合しかり。
試合の雰囲気に晒されると、自分で考えているよりも思う通りに動けないものだった。
「戦闘スタイルも確立してきたし、PvPの雰囲気も分かった。装備や道具を作り出せる環境も作った。今の段階で個人的に足りないと感じているのは、装備の質だ」
現状は素材のスペック有りきの装備ばかり。
銅なら銅、鉄なら鉄そのものの、硬さ。
魔物の皮ならば、元の魔物が有する魔術耐性など。
それらが装備にそのまま反映される感じだ。
加工工程での強化はなし。
しかし、ガルガロはそれに納得していない。
折角、【錬金術】があるのだ。
加えて、【構築陣】も手に入れた。
ガルガロの言う通り、素材さえあれば望み通りの装備を作ることが出来る状態だ。
――そう、素材さえあれば。
そのためには『魔力適正の高い素材』を手に入れる必要がある。
武器、防具などの装備に必要な素材と言えば、加工できる鉱物、植物や虫由来の繊維から成る布、魔物や獣の革や骨などが挙げられる。
【生成陣】で形状を変形できるという点から、【錬金術】では鉱物や液体が主な素材だ。布や革は縫製、骨や牙には研磨という【錬金術】とは別の加工方法を用いるからである。
以上から、俺たちが探しているのはファンタジーに付き物の伝説上の鉱物だ。
これらならば魔力適正はかなり高いのではないかと期待できる。
「ですが、1週間探し続けても見つかりませんでしたよね。今後の方針はいかがいたしましょう? やはり【ユミル鉱脈洞】でしょうか」
桔梗が小首を傾げて黒髪を揺らす。
その声音には疑問の念が含まれている。
桔梗の言う通り、これまでレベル上げを兼ねて素材探しに明け暮れていた俺たちだが、終ぞ目当ての鉱物を見付けられずにいた。
鉱物ということで、名前からしてそれっぽい洞窟系ダンジョン【ユミル鉱脈洞】に目を付けて、採掘アイテムを買い込んで意気揚々と潜っていったのだが、結果としては現実世界にありふれた鉄、錫、銅、亜鉛などの鉱石しか取れなかった。
上層はまあ仕方ないかと思えたが、徐々に探索範囲を下げて中層に入り採れる鉱物に一向に変わりがないことにあれっ?と首を捻った。
――俺たちは、もしかしたら勘違いしているのかもしれない。
そう考えてしまうのに十分な結果だった。
「少し考える必要があるな。【ユミル鉱脈洞】――鉱脈洞なのだから鉱物がある。この認識は間違っていないと思う」
「ですね。実際に鉄や銅などの鉱石は大量に出てきましたし」
「だけど、ミスリルなんかのファンタジーな創作物は無い?」
「それは無い」
「はい。有り得ないでしょう」
俺の言葉に、ガルガロと桔梗が即答した。
「古今東西の魔術的な物を詰め合わせたのがMLOだ。メジャー過ぎるファンタジーの王道鉱物アダマンタイトやミスリルが無いなんて有り得ない。ああ、有り得ないとも」
いつもの淡々とした言い方とは打って変わって随分と強気なガルガロの言に俺は苦笑するしかない。
「つまり考えられる可能性は2つ。わたくしたちの行っていないもっと高レベル、高難度のダンジョンに在るか」
「俺たちが、何か考え違いをしているか、だな」
前者であれば、正直足を使う以外の方法はない。
後者であれば、もう一度情報をひとつひとつ整理していく必要があるだろう。
「まだ次の試合まで時間はあるが、対戦相手も同様と考えれば一刻とて無駄には出来ない……か」
「では、とりあえずはまた【ユミル鉱脈洞】でレベリングをしつつ希少鉱石を探す……ということでよろしいでしょうか?」
「俺は問題ないよ」
「……仕方ない。それで行こう」
そうして俺たちは、再び【ユミル鉱脈洞】へと向かうことになった。
◆○★△
「……出ないな」
「出ないですね」
「ああ、全く以て出る気配がない」
プレイヤーがダンジョンで鉱石を採取する手段は3つ。
モンスターからのドロップか、道端に落ちているのを拾うか、もしくは採掘アイテムを使用して自分自身で掘り見つけるかだ。
モンスタードロップは確率が低く、拾得物は溜息が出るようなゴミばかり。
つまりそれを目的とするなら自分で掘る方が最も効率が良い。
方法は難しくない。採掘アイテムであるツルハシなどで岩盤を叩けば良いだけだ。あくまでも岩盤である場所をであり、土肌の壁では意味がない。
俺たちは手当たり次第に岩盤をツルハシで叩いた。
しかし、結果はやはり今までと変わらなかった。
「これはもう、別の場所を当たる方が良いかもな」
【ユミル鉱脈洞】の第4エリア【黒鋼の穴路】の適正レベルは30~35。現在レベル20台後半の俺たちにはここらへんが限界だ。
「一旦出ようか」
俺の提案にガルガロと桔梗が頷き、ゲーム内時間で4時間を費やした探索を後にした。
「……おかしい……必ずあるはずだ。何かを勘違いしている? 何を? 今の僕たちでは手が届かない? まさか。確かに空想上の鉱物ではあるが、それでもただの鉱石だ。それほど困難な場所にあるとは思えない……むむむ」
研究室へと戻る最中、ガルガロは難しい顔付きで唸っている。
「アダマンタイトはともかく、ミスリルはそこまで希少というイメージは無いですね」
「ふーん。そうなのか」
「確かに序盤では目にしないゲームは多いですが、中盤以降では更に上位の素材への繋ぎとして扱われることがほとんどだと思います」
「つまりは、そこまで手に入れるのが難しくはない素材ということ?」
「そう、思っていたのですけどね……」
俺たちはそこで同時に未だうんうん言っているガルガロへと視線を向けた。
その姿は多少焦っているようにも見える。
「ですが、今まで発見例がなかったことから、このMLOではミスリルなどの空想鉱物の扱いが他のゲームとは違うということも考えられますね」
「ふむ……」
「まずこのMLOが他のゲームと違うところと言えば……」
他のMMORPGなどは、新素材などはまず新しい街などの店で売りに出されていることが多い。例えば、最初の街Aでは銅や青銅製の武器を売っていたら、次の街Bでは鉄や鋼の武器を売っている、というように。そして新しい素材はB街と同時期に行けるようになったダンジョンやフィールドで得られるようになることが多いのだという。
MLOでは、最初から複数の鉱物素材が市場に出回っている。
現存するダンジョンやフィールドでは、質が異なる物が手に入るだけ。
手に入れた素材はNPC鍛冶屋に渡して装備を作ってもらうことが可能。
MLOはフィールドは全て繋がっているが、移動はほとんど【空間歪曲路】を使用している。区画毎に出口は存在し、街や村なども同様だ。しかし街と言っていいほどの規模は学園城の下部【商業区】と遠方にある【東邦街】だけだ。あとは小さい村ばかりで、特産品の違いはあれど使用されている金属類に違いはない。
「けれど、心得違いをしているとしたら、やはりそこか」
ガルガロが会話に入ってくる。
どうやら思考タイムは終わったらしい。
「今度はフィールドの方をもう一度隈なく調査しよう。もしかしたら、未だ見つかっていない鉱脈があるかもしれない」
各区画毎に歪路の出入口があると言っても、細かく見れば抜けもあるかもしれない。
いわゆる隠しダンジョンや隠しフィールドというものが。
そうだとするならば、今までにミスリルなどが誰にも見付けられていなかったことにも説明がつく。【ユミル鉱脈洞】は一旦思考から外しておこう。俺たちの実力ではあれ以上潜ることは死を意味する。
「さて、見つかるかな」
「厳しいと思いますね。明確な道筋が見えておりません。何を目標として場所を特定するのか、それすら決めずに闇雲に探すとなると……」
「だよね。うーん、どうしたものか」
と、その時、メッセージの着信を知らせる音が鳴った。
――ん、誰だ? ウィントたちかな?
見ると差出人はフィリップだった。何だか久しぶりに見る名前だ。
内容は暇だから遊ばないかというお誘いだった。
フィリップとはガルガロも桔梗も知らない仲じゃないし、一応訊いておくか。
「ふぅ……悪いが断ってくれ」
「え?」
てっきり渋々ながらもOKを出してくれるものだと思っていたのに、ガルガロは少し沈んだ表情で断ってきた。
「第一優先は大会での8位入賞だ。これは絶対譲れない。ゆえに手の内の情報の秘匿は必須。本当なら桔梗だってイレギュラーだったんだ。これ以上増やすのなら、せめて大会が終わってからだ」
「んー、でもフィリップなら気心も知れてるし……」
「それはそうだが、だからこそ、奴の口の軽さも想像できるだろう?」
「…………」
それは確かに否定できない。
だけど、仲間外れにするようで気が引ける。
ガルガロがそれほどまでにこの大会に懸けているのが痛いほど分かる明確な拒絶。その意気込みは、もはや彼にとって遊びの域を出ていると思う。
何がそこまで……とは思うが、これ以上踏み込むのも躊躇われる。
結果、無言で返すことしか俺は出来なかった。
そんな俺の心情を読み取ったのか、
「……大会が終わるまでだ。大会が終わったら、アイツに話すのも……まぁなんだ、やぶさかではない」
拗ねたような顔のガルガロはそう言った。
ガルガロは意地悪でフィリップを除け者にしようとは考えていない。
――ただ、必死なだけだ。
大会で勝つ。
シニアクラスになる。
より強くなる。
そして、このゲームのグランドクエストを解明する。
どうしてそこまでそれに固執するのか。
理由は分からない。多分まだ訊いても教えてくれないだろう。
気にはなるが、恐らくその理由は一緒に先に進めば自ずと分かってくるんじゃないかと思っている。
フィリップには悪いが、断りの返事をしてしばらく会うのは控えよう。
◆◆◆◆○
「ちぇ~、ムッチョも駄目なんかよー」
舌打ちと共にメッセージウィンドウを乱暴に消す。
口調は軽い。けれど、その表情には重い陰があった。
「あーあ」
銀の長髪を靡かせて、城下街の喧騒の中を歩いていく。
詰まらなそうな。
諦めたような。
そんな表情で、ぽつりと空に向かって彼は呟いた。
「まーた……独りかよ」




