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闇の城

深い闇の空間。


そこには同属ですら容易には立ち入れないその空間はただ一人の為の居城があった。


その城の中、息を潜めるようにしてひとり・・・いや、一体の使い魔。


戯れで命を与えられただけのそれはただひたすら主の帰りを待っていた。


キィ・・・・・ン


かすかに空間が軋むと圧倒的な力で満たされる。


主の帰還。


それだけで闇は一層深く、城は仄かに艶めき主の帰りを喜び歓迎した。


使い魔の心にも喜びは満ちるが動く事はしない。


自制し息を潜める。


主の不快を買いたくはないゆえに、自らの感情のままに動く事をしないように。

 



住処に戻ったリーハはしばらくいつものようにくつろいでいたが、ふと気付いたようにつぶやいた。


「水鏡の用意を・・」


それは本当に小さな呟きだった


誰に聞き取られることもなく消えるはずの音。


だがすぐに答えは返された。


「できました」


リーハは当然のようにうなづき、席を立つ。


随分と使っていなかった物だがきちんと手入れを怠らなかったようだ。


一歩ふみだせば水鏡のある部屋の前に移動している。


部屋の中ほどに置かれた机の上には水が張られていた。


深さの判別しづらいその水面は揺らぎも波紋もなくとどまっている。



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