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空間転移。

 お仕事が終わって、ミーシャのハルカと一緒にお店を出た。

 もう、ジャンが店主代理でもちゃんとお店をまわせるようになったから、あたしはいなくても大丈夫。なんだけど……。

 なんだかそれも寂しくて。


 そういえば最初の頃お砂糖の節約に作ってたあたしの味付けポーショングレーズや、粉糖たちも、いまじゃすっかり普通のグレーズや粉糖に切り替わってた。

 まあ、あたしのポーションが混ざってるグレーズや粉糖がかかってできあがったドーナツは、食べると元気になるとかの副作用があったし、そういうのは不自然だなぁとかは思ってたから、ちゃんと本当の手順でつくったグレーズの方がいいのもわかってはいるんだけど……。

 それも。

 あたしがもう必要がないって言われているみたいで、なんだか悲しかった。


 実際にはみんなから、いらないって言われたわけじゃぁないけれど、それでもね。


 アランさんが新しい帝都のお店を手伝って欲しいと言ってくれた時は、本当に嬉しかった。

 魔法とかそういうの関係なしに、あたしのことを必要としてくれてる。

 そう思ったら、もう帝都に行かないっていう選択肢は持てなかった。

 ギディオン様は何故かあたしを帝都に行かせたくなかったみたい?

 だけど、ごめんなさい。

 どうしても行きたいの。行って、新しいお店を手伝いたい。


「ねえ、セリナ。そろそろ跳んじゃおう?」


「うーん、じゃぁ、そこの角曲がったところでね。あそこならきっと色々死角になって目立たないかもだから」


「オッケー。じゃぁ」


 角を曲がったところで、さっと人化するミーシャ。ううん、ハルカ。

 真正面からあたしの手を握って。


「このまま、いくよ? セリナはあたしのことよくみててね。何をしているのかさえわかれば、きっとあなたも転移が使えるはずだから」


 え?


「だって、そんなの」


「いいから。しっかりみてるのよ」


 ハルカの胸の辺りから、マナがまるで腕のような形で伸びてくる!!

 そして。

 その腕は空間を超え、あの泉の場所を掴んだ、気がした。


 その瞬間。


 グルン


 あたし達の周りの空間が反転し、あの、泉の場所の上空、ちょうどあたしがあのとき落ちた直前の場所と入れ替わった!




 え?

 これって……。


 眼下に見える泉は、間違いない。あたしのマナをまだ感じるもの。

 でも……。

 そこにある景色は以前とは完全に様変わりしていた。


 泉はぐるっと高い城壁で囲まれ、そこには等間隔に五つの尖塔がある。

 中でも五角形のちょうど東側にある塔は一際大きく、まるで大きなお城がそこにあるようにも見えた。


「神殿って、そんなレベルじゃないよね……」

「そうね、まるで要塞のようだわ」

「でも……、こんなに巨大なお城、森の入り口からでも見えそうなのに」

 こんなものが建造されたって街では噂にもなってなかった。

 まあ、神殿を建てる、立ち入り禁止、くらいの情報はみな把握していたみたいだけど、それでもこんなにも大きなお城、見えたら絶対驚かれるよね……。


「この五芒星みたいな作り、これがそのまま魔法陣を形成してるみたいね。認識阻害の魔法を大規模に展開しているっぽいわ」


「じゃぁ」


「ええ。あたし達はこうして上空から眺めているから影響を受けていないのか、それともあたし達の目にはこんな認識阻害が効いていないのか、そこは謎なんだけど……、これ、普通の人には小山のように見えてる可能性が高いわ……」















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