春の陽気。
冬の間の準備が諸々済んで、いよいよ春。
街も暖かい陽気に包まれて、なんだか気分もいい感じ。
ぽかぽかなお日様を浴びながらミスターマロンまでの道のりを歩く。
ミーシャのハルカもスキップするかのようなかろやかな足取りでついてくる。
「ねえねえ、帝都までの道のりはどうするの? 乗合馬車?」
「ううん、それじゃミーシャがいっしょにいくのは難しくなっちゃう。幸いアランさんは一足先にマロンさんと向かって、お店の準備してるから、あたしは別に行けば大丈夫だし。オープン数日前に行けばいいかんじ。ギディオンさまが一緒に行くっておっしゃってくれてるから、専属の馬車かなぁ?」
この前のベルクマール行きの時のような大所帯にはならないだろうけど、って思いながら答える。
「ふうん。なら、空とか飛んで、バーっと行っちゃうほうが早い?」
「えー?」
「ギディオンは飛べるでしょ? あたしも飛べるから問題ないし。セリナは飛べない?」
「そりゃぁ、少し浮くくらいならできるけど……」
短距離ならともかく、帝都までの長距離はちょっとわかんない……。
「別に、戦いに行くわけじゃないし、マナの節約しても意味ないもんね。それに、地上をいくより飛んでっちゃった方が魔獣とかに遭遇する危険も少ないよ?」
「それは……そうかもしれない、けど……」
「ふむふむ。じゃぁあたしが特訓してあげよう。ちゃんと飛べるようになっておいた方がこの先良さそうだしね」
「でも……。街中でそんな訓練、できないわ」
「うーん。西の方から聖なるマナ、あなたのマナを感じるんだけど、あのあたりは森の中?」
「うん、一応森の中、だけど……」
あたしが生み出してしまった命のマナポーションの泉。色々と危険だってギディオン様がおっしゃってて、なんか神殿を建てたって話だったっけ。
一般には立ちいり禁止、だったはず……。
「じゃぁ、その神殿の近所で練習しましょう。場所は……、セリナがわかるわよね。だったらあたしがそこまで空間転移で連れて行ってあげるわ」
「え? 空間転移?」
「ふふふ。あなたの心の奥底をちょっと覗かせてもらうけど、位置だけわかれば簡単よ?」
そう言って、ふっと肩に乗ってきたミーシャ。
そのままあたしの頭に、自分の頭を擦り付けて。
「うん。わかった。あそこねー。じゃぁ今からちょっと跳んでみようか?」
「だ、だめよハルカ。今日はちゃんとミスターマロンに出勤しないと。いきなりサボりになっちゃったら心配されちゃう!」
「うーん、もう。ちょっと行ってすぐ帰ってくるだけなのに」
「それでも、だめ。お仕事終わってからね?」
「了解〜」




