第205話 個性は大事
その後もノーラさんから話を聞いていくと、昼になった。
昼食を食べに行こうと思ったのだが、教会の人が昼食を用意してくれたので皆で食べることにした。
料理は肉料理である。
「なんか食べにくいね……」
「先ほどの話を聞くと、ちょっと考えちゃいますよね」
何とも言えない表情のジュリアさんと顔を見合わせる。
「我は気にせん」
さすがは神様。
「あまり気にしないで。昔の話だし、今はこの食を楽しんでくれればいい。というかね、私はここだけでなく、色んな地域の研究もしているけど、食を大切にしようとか、残したらダメっていう文化、風習がある国って、大抵、食に困ってたことがある地域よ。あなた達の国の歴史は知らないけど、多かれ少なかれそういう経験をしている国だと思うな」
それは合ってる。
ウチの国は資源が乏しいし、何度も飢饉に襲われてたと歴史の授業で習った。
例の山に行く人はその時の話だろう。
「ウチの国も今は食べ物に困ることはないですし、飢える人は皆無と言っていいです」
辛いことはいっぱいあるが、それでも普通に生きていれば衣食住に困ることなんてない。
「それはウチもそうね。そういう歴史があって、今があるの。歴史はとても大事なことであり、忘れてはいけない教訓でもあるわけよ」
なるほどねー。
学生時代は好きじゃなかったが、今話を聞くと、すごく興味深い。
もうちょっと勉強すれば良かったな。
「ノーラさんは他の地域も調べているんですね。他の聖都もですか?」
ジュリアさんが聞く。
「そうね。でも、こういうのは現地に行って、調べないといけない。私はあと5年で巫女を引退するからその後は各地の聖都を見て回るつもり。まずは火の国ね。温泉に行きたいし」
この人はやりたいことがはっきりしているんだな。
「他の巫女様は引退したらどうされるんですかね?」
「さあ? 結構な額の退職金をもらえるし、教会所属なのは変わらないから生活に困ることはないわね。サラはそのままのような気がするし、貴族のディーネはどうだろ? どっかに嫁ぐのかな? 今日会うわけだし、聞いてみたら?」
そうしようかな。
俺達は話をしながら食事を続け、午後からもノーラさんの歴史の話を聞いていく。
この辺りの話からダルト王国の話まで興味深い。
というか、この人、めっちゃ嬉々としてしゃべるな……
「――それでダルト王国はフロック王国と仲直りしたわけ」
今、ダルト王国とフロック王国の関係についてを聞いている。
どうやらこの両国は元々、一つの国だったらしい。
さらには数百年前まで戦争状態だったのだが、教会が仲裁して、仲直りしたらしい。
何故、教会が仲裁したかというと、火の国、水の国はフロック王国側にあり、土の国と風の国はダルト王国側にあるため、移動ができなくなって大変だったから。
そういう話を聞いていると、サクヤ様が足を踏んできた。
理由はわかっている。
もう窓から夕陽が差し込んでいるのだ。
「仲直りできて良かったですね。ノーラさん、まだお話を聞きたいのですが、そろそろいい時間になったのでサラさんとディーネさんを迎えにいってきます」
「あれ? もう夕方? 時間が経つのは早いわね。じゃあ、話の続きは食事の時に……あ、いや、若干、1名興味ないか」
勉強嫌いのディーネさんね。
ウチのタマヒメ様もです。
「また来週にでも聞かせてくださいよ」
「そうね」
「じゃあ、サラさんとディーネさんを迎えにいってきますので待っててもらえます? ここに飛ぶんで」
歩いてくるのはちょっと遠慮したい。
「了解。待ってるわ」
ノーラさんが頷く。
「サクヤ様、一度、家に戻ってタマヒメ様と合流しましょう」
「そうじゃの」
俺達は転移で家まで帰る。
すると、タマヒメ様がノルン様とゲームをしておられた。
「勝ってますか?」
ノルン様に聞いてみる。
「勝ち負けのゲームはやめました。一緒にゾンビを倒してます」
なるほど。
「タマヒメ様、ゾンビは大丈夫ですか?」
「ゲームなら大丈夫だけど、こんなのが目の前にいたら即、逃げるわ」
それは俺もそう。
「砂漠にはそういう魔物はいないそうですよ。ミイラもいません」
「それは朗報ね。ノルン、私は出かけるけど、あんたはどうするの? 巫女達とご飯を食べる?」
タマヒメ様がノルン様を誘う。
「私がいると楽しめないでしょうからやめておきます。適当なものを送ってください」
あ、そういえば、前回送ってない……
すみません。
「わかった。じゃあ、私とジュリアでサラを迎えにいくからあんたらはディーネね」
先週と一緒ね。
「ん。どうせ別荘で寝とるじゃろ」
「英気を養っておられるんですよ」
「一緒じゃい」
まあね。
「じゃあ、行きましょうか」
俺達は二手に分かれ、それぞれ聖都に向かうことにした。
俺とサクヤ様は水の国にある別荘に飛ぶ。
すると、ソファーでくかーと寝ているディーネさんがいた。
「英気を養っておるの」
「綺麗な方なんですけどねー」
ソファーから落ちそうになっている。
「こういう写真集でも売ったら売れるんじゃないか?」
「そういうプロデュース業に興味はないですね」
「まあ、こやつはこやつで勝手にやるか……ディーネ、起きよ」
サクヤ様がディーネさんを揺する。
「んー? もう朝かー?」
「夕方じゃい」
「なんでぇー?」
寝ぼけてるな。
「おぬしが昼寝をしたからじゃ」
「あー……そっか、土の国に行くのか」
ディーネさんがようやく起き上がった。
「おはようございます」
「おはよー……ふわーあ……よし、行くか」
ディーネさんがキリっとする。
「切り替えの早い奴じゃな……土の国の教会にあるノーラの部屋に飛ぶぞ」
「あそこね。お願いします」
「行くぞー」
俺とサクヤ様はディーネさんを連れて、さっきまでいたノーラさんの部屋に飛んだ。
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