第199話 眠らない町
そのまま待っていると、ノーラさんが左奥からやってくる。
「こんばんはー」
「はい、こんばんは。ご飯の誘いって聞いたけど?」
ノーラさんが首を傾げた。
「せっかくですし、一緒に行きませんか? それとももう食べましたかね?」
「いや、まだだけど……いいの? お邪魔じゃない?」
「そんなことないですよ」
「ふーん、じゃあ、行こうかしら? でも、お酒は飲まないからね」
飲めないって言ってたな。
「お肉を楽しみましょう」
「それもそうね」
俺達はノーラさんと共に教会を出ると、明るい灯りが見える歓楽街に向かって歩いていく。
「かなり涼しいですね」
「ええ。砂漠だからね。見ての通り、外に出るのはこの時間からよ」
歓楽街に近づくにつれ、明るさと人の数が増えている気がする。
それにうっすらとだが、民族っぽい音楽も聞こえている。
「すごい賑わってますよね」
お祭りみたいだ。
「まだこれからよ。あの部屋から歓楽街は見えないでしょ?」
確かに見えない。
窓があるのは砂漠がある方向で歓楽街とは逆だ。
「砂漠が綺麗でした」
「ホントに綺麗よね。あそこから歓楽街が見えないのは窓を逆方向に設置したから。歓楽街は日が出るまで明るいからね」
先代の巫女様はいくらカーテンがあっても灯りが入ってくるのを嫌ったんだな。
「そんなにすごいんですね」
「まあね。あそこだけじゃなく、教会も町もすべてが夜もやってるのよ。私は寝てるけどね」
眠らない町ってすごいな。
「俺達が貸してもらっている建物の1階の受付に夜でも人がいるのはその関係ですか?」
「まあ、そんな感じ。お客さんが来るわけではないけど、誰かは置いておかないといけないからね」
昼夜逆転している人が多そうな町だな。
「毎日、こんな感じなんですか?」
「ええ。雨期以外はそうね。気候がほとんど変わらない地域なのよ」
「へー……毎日、こうだと疲れないんですかね?」
「お国柄じゃない? 多分、あなた達は静かなところの出身なんでしょう。先代の巫女様も同じようなことを言ってたから」
魔導帝国も静かな町だったしな。
「ノーラさんはこの町の出身なんですか?」
「ええ。生まれも育ちもここ。だから慣れたというか、物心がついた時からこんな感じだから何も思わないわね。昔、火の国の聖都に行ったことがあるけど、同じような歓楽街があるのにあっちは静かでびっくりしたことがあるわ」
温泉街だもんな。
「水の国には?」
「冬に行ったかしら? 魚介が美味しかった記憶があるわね。あとディーネが周りのお客さんからお酒をもらってイッキしてた」
うーん、ディーネさんだ。
「あの人は人気ですから……」
「楽しい方なんですよ……」
俺とジュリアさんで精一杯のフォローをする。
「あれで貴族令嬢なんだからびっくりよ。それでどこのお店に行くの?」
「冒険者ギルドでおすすめされた砂の城っていうお店に行こうかと思ってます」
「あー、あそこね。良いと思うわ。私も何度か行ったことあるけど、美味しいところよ」
地元の巫女様もおすすめなら当たりかな?
俺達が歩いていると、徐々に音が大きくなり、灯りも強くなってきた。
それと同時に人が増え、いつぞやの花火大会のような賑やかになる。
そして、午前中にやってきたアーケードの前にまでやってくると、あの時とはまったく違う世界が広がっていた。
「お祭りだね」
「ええ。すごいです」
アーケードの先は昼間のように明るいのだが、様々な色の灯りがついており、本当にお祭りのようだった。
「砂の城はアーケードを抜けて、ちょっと行ったところにあるわ。案内しましょう」
ノーラさんがそう言って、歩いていったので俺達も続いた。
アーケードを抜け、左右にある色々な屋台やお店を眺めながら歩いていく。
「ノーラさん、誰もノーラさんを見ませんね?」
ジュリアさんがノーラさんに聞く。
確かに多くの人がいるが、誰もノーラさんを見ていない。
「ん? まあ、巫女ってそんなに表に出ないからね。あー、ディーネか。あんなに自己主張して、サイン会を開いたり、飲食店でタダ飯食らいをしているのはあの子だけよ」
確かにサラさんも火の国では誰も注目してなかったな。
「巫女様って本当はそんな感じなんですか?」
「まあ、巫女って基本的にお祈りとかをするだけだしね。普通は表に出てこない」
ディーネさんはめっちゃ出てるもんな。
「あの人、今はリヴァイアサンに乗った巫女で売ってますよ」
「ええ……まあ、私達も乗りましたけど」
ねー?
「何してんだか……って、リヴァイアサンに乗るって何!? あなた達も乗ったの!?」
「えーっと、色々ありまして……」
俺達は歩きながらリヴァイアサンに乗ることになった経緯なんかを説明する。
「ふーん……ディーネもだけど、あなた達も中々、面白いことをしているわね……あ、ここよ」
ノーラさんがとある看板の前で立ち止まる。
看板には砂の城と書いてあり、奥にはお店がある。
さらに敷地内にはいくつもの丸テーブルが置かれており、家族連れなんかが食事を楽しんでいた。
「本当に外で食べるんですね」
ビアガーデンだ。
「昔からの風習ね。この辺りはテントで生活する遊牧民が多かったから食事を外で食べることに抵抗がないの」
へー……
「あの店で注文する感じですかね?」
「まあね。私が適当におすすめを注文してくるから席についていてちょうだい。あなた達はお酒を飲むの?」
「あ、せっかくですので」
「私も軽いのをいただこうかと」
「我は軽くなくていいぞ」
「私もー」
全員、飲むらしい。
まあ、ビアガーデンだしな。
「じゃあ、注文してくるわ」
ノーラさんがそう言って、お店の方に向かったので俺達は空いているテーブルの方に向かった。
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