第192話 土の巫女のノーラ
建物の木陰で待っていると、豪華な馬車が見えてきた。
「あれかな?」
「じゃないですかね? 前に水の国でディーネさんが乗っていたものと同じ気がします」
確かにそんな気がする。
教会の馬車なんだろう。
俺達が馬車を見ていると、ゆっくりと進んできた馬車が俺達の前で止まる。
そして、馬車の扉が開き、中から若い女性が降りてきた。
女性は長い茶髪であり、サラさんやディーネさんと同じように白を基調とした服を着ている。
「おはようございます。サクヤヒメ様、タマヒメ様、ハルトさん、ジュリアさんでしょうか?」
女性が聞いてくる。
「はい。合ってます。土の国の巫女様でしょうか?」
「はい。そうです。自己紹介等をしたいのですが、暑いので馬車に乗ってもらえますか?」
「あ、はい」
巫女様が馬車に戻っていったので俺達も馬車に乗り込み、席につく。
馬車の中は冷却石があるようで涼しかった。
「あー、暑かった……夜に来てよ」
巫女様が手で仰ぐ。
「すみません。朝からこんなに暑いとは思いませんでした」
「まあ、初めてなら仕方がないか。それよりも自己紹介をしましょう。私はノーラ。土の国で巫女を務めているわ」
「よろしくお願いします。わざわざ迎えに来てもらってすみません」
こんな暑い中なのに……
「いえいえ。それはいいのよ。でも、もっと後に来るかと思ってたわ。あなた達、この前まで水の国にいたんじゃないの? 来るのが早すぎない?」
あ、そういうことか。
迎えがなかった理由がわかった。
「えーっと、転移という魔法があるのでそれで水の国からフロック王国の王都に飛んだんです。そこからちょっと早い移動手段でやってきました」
サラさんもディーネさんも転移を知っているし、巫女様なら別に言ってもいいだろう。
「転移……神様ってすごいわね。それとも異世界では普通にある技術なの?」
「いえ、俺やジュリアさんは使えません。使えるのは神様だけですね」
「そっか。でも、便利ね」
本当にね。
「ええ、とっても。サラさんが水の国でバーベキューしたり、ディーネさんが火の国で温泉に入ったりしてましたよ」
「あの子達もちゃっかり便乗して、良い生活しているわね」
確かに楽しそうではあった。
「他の巫女様との交流があるんですか?」
「あると言えばあるけど、ここはちょっと遠いから最近は会ってないわね。あの2人は元気? サラはバカみたいに辛いのを食べてる? ディーネはサボっている?」
あ、そういう認識なんだ。
「はい。どっちもはいです……」
ディーネさん、ごめんね。
「そう。まあ、元気ってことね。さて、あなた達は観光で来たってことでいいわね?」
「はい。遺跡とか見たいです。あとデスワーム……」
「あんた、まだ諦めてないの?」
タマヒメ様が呆れる。
「期待するだけならタダですよ。ノーラさん、デスワームっています?」
「さあ? 少なくとも、見たことはないわね。探す人もいるのかもしれないけど、砂漠で何かを探すって相当きついわよ?」
まあ、そんな気がする。
「遺跡探しとかもです?」
「そりゃあもう……広大な砂漠から探すわけだから大変よ。しかも、暑いし、盗賊や魔物は出るしで本当に大変」
無理だな。
「そうですか……遺跡は見られますかね?」
「そうねー……その辺も案内しましょう。でも、その前にこの町を説明するわ」
それもそうだな。
「あ、その前に忙しくないんですか?」
「大丈夫。私はサラやディーネよりも長く巫女をやっているし、仕事なんか慣れっこよ。まあ、ディーネは論外だけど」
そういえば、この人ってサラさんの3つ上で25歳か。
十分に若いけど。
「でしたら案内をお願いします。正直、この暑さで外を出歩くのはきついです」
「でしょうね。まずそこから説明するけど、ここは雨期以外は年中、こんな感じよ。朝から暑くて、昼間は目玉焼きができるんじゃないかってくらいに暑い。ただ、もちろん対策はしてあって、市場なんかは冷却石がそこら中に置いてあるからまだ過ごしやすいわね。でも、太陽がきついから間違っても薄着はダメ。絶対に肌は隠しなさい」
日焼けがヤバそうだ。
「駅の中が涼しかったのは冷却石ですか?」
「ええ。こんな暑さだから建物の中は涼しいわよ。下手をすると寒いくらい。そういう意味でも薄着はダメ」
なるほど。
「夜は?」
「夕方くらいから涼しくなり始めるわね。そんでもって夜はかなり涼しいわよ。後で説明するけど、歓楽街の店はほとんどが野外で飲む感じね。観光客にも人気」
ビアガーデン的なものかな?
「それは良いですね」
「転移があるならディーネでも誘ってあげなさいよ。あの子が好きそうな感じだから」
確かにそんな気がする。
サラさんも誘ってみよう。
「そうします」
「うんうん。それともう一つ大事なことがある。まあ、転移があるあなた達には関係ないと思うけど、この町というか、この国は飲料水がめちゃくちゃ高いから気を付けて。お酒の方が安いくらいだから」
あー、砂漠だもんな。
「水が貴重な感じですか?」
「川が近いから一概にそうじゃないけどね。ただ、観光客が安全に飲める水が貴重なの。ちゃんと処理をしないとお腹を壊すのよ」
んー?
硬水、軟水かな?
「わかりました。気を付けます」
まあ、ノーラさんが言うように俺達には転移があるし、飲んだとしてもフグの毒すら無効にするノルン様の完璧な加護があるから大丈夫だろう。
「よろしい。最初の説明は以上よ。これからは動きながら町の説明なんかをするわ。出発」
ノーラさんがそう言うと、馬車が動き出した。
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私が連載している別作品である『最強陰陽師とAIある式神の異世界無双』のコミカライズが連載開始となりました。
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