第173話 成立
「――んー? なんだもう来てたのか?」
マージェリーさん、まだかなーと思っていると、扉が開き、マージェリーさんが顔を出した。
「あれ? 中だったんですね」
「仲介人が先に来なくてどうする? いや、それよりも何をしているんだ? さっさと売買を進めよう」
「いやー、そう思っているんですけど、こちらの方が……」
そう言うと、マージェリーさんが太ったおじさんを見る。
「うん? ナイジェル議員じゃないか。こんなところで何をしているんだ?」
「シーサーペントの魔石についてだ。こちらに売ると言ったではないか」
多分、言ってない。
「そんなこと言ってないだろ。シーサーペントの魔石を買うならいくらで買うか聞いただけだ」
「それは売る意思があるということだ」
「私はなかった。以上」
マージェリーさん、かっこいい!
「ふざけるな……出るとこに出てもいいんだぞ」
脅しかな?
「貴殿は何を言っている? 私は軍の大佐だぞ? それにこの件でエイブラム館長を敵に回すことになるぞ。貴殿がどれだけ人や金を動かそうと無駄だ。今のは脅迫罪でしょっ引いてもいいが、聞かなかったことにしてやる。帰れ、帰れ」
マージェリーさんがしっしっと手を振る。
「貴様……! おい、そこの冒険者! どっちに売るんだ!?」
え? こっちに聞くの?
「館長さんですかね」
「貴様、ただで済むと思っているのか」
えー……
「ハルト、時間の無駄じゃ。さっさと終わらせて、帰ろうぞ」
サクヤ様は我慢の限界らしい。
「まあまあ、ここは穏便にいきましょう。話し合えばわかりますよ」
トラブルはごめんだ。
それに話し合いが大事なんだ。
「そうだ。クソガキは黙ってろ――がっ!」
サクヤ様に暴言を吐いたナイジェル先生が首を抑えながら膝をついた。
「病気かな?」
「そうじゃないですかね? 心配です」
ジュリアさんと顔を見合わせる。
多分、呼吸困難だろうけど。
「先生!?」
「き、貴様!? 魔法を解け!」
1人の御付きの者がナイジェル先生を支えると、もう1人が俺に向かって怒鳴る。
「何がです?」
「ふざけるな! 貴様が魔法を使ったんだろうが!」
わかるらしい。
「ふざけてないですよ。岩見の神に逆らう者は許されないんですよ」
死ね。
誰に向かってクソガキって言っているんだ?
あん?
「こちらはこの国の議員だぞ!?」
知るか。
「こちらは神ですよ」
「ふざけるな! ただのガキだろ!」
よし、黙らせよう。
ジュリアさんが剣の柄を握ったし、殺気がヤバい。
「なんか物騒な夫婦だな……スリープ」
マージェリーさんが人差し指を立てると、ナイジェル先生と御付きの者2人が糸が切れた人形のようにその場で崩れ落ちた。
「魔法?」
御付きの人、顔面から地面に落ちたけど大丈夫かな?
「眠らせる魔法だ。うるさいのはこうやるんだ」
さっさとやれよ。
「何だったんです、この人?」
無礼な。
「知らん。魔法だけで優劣を決めるとこういうのも出てくるっていう典型だろ。あとで軍の詰め所に運ぶからその辺に置いておけ。そんなことよりさっさと取引を終わらせよう」
それもそうだな。
「マージェリーさんの話の持っていき方が悪かったんじゃないです?」
「そんなことない。私は簡潔に物事を伝えた」
それでは?
まあいいかと思い、図書館に入ると、受付にいる館長さんのもとに向かった。
「マージェリー、何かあったのか?」
館長さんがマージェリーさんに確認する。
「強盗だ。後で詰め所に運びますので先に取引を済ませよう」
どうやらナイジェル先生は強盗の罪でしょっ引かれるらしい。
「そうだな。あまり時間を取らせるのはハルト殿達に悪い」
「そういうことだ。では、ハルト、魔石を出してくれ」
マージェリーさんにそう言われたのでサクヤ様を見る。
すると、でかい魔石が床に現れた。
「ほう……素晴らしい! これだけの大きさ、質……初めて見た」
「だろう? まあ、見るのは後でゆっくりやってくれ。金を」
「わかった」
館長さんは頷くと、カバンから布袋を1個ずつ出していく。
そして、13個の布袋をカウンターに置いた。
「1個の布袋に金貨100枚か?」
「そうなる」
「ふむ……」
マージェリーさんは布袋を1個1個開け、中身を確認していく。
「確かに……では、ハルト、受け取れ」
「ありがとうございます」
館長さんに礼を言いながら布袋を取り、サクヤ様に渡していった。
「いえ、こちらこそありがとうございます。良い取引でした」
館長さんがそう言うと、マージェリーさんがうんうんと頷く。
多分、自分のおかげと言いたいのだろう。
「館長さん、重いですけど、魔石は大丈夫ですか?」
魔法のカバンを持っているようだが、館長さんもお年を召している。
「あー、館長、手伝おう」
「頼む」
マージェリーさんが手伝うなら問題ないだろうな。
「では、私達はこれで失礼します。今日はちょっと用事がありますので」
「ありがとうございました」
館長さんが再び、礼を言った。
「うむ。後のことは私に任せるがよい」
よくわからないけど、ナイジェル先生達のことはマージェリーさんに任せよう。
「お願いします。では、これで」
俺達は図書館を出ると、まだ倒れている3人を無視して車に乗り込み、5層のお店に向かう。
そして、買うと決めていた魔道具を館長さんから受け取った金貨で買っていくと、マージェリーさんの部屋に戻り、帰宅した。
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