第170話 長かった ★
ハルトとジュリアを魔導帝国に送った後、家に戻る。
すると、タマちゃんが頬杖をつき、ノルンは珍しくゲームをせずに待っていた。
「おかえり」
「2人を送りましたか?」
ノルンが確認してくる。
「そらの」
当たり前じゃ。
「で? この会は何?」
「知らん。発起人はノルンじゃ」
ちょっと話があるということで集まった。
とはいえ、平日は2人が仕事に行っているから自然とこの3人がここにいる。
「たいしたことではありません。ちょっとした確認です」
確認?
「何よ?」
「何じゃい?」
「ハルトとジュリアは一緒になります。これは確定でしょう」
そりゃそうじゃろ。
「別れる気配はゼロね」
「仲良くやっておるからの」
うん、実に微笑ましい。
「それはいいことです。2人は良き家庭を築くでしょう。そこで確認です。我々は邪魔では? 新婚さんですよね?」
「今さら何言ってんの?」
「邪魔というなら常にじゃろ」
ノルンに至っては関係ないのに入り浸っている。
自分のところの世界はどうした?
「まあ、それはいいでしょう。でも、2人で住むんですよ?」
「そうじゃの」
「邪魔では?」
まあ、こいつの言いたいことはわかった。
「放っておけばよい。そういうものじゃ」
「そうね。そういうもの」
タマちゃんとうんうんと頷く。
「そういうものとは?」
「あんたがあっちの世界の人々を見守っているようにウチはウチで一族を見守っているの。生まれた時から死ぬまでずっとそこにいるのよ。私達はそういう神」
「我らは神棚じゃ。2人も気にせんし、勝手にいちゃついて勝手に子供を作る」
そうやって生きてきた。
「そういうものですか……」
「我らは困った時に手助けをするのが役目じゃ。まあ、我は主に子守りじゃがな」
あの2人は共働きだろうし、そうなるじゃろう。
ハルトの両親もそうじゃった。
「私はぐずった時にあやす係」
まあ、そんなもの。
「シッターですね」
「それくらいしかできんからの。ハルトの親よりハルトのおしめを替えたわい」
「ふーん、じゃあ、好き勝手にゲームをしてますか」
それを確認したいだけじゃな。
「音量くらいは下げなさいよ」
いや、逆に上げた方が良くないか?
「よし! わかりました。結婚祝いに音を消す魔法を教えて差し上げましょう」
好きにせい……
◆◇◆
マージェリーさんを送り、図書館に戻ると、世界中の伝説の生き物の本を読んでいった。
そして、昼になったのでまたもや本を借りると、マージェリーさんの部屋に戻る。
すると、サクヤ様がテーブルについて、待っていた。
「お、戻ったか」
「ええ。来週、図書館の館長さんに魔石を金貨1300枚で売ることになりました」
「おー! それは良かったの!」
「はい。そちらはどうでした?」
神様会とやら。
「しょうもなかったわ。すぐに終わった」
どういう話だったんだろう?
「そうですか。すみませんが、午後からまた片付けなんかをしますので手伝いをお願いします」
「そうじゃの。では、帰るか」
俺達は転移で家に帰ると、昼食を簡単なもので済ませ、片付けや荷物を運んでいく。
この日はそういう作業で一日を終えた。
翌日。
この日も早くに起き、風呂に入ると、スーツを着た。
さらには髪の毛もちょっとセットし、身なりを整えていく。
「ハルト、かっこええぞ」
「ありがとうございます」
スーツはとても良いものだ。
誰が来ても似合うし、背筋も伸びる。
「ハルト、指輪を着けていきなさい」
ノルン様がアドバイスをくれる。
ゲーム画面を見たままだけど。
「わかりました」
ノルン様からもらった指輪を右ではなく、左手の薬指に着ける。
実は初めて左手に着けたが、ちょっと感動した。
「ハルトー、スマホが鳴っとるぞー」
サクヤ様に言われてスマホを確認すると、ジュリアさんから【準備ができたのでいつでも来てください】とメールが届いていた。
「サクヤ様、ジュリアさんの方も準備ができたようですので送ってください」
「あいよー」
サクヤ様のいつもの適当な相槌でジュリアさんの部屋に飛ぶと、ベッドにいるタマヒメ様と共にスーツを着て、髪をまとめたジュリアさんが座っていた。
「おー、ハルトさん、キッチリ決めてますね」
「挨拶だからね。ジュリアさんも綺麗だよ」
いつもの仕事服とは違い、かなりキッチリとしている。
「ありがとうございます」
ジュリアさんが微笑む。
「ジュリアさん、ノルン様が指輪を左手の方に着けろってさ」
「それもそうですね」
ジュリアさんは頷き、指輪を左手の薬指に着けた。
それを見て、俺の心の中が満たされる気持ちになると、ジュリアさんが左手で俺の左手を取り、握ってくる。
「来週だね」
「ええ。来週です。それからずっとです」
うん。
「はよ行けよ」
「遅刻は厳禁よ」
サクヤ様とタマヒメ様が呆れた顔で促してくる。
「じゃあ、行こうか」
「はい。タマヒメ様、サクヤヒメ様、行ってきます」
「行ってこーい」
「気楽にねー」
俺達は御二人に見送られて部屋を出ると、ジュリアさんの運転でジュリアさんの実家に向かった。
「緊張します?」
ジュリアさんが運転しながら聞いてくる。
「緊張はしてないけど、大丈夫かなーって不安はある」
「こういうことを言ってはなんですが、私はちょっと気楽です」
ウチにはサクヤ様しかないからね。
「まあ、どちらにせよ、最終的には当人同士が決めたことだからね」
「ええ。その通りです。たとえ、父と母が反対してももう関係ありません。私は1人の大人ですので自分で選んだ道を進みますからハルトさんと一緒になります」
不安が消えたわー。
「早く来週にならないかねー?」
「そうですね。待ち遠しいです」
ジュリアさんとお見合いしてから来週で1年になる。
お付き合いのゴールと家族としてのスタートが迫ってきていた。
いつもお読み頂きありがとうございます。
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ぜひとも、予約していただければと思います。
ついにタマヒメ様が書籍でも登場です!
よろしくお願いいたします。




