長征
――1933年9月 関東軍参謀部
「雲王と徳王が内蒙自治にむけて合意に至り国民党と交渉を進めている。関東軍としては援助を申し出る。国民党には、天津、北平経由の内蒙との物資輸送の了解を求める」
――1933年10月 関東軍参謀部
「国民党軍が第5次囲剿を開始、100万の兵を動員して黎川の共産軍を攻めております。ゼークトの助言が功を奏し反撃にも被害を押さえているようです」
「独には反共の意図を確認したうえで放置しておいて、この機にこちらも内蒙工作を進めるのがよかろう。独がなにか言ってきたら独の利権を尊重し反共の意図を伝えるということでいいだろう」
――1934年3月 関東軍参謀部
「察哈爾省に蒙古聯合自治政府が成立し、内蒙との物資輸送の了解が得られた。兵器、教育など軍事面での援助、鉄道保全、建設、資源開発の援助を行う」
――1934年10月 関東軍参謀部
「共産党が残存の紅一方面軍8万の兵力の撤退を始めました。南下して包囲網の突破を狙っているようです」
――1935年3月 関東軍参謀部
「紅一方面軍は、四川西部で軍閥と抗争しています。北上して合流を狙っているようです。国民党軍は追跡していますが、追いきれていません」
「山地で一方から押しても捕まえられるものではないが、まだ手を貸すのは早い。外蒙を通じたコミンテルンの支援の証拠を探せ。あからさまなことはするなよ」
――1935年6月 関東軍参謀部
「紅一方面軍が紅四方面軍と合流しました。張学良が共産党軍との戦闘で損害をだしています」
「蒙古聯合自治政府に包頭への進出の好機だと伝えよ。参謀本部、国民党、独、西北三馬にはコミンテルンと共産党軍との連絡を妨害し、内蒙防共を確保するための予備的措置と通知。西北三馬には経済援助の提案と回族の自治の保証をする」
――1935年7月 関東軍参謀部
「張学良の損害が増えています。共産党軍は西北三馬と交戦しています」
「張学良と西北三馬には軍事援助の提案。蒋介石には会談の申し込み」
――1935年8月 西安
「蒋介石閣下、毛沢東指揮下の共産党軍は農村に根を張り、根絶は容易ではありません。現状の中国で、都市と農村が戦えば、農村にすべてが飲み込まれます。資本家、知識人は皆殺しになるでしょう。外蒙を通じ、ソ連から近代的な兵器が送り込まれると、これを阻止することは不可能になります。火の手は満州、朝鮮へとひろがっていくでしょう。ここでソ連と共産党軍の連絡を遮断するのは日中満蒙の共同の利益にとって重要です。蒙古聯合自治政府はこのために立ち上がり、包頭に戦力を置いたのです。満洲国はこの支援を行っています。張学良閣下の部隊の損害を見ていると、共産党勢力の封じ込めにはこちらも支援を必要とされているように思います」
「お話はわかりますし、今は日中で争っている場合ではないのには同意します。しかし、日本の勢力が北方で広がっていくのを、だまって見ているわけにもいかない」
「歴史的に北方に影響力を及ぼして来られたのは理解しておりますし、ご懸念はわかりますが、北方は漢民族の祖地ではありますまい。関内、中原、南部の支配を確固としたものになさることを優先したほうがよいのではないですか。日本は、関内、中原に対する領土的野心を持ちません。なにも未来永劫協力しろとは申しません。共産党の排除ができるまでの協力でよいではないですか」
「なるほど。具体的にこちらに何を要求されますか」
「天津、北平回廊の通行権と蒙古、回族などの少数民族領域における現地政権との合意を受けた上での経済活動、共産主義勢力に対する軍事行動、そのための建設の許可です。もちろんそちらの天津、北平回廊での主権と少数民族領域における活動は尊重いたします。こちらからは軍事的支援をお約束します。日華満蒙回防共協定で、当面の問題を解決しましょう」
――1935年9月 関東軍参謀部
「共産軍が西北三馬に押され北東に向かっています」
「田尻少将の独立装甲列車旅団に歩兵1個連隊を追加、包頭に派遣する。包頭航空隊、黄河哨戒部隊を強化、銀川に飛行場を建設、歩兵1個大隊を駐留させる。東、延安のほうに主力を押し込むことを目標とする。大部隊が移動しないかぎり、北方との交通も遮断しない」
黄河哨戒部隊
40m級輸送艦 × 4
大発6隻
1個中隊
10cm対空砲
砲艦×20
――1935年10月 関東軍参謀部
「共産軍が延安に集結しつつあります。関中から食料など、外蒙から武器弾薬が流入しています」
「よろしい」
――1935年11月 満鉄経済調査会
「包頭周辺での希土類の採掘、アルミニウム生産、奉天での自動車、真空管、ラジオの生産が軌道にのりました。ラジオは当面満州用国民ラジオですが、生産、品質の安定に合わせて、北方全体に販路を広げていきたいと考えています。希土類は今のところ日本への輸出用です」
「ゆくゆくはテレビジョン生産も始めたいですが、まずはラジオですな。油田は見込みがありそうなところが発見できました。天然ガスはまだ手がついていません」
「化学工業も進めていきたいですな。ガスはパイプラインで輸送して発電に使うのが簡単ですが、まずは治安の安定でしょう。それにはやはり国民ラジオですな」
「ニッケル、クロームの輸入が増えております」
「当面は大豆油輸出で補える範囲であれば問題ないでしょう。備蓄があるとよいですな」
――1935年12月 関東軍参謀部
「田尻君、兼務で苦労をかけたが、参謀としての北方工作、内蒙資源開発などの活動、部隊指揮官としての包頭での活躍、いずれもみごとだった。ずっとこっちにいてもらいたいのだが、君には参謀本部第3部長の話がでている」
「ありがとうございます。やらせてください」
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