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茶色の場合  作者: Kwyt
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熱河作戦

――1932年12月 関東軍参謀部


満洲国国境を安定させるため、長城の線まで進出し、これを国境とする。第一段として最近何度も衝突の起きた要塞、山海関を確保する。1個連隊程度が守備についている。第8師団が攻撃を行うが、支援部隊として、田尻大佐の装甲列車部隊を投入する。


――1933年1月2日 田尻部隊


装甲列車6両編成 10cm高射砲2門 機銃多数

40cm列車砲

装甲鉄道大隊

臨時飛行場建設大隊 観測機 無線機 補給列車


「40cmで警告射撃をする。山海関東門手前500mに3発、1分間隔で」

「距離3万2000。仰角27度。方位よし。発射」

「装填よし。同一諸元。発射」

「着弾。東門正面手前600m」

「装填よし。同一諸元。発射」

「着弾。東門正面手前400m、右100m」

「着弾。東門正面手前600m、右100m」


「すばらしい」


「駐屯兵が撤退に同意しました」



――1933年3月2日 田尻部隊


「赤峰で騎兵第4旅団が孫殿英の部隊約3万に反撃を受けている。田尻部隊には救援に向かってもらいたい」

「はい。偵察機と装甲列車は、2時間で到着し射撃を開始できます。40cmはもう2時間かかります」


「偵察機より報告、第6師団区域に向かう1万人規模の敵を赤峰南方の10km地点で発見」

「第6師団より連絡。師団も圧力を受けている。制圧射撃を要請する」

「偵察機の報告地点に40cm試射」

「距離2万5000、仰角18.8度、信管45秒、方位220度。発射」

「着弾。1000m近300m右、炸裂高度500m」

「距離2万6000、仰角20度、信管48秒、方位217度。発射」

「着弾。300m遠100m右、炸裂高度400m」

「効力射」

「着弾。500m近400m左、炸裂高度400m」

「着弾。1000m遠200m右、炸裂高度400m」


――1933年3月 関東軍参謀部


「田尻部隊は、想定していた山海関や冷口の要塞攻略のみならず、赤峰で防衛戦に働いたのはすばらしかった。敵軍が早期に長城線から撤退したのは列車砲の力が大きかったと考える」

「ありがとうございます。装甲鉄道大隊が3箇所で射撃用の側線を短時間で用意してくれ、また特務部の重機の力で飛行場建設も速やかに進み、戦線の展開に合わせて列車砲が機動できたのはよかったと考えます。しかし、野戦、特に防衛戦での列車砲の使用には改善の余地が多くあります。まず射撃管制の改善をはかりたく思います。直接観測できない移動する目標に対しては、偵察情報の伝達を円滑にすることが重要です。また可能ならディーゼル機関車を使用できれば即応性が上げられると思います。さらに砲弾も、もっと危害半径が大きいものがあれば、歩兵、砲兵相手に有効になるでしょう。20cm砲も余っているようですので、こちらを使った中型列車砲を用意するのもいいでしょう。また防空能力については未確認ですので、注意が必要です」

「戦艦に加えて巡洋艦も整備するべきということか」


――1933年4月 田尻部隊野戦飛行場


「航空本部の高木です。飛行場建設についてお話を伺いたい」

「こんな手順になります。鉄道建設は1日2km。河川や海が使えるところでは、鉄道建設の代わりに浮桟橋の設置になり、数時間ですみます。鉄道か桟橋が使えるようになれば、概ね48時間で飛行場が建設できます」

・装甲鉄道大隊が鉄道を修復、あるいは側線を建設しながら前進

・装甲列車による安全確保

・飛行場建設大隊が鉄道で重機を搬入

・整地、格納庫などの建設

・防空施設、無線設備、燃料タンク、整備資材、弾薬などの搬入

・飛行場建設大隊の撤兵

・飛行機、整備部隊移動

「48時間とは速いですな」

「特務部が道路建設用に用意した重機の力です。重機の整備は航空兵力の用兵に必須と考えます。整備すべき重機については秋山中佐が詳しいです」

「弾着観測に無線電話を使われたとか」

「はい、超短波による無線電話を使いました。無線電信にくらべ、観測と通信、砲の照準の間の遅れを減らすことができました。偵察など、1人のりの機体でも使えるのは大きいです。それでも移動、集合分散する敵については情報の連絡をより滑らかにする必要があると考えています。電探による機体位置の把握、誘導、偵察機からの自動的な相対位置の通知により目標位置を算定し、迅速に射撃諸元をもとめるのがよいでしょう」

「飛行機に載せる機器が増えますな」

「はい。今後飛行機に載せる通信機器は増えることはあっても減ることはないでしょう。まだ時間はかかりそうですが、電探を偵察機に載せられれば、天候、昼夜にかかわらず敵を補足することができますし、速度の測定もできます。真空管の小型化、高信頼化は必須です」

「なるほど、真空管生産の研究は必要ですな」


――1933年5月 関東軍参謀部


「何応欽との間で停戦協定の交渉が進んでいる。これがうまくいけば満州国の形はある程度できたことになると思うが、次はどちらに向かうべきだと考えるかね」

「まずは内蒙から漢民族封じ込めでしょう。内蒙には独立運動がありますから、うまく利用すれば、簡単に漢民族の影響を減らすことができます。ソ連に対する上でも有益でしょう。さらに包頭に拠点を築くことにより黄河上流域の水運を利用し、銀川に進出、回族に対する工作を行います。40m級輸送艦を分解して鉄道で陸送すれば、中国軍の抵抗の排除は容易です。またこれにより、必要が生じたときに、黄河の水を烏梁素海に流し込み断水させることができます。将来中原に対する行動を考えるなら、黄河氾濫に対抗するための必須の準備です。経済的にも内蒙の地下資源は満州の工業化にとって価値が大きいと考えます」

「満鉄に資源調査させるのはよさそうだな」


――1933年8月 満鉄経済調査会


「十河委員長。内蒙の地下資源調査結果についてお聞かせいただけるとか」

「ソーダなどはこれまでも利用されてきたのですが、銅、鉄、鉛、亜鉛、モリブデンなどの金属、石炭と有用な資源が多くあります。また、天然ガス、希土類なども豊富ですがこのあたりは利用が難しいです」

「希土類はブラウン管の蛍光体、磁石、超音波発振子、磁器装甲板の原材料など用途が多いです。天然ガスは発電に利用するのはどうですか。工作機械、遼寧のアルナイトを使ったアルミニウム精錬、電気炉などいくらでも必要になります」

「どうしても鉄道のことが頭にあるせいですかな、石炭、製鉄一本槍で考えていました。飛行機の時代になると重工業といってもいろいろ広がっていくということですな。面白い。そういえば、ゲッペルスが国民ラジオを発表いたしましたな。啓蒙・宣伝の道具として有効ということでしょう。満州でもラジオは作れんものですかな」

「満州や蒙古での民心安定を考えれば、ラジオの量産は有益です。軍も通信機の需要が増えていますので、真空管の量産は重要課題だと考えています。ソーダがあればガラスは作れますし、モリブデンで電極が作れる。あとはフィラメントのタングステンですか」

「タングステンも江西のようなわけには行きませんが内蒙にあります。大変すばらしいですな」

「東北帝大の八木先生にご紹介いただいた会社がいくつかありますので、ご紹介しましょう。うまくいくといいですな」


満蒙電子立国始まります。


重機については「満洲国建国初期の道路建設」http://library.jsce.or.jp/Image_DB/koshashin/ta/text.html を参考にさせていただきました。


必要ないとは思いつつも、40cm砲の弾道シミュレーションを貼っておきます


挿絵(By みてみん)

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