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茶色の場合  作者: Kwyt
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強襲揚陸艦

震災にかかわる記述があります。ご注意ください。

――1921年8月、呉海軍工廠


「参謀本部の田尻少佐が、こんなことをいってきました」

・満載の大発40隻、装甲艇10隻を連続発進可能

・飛行機の運用

・外洋航行

・大河の遡行

・最高速力27ノット

・対空兵装

・水中聴音

・量産時低価格

「藤本少佐、なかなかの難題だが、陸軍の予算で開発した水雷艇は、今や連合艦隊の主力だ。航空母艦の研究ができるまたとない機会だと思って可能な限りやってみたまえ。なにか腹案はあるかね」

「吃水と速度、煙突を考えると、左右に主機を配置した双胴船がいいでしょう。吃水は4m。外観は全長112m幅30mの箱になります。大発のときの研究では、船首の形次第で速度は出せると思います。発進は浮ドックの要領で。水中ジェット方式にして舵を省くこともできます。主機は独から賠償で手に入れたディーゼルで」

「薄板で作った潜水艦2隻を菓子箱で繋いだようなものか。飛行甲板と煙突の干渉は減らせるかもしれんな。L/B比は有利だが、強度はどうする」

「容積の割に搭載重量は少ないですから、トラスを組めば足りるでしょう。軍艦ではないので砲がいらないのがありがたいです」

「大河というが横風や逆風で飛行機を飛ばすのか?」

「やってみないとわかりませんが、風が弱ければ大丈夫でしょう。バイカル湖ならまったく問題ありませんし。それよりも外洋での揺れのほうが問題かもしれません」

「ジャイロをつけてみるのはどうだ。それで水中聴音は?」

「東北帝大の電気工学科を紹介しました」


――1921年9月 東北帝大


「抜山教授は超音波の研究をされているということですが、仏でやっているような水中の潜水艦の超音波による捕捉というのは可能でしょうか」

「田尻少佐、原理的には可能ですが、水中マイクロホンによる位相差の検知のために遅延装置など大掛かりな装置が必要になると思われます」

「多少はなんとかしましょう。超音波による水深の測定も可能ですか」

「そちらのほうが簡単かもしれません。まずは発信源の開発ですな。ところで超短波の方にはご興味はありませんか」

「もちろんです。小型軽量の無線機は必須です」

「それでは八木教授にもあっていかれるとよいでしょう」


// 2年ほど早送りします


――1923年9月1日12時30分 参謀本部


「部長、東京中で地震による火災が予想されます。荒川、墨田川など地盤が軟弱なところでは消火が困難です。大発にポンプを積んで消防艇にしましょう」

「すぐ呼べるかね」

「はい、飛行機搭載試験で横須賀にいた宇品丸に超短波無線で連絡がつきました。船舶の被害は少ないようです」

「やってみたまえ」


「宇品の糧秣支隊にも横須賀経由で連絡がつきましたので糧秣、衛生、通信隊の派遣を要請しました」


――1923年9月1日15時30分 本所被服廠跡地


「北から火が迫ってるぞ。大丈夫か」

「逃げよう」

「どこへ、南か」

「南も煙が上がってるぞ」

「おい、なんだあれは、なにか四角いのが隅田川で水を吹き上げとる」

「うわ、布団がぬれる」


――1923年9月4日 戒厳司令部


「田尻少佐、この度の即応見事である。被服廠跡地では消防艇がこなかったら何人焼死者が出たかわからんそうだ」

「ありがとうございます。混乱する東京湾を1時間で縦断し、勇猛果敢に燃える隅田川に突入した船舶工兵、予算を用意してくださった軍務局、船を作ってくれた海軍、通信機器を開発してくれた東北帝大のおかげです」

「あいわかった。落ち着いたら宇品丸を見せてもらいたいという方々が多い。もしやすると行幸もあるかもしれん。心しておけ。それはそれとして防諜のため、米艦隊が応援に来る前に一旦宇品丸は撤兵させること」


――1923年10月4日 宇品


「発着艦試験ご苦労。どうだね」

「発艦は問題ありません。27ノット出してもらえば、勝手に浮きます。着艦はフックを叩きつけるように降りれば、瀬戸内海なら概ねいけます。外洋だと波次第ですな。突然大揺れするので、運が悪いとフックがかかっていてもすべり落ちます。フックがかからないこともありますが、着艦時にあまり出力を落とさず、ひっかからないときはそのまま飛び抜けるようにすれば、事故にはなりません」

「制動索と前後左右の安定が課題ということか。日本海、東シナ海沿岸や河川ではどうだろうね」

「やってみなければわかりませんが、天候を選んでもらえばいけるかもしれません」

「どのみち、舟艇が出せないような天候で上陸作戦をやることはないから、案外実戦でも使えるかもしれんね。さしあたり東京湾で展示はできそうだな」


112m ウェーブピアサー ウェルドック装備強襲揚陸艦が登場しました。


現在は9,000Kwディーゼル x 4で 36kt出ていますし、当時すでにこのクラスの出力のディーゼルは存在しますが、重量などの関係で速度はこのくらいが限界だと思われます。それでもソッピース キャメルで失速速度77kmですので風にたてば速度は問題ないでしょう。


https://oldmachinepress.com/2017/12/20/man-double-acting-diesel-marine-engines/


火災の広がり:

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923_kanto_daishinsai/pdf/1923--kantoDAISHINSAI-1_08_chap5.pdf

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