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ここは人類最前線6 ~光を受けし人の国~  作者: 小林晴幸
御前試合 ~謎の黒い影~
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120.モモさん無双



 社会的な死を経て無理もないけどブチ切れちゃった、NINJYAモモさん。

 そんな青年の腹いせ混じりな報復劇が始まろうとしていました…。


 さっきまでは全然、そう頑ななまでに反撃しようとしなかったのに。

 それはきっと仲間意識がそうさせていたこと。

 その仲間にNINJYA生命を絶たれた今、ふっ切れちゃったのかな。

 それとも形振り構わなくなったのかな。 

 はたまた怒りで我を失っているのかな。

 まあ、どれでも結果は一緒でしょう。

 お怒りNINJYA(元)による、遠慮も容赦も考慮もない破壊です。

 それに対して負い目のあるお仲間二人の方はどう対処するんでしょう?

 

 ……………あら。


 目をやった先では、こくりと、息を呑んで。

 覚悟を決めたかの如き、顔で。


 NINJYA二人が武器構えちゃってるんですけど。


 あれ、お詫びにやられてやろうってつもりは皆無ですか。

 もうちょっとこう、誠意を見せて体を差し出すくらいの気概が見たかったな…。


 一方、客席では。


『おい、どっちに賭けるよ…?』

『本気で抵抗するなら、やっぱ数で勝る方だろ』

『躊躇いが出るなら、あの兄ちゃんにも勝ち目あんじゃねーか?』

『そーだなぁ…』


 急遽、『THE仲間割れ。NINJYA同士の本気すぎる戦い』に急遽新たな賭けが発生していました。

 内容は勿論、この仲間割れの行方です。

 今のところ二人組になってしまったNINJYA二人が優勢…というところですが。

「ロロイ、ちょっとお使いよろしく!」

 楽しげなことには、乗っかとくのが吉。

 私はロロイに、ちょっと重たい財布を投げ渡しました。

「何に賭けるんだよ」

「サルファ一人勝ちと、モモさん無双に半々…ううん、7:3で賭けてきて!」

「………ま、リャン姉の金だし。本人がそれで良いんなら良ーけど」

 サイフをロロイに預けながら、もう一度会場へと視線を注ぎ、状況の確認です。


 状況の変化について行けず、置いていかれてまごまごしている予選参加者の皆さん。

 そんな皆さんをぶっちぎりに置いてきぼりにしちゃった、黒づくめ(複数系)。

 相対する、戸惑いと罪悪感から動揺の隠せないNINJYA二人。


 そんな全てに対して、怒髪天の勢いでキレてる顔バレしちゃったモモさん。


 そして当事者であり、現在の状況を招いた諸悪の根源。

 サルファは何故か、外野にいました。

 他の参加者達に混じって、野次放題。

 ちょっと待て、お前は何してる…!?

 そんな視線がずびずびびしばし突き刺さっても、一向に気にしません。

 いつも通りの軽薄ニヤニヤ顔をしているだろうことが顔を見なくても分かりますよ。

 自分で混沌の渦を巻き起こしておいて、あいつ離脱しやがった…。

 モモさんのお怒りが、サルファ本人よりもむしろ仲間だと気付かずに攻撃しまくって、自分だと気付かずにサルファを仲間だと思い込んでいた二人に比重を置いているからこそでしょう。

 サルファ本人も怒りの標的の筈なのに、現時点では放置されています。

 …うん、モモさん、サルファよりも先に同輩達を片付けることにしたっぽい。


 そうやって生まれた猶予の中、サルファはただ観覧するだけ?

 野次を飛ばすだけ?

 期待なんてする気はありませんが…

 何となく、美味しいところを掻っ攫っていきそうな気がするんですよね。

 そういう意味では、期待しているというんでしょうか。


 …サルファ、私、今ほど貴方のことを買ったことは初めてですよ。

 サルファのちゃっかり加減としぶとさに、嘗てないほど期待しました。


 でも期待なんて、一方的な感情の動きですからね。

 これで結果がずたぼろだったら、その時は…

 …私の手で再度ずたぼろにしてあげるだけで勘弁してあげましょう。

 



 モモさんの構えた武器は、奇遇なことにサルファと同じ鎖鎌。

 ああ、これもあって間違えられたのかな、と。

 一瞬そう思うくらいに、構えた時の立ち姿がよく似ています。

 でも扱い方は、同じ流派というわけでもなさそうで。


 そして私達は、すぐ知ることとなりました。


 三人の謎めいたNINJYA達の中で、誰が一番強かったのかを…。


 考えてみれば、当然なんですよね。

 だって完全に敵だと判断してかかっていた仲間のNINJYA達です。

 あの二人が敵に対する全力で息もつかせぬ連携攻撃。

 畳みかけんとするあの猛攻を、全て完璧に避けきり、傷一つ負わず。

 頭巾を奪われるのに大層時間を要した相手。

 それがつまり、モモさんな訳で。

 だから何が言いたいかというと。


 本気の攻撃をかわし、いなし、あしらえるほど。

 あの二人とモモさんの間には、実力差という世知辛い現実が仰臥していた訳なんですね。

 ええ、理解しました。


 だからこその、今この状況…。

 試合会場は、とんでもないことになりつつありました。

 どんな感じかって?

 うん、問答無用な感じの………蹂躙?

 これで血が流れていたら、一発で審判団が止めにかかる惨状です。

 惨状です。

 惨劇、なのです…。


 試合…惨劇会場は、モモさんによる殲滅戦が行われようとしていました。

 必死に猛攻を防衛しようとして、し切れないNINJYA二人。

 そしてとばっちりで吹っ飛ばされていく、周囲。

 ひゅんひゅん飛んでくる鎖、がね?

 あと本当、巻き添えって怖いね。

 モモさんは射程範囲の広い隠し武器を複数持っていたようです。

 でも攻撃は早すぎて、目まぐるし過ぎて私では眼で追えません。

 だから何が合っているのか、今一つ分かりませんが…

 紐状の、しかし鎖ではない何かが外野諸共NINJYAを吹っ飛ばそうと飛び交って、結果的に外野だけが吹っ飛ばされる悲哀。

 しかし攻撃の隙がなさすぎでしょう。

 誰も抵抗しきれずに、軽がる吹っ飛ばされる様が非現実的です。

 何だか、玩具の戦いを見ている気分。

 いうなれば紙相撲の人形vs力加減を知らない五歳児のような有様ですね。

 うん、とっても一方的。


 ある意味見事な戦いは、モモさんの技量の素晴らしさを引き立てる凄いもので。

 賭けの受付に人が殺到しました。

 一気に倍率が変わったそうです。

 みんな現金だね!



 そうして、三十分後。


 試合場で五体満足のまま二本の足で地を踏みしめて。

 しっかりと立っている人間の姿は、五人ほどにまで絞られていました。

 衝動のままに蹂躙行為に耽っていたモモさんは、どうやら疲労が深いようで。

 足ががくがくとまではいいませんが、結構無理をしている様子。


 そして勿論と言わんばかりに。

 無事な姿を曝している者の、中に。

 

 ちゃっかりサルファが混ざってました。

 

 あいつ、攻撃避けるの上手ですもんね…

 きっとマルエル婆に鍛えてもらった成果です。


 ちなみにモモさんの逆鱗破壊やらかしたNINJYA二人組は、地に臥せって屍化してました。

 わあ、不甲斐無い!


 

 現在、無事な姿を曝しているのはきっと名高い猛者ぞろい。

 だって回避の身のこなしが見事すぎたもの。

 サルファは、判断に迷うので除外です。

 というか、本当にサルファが…うん、物凄くぷらぷらしている感じ。

 疲労とは全くの無関係と言わんばかりに余裕の体です。

 ここまできたら、あとは自分で戦うしかないでしょうに。

 でもモモさんが、雑魚をなぎ払っちゃいましたから。

 結果的に露払いをしたようなものですね。

 そんなモモさんが疲労でふらふらしているのを見ると、残念でなりません。

 此処まで人数を減らした最大の功労者なのに、モモさん一人にかかった負担は大きくて。

 このままじゃ本当にサルファが一人勝ちしてしまうかもしれません…!

 いえ、それにお金賭けたんですけどね!

 でも実際にそうなりそうになると、途端に腹立たしくなるのは何故でしょう?


 私の感情は、もはや完璧にモモさん側へと回っておりました。

 サルファ、転んで頭でも打てばいいのに。





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