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第28話『寝取られ男は昔話をする・2』

 前世の数年前のことだ。

俺が7歳位のときか。まだすっかりガキンチョで、鼻を垂れてた頃だ。

 


 俺は当時、村の周辺を探索することが日課だった。

親からは遠くに行きすぎんなよと言われたけど、6歳の好奇心マシマシのクソガキがそんなこと聞くわけもなく、日に日に遠くへ遠くへと行き始めた。

 


 

 ちなみにその頃からクソビッチ……エリーゼも一緒だった。ボーグは8歳の頃に村へ移住してきたから、その頃はまだだな。



 それで当時俺が読んでた愛読書が誕生日に親から買い与えられた【茨の騎士ルゴサ】だ。物語の流れとしては至極単純で、薔薇の王国で騎士をしていたルゴサがお姫様をさらった邪竜を倒すために各地を冒険して最終的にそいつを倒す……っていう話。




 それで俺はまぁ……今となっては死ぬほど恥ずかしいし当時の俺をぶん殴りたくなるが、エリーゼをそのお姫様に見立てて一緒に森へ冒険に行ったのさ。









「ね、ねぇジョン……危ないよ、もう帰ろうよぉ」


「大丈夫だよエリーゼ!俺がお前を守るからさ!」 


 以前にゴブリンが湧いた洞窟に近い森。

たまにコボルトや狼の類が出るってことで、村からそこにだけは絶対に行くなと言われてた。



 なのにクソガキだった俺はそこに行ってしまった。

まぁ朝や昼のうちはいい。どんどんと奥へ奥へと進んで……それで、ついに迷ってしまった。



 規模的には大したことのない森なんだが、その頃は森で迷ったときの対処法なんてのは知らないし、もっと言うなら親元からそこまで離れるってことがなかった。



 それでどんどんと暗くなって……夕方頃。

俺とエリーゼはひとまず見つけた樹の下でしゃがみこんでいた。



 エリーゼは大泣き……してはなく、むしろ俺がバカみたいに大泣きしてエリーゼになだめられてた。我ながらクソダサいしぶん殴りたくなるクソガキだったが、泣いて森を出られるなら甘くはない。




 そんで次第に変な獣の鳴き声はし始めるわ、ガサガサと音がするわで当時の俺にとっては小便垂れるほどの恐怖だった。まぁ多分垂れてたと思うが……。



 それでもう真っ暗になってべそもかけなくなった俺とエリーゼの前に、ふとある女の子が現れた。全身が色素抜けみたいに真っ白で、ルビーみたいに真っ赤な目の女の子だ。




「ねぇ、なんでここにいるの?」


「ぐすっ、べそっ、ひぐっ、迷っでッ……出口、どこかわがんなくてッ」


「出口がわからなくて、困ってるの。君はどこへ出たらいいか知ってる?」



 全く言葉にならない俺に反してエリーゼが端的に説明すると、その女の子が鼻水だらけの俺の手を握った。



「出口、知ってるよ。こっち」



 素性も知らない全くの他人だったが、他に頼る人もいない。結局はついていくことになったが、その女の子のおかげで、俺たちは無事に村へたどり着けた。





 もちろん父さんや村長からは相当に怒鳴られるし、いまはいないエリーゼのお袋さんや母さんは俺以上に泣いてるしな上に村人総出で探してたみたいで滅茶苦茶な大騒動になってたんだが……その女の子は気づけばどこかに消えていた。










「そんなことが……でも、エリーゼさんは森にいたのに泣かなかったなんて凄いんですね」


「あはは、まぁアイツは昔からそうだったから。それで、なんだかんだその時の気持ちを忘れないようにこの本を読んでるんだ」


 まぁ、少なくとも浮気して俺を蹴飛ばすような肝っ玉はその頃から片鱗が出てたに違いない。だけど、今は違う。今はまだクソみたいな未来を避けることができるかもしれない。





「お嬢様、宿のある村に着きました。今夜はここに宿泊します」


「ん……、もうそんな時間なのね」


 すると、すっかり話し込んでたのか。気づけば中継地の村だ。


 村の看板をちらっと見ると【エナル村】の文字。

その上にはポーチュラカ子爵の家紋が刻まれているのが見えた。

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