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第21話『寝取られ男と竜教会の襲来』

「クハハハ!!ドラゴニア様に栄光を!村人を贄とするのだ!抵抗するものは殺せ!従うものは捕縛せよ!!」



「おいおい、どういうことだ……?」

 なんで奴ら……竜教会がいるんだ。

たしかまだ北方にいるはずで……。



 現在、俺は急いでボーグより先に村へと戻ってきた。

その結果として村が黒衣の集団におそわれているではないか。



 もちろん、村の周りには新設した壁や駐屯している兵士たちがいるので現在は拮抗している。だが、明らかにいずれは黒衣のやつら……竜教会が押し切るはずだ。





「クソっ!」

 俺は剣を抜き、近場に居た黒衣の男へと斬りかかる。

血しぶきが顔に降り掛かる。




「ぎゃっ!?」


「おい!背信者がこちらにいるぞ!」

 金色に輝く青銅(ブロンズ)の曲剣で俺に斬りかかってくる連中。俺はそいつらの斬撃を剣で逸して一人ずつ刺して、斬り上げて、そして蹴り飛ばす。




「な、なんだ!?この子供は!」


「へ、編成を乱すな!!我々にドラゴニア様がついておられる!!」


 数人斬り殺したら混乱するかと思ったのに、想像以上にコイツらは強固だ。



 狂信者っていうのはこういうのが嫌なんだ。

死んだら神の元にいけると思ってるから死を恐れないし、それを精神の支えにしやがる。



 だが、山賊の頃と比べたら何倍もマシだ。

俺の手持ちにあるのはナタでも錆剣でもなく……辺境伯から貰った鋼の長剣。



 品質は上々。

今までとは武器が違う……なら、絶対に勝ってみせる。




「掛かれェッ!!一斉に斬りかかれば所詮子供程度殺せる!!」


「子供だからって……侮るな!」

 俺は集団で切りかかってくる連中の足元を自身の小柄な肉体を生かして滑り込み、足元を集中的に切りつけていく。



「あ、足が!?」


「この、背信者め!!」


 だが、俺の肩辺りにも斬撃が入る。

傷は浅い―――が、激痛だ。だが、奥歯をがっちりと噛み締めて俺はひたすら長剣を薙ぐ。




「ッらぁ!!」

 顔におびただしい血液が降り掛かる。

頬や鼻、無数の箇所に真っ赤な鮮血がべっとりとへばりついた。





「怯むな!ドラゴニア様が我々には――」

 小隊長らしき男。

さっきから鼓舞をしてるやつを遠目に見つける。



 俺は足を前に進ませ、土を踏みしめる。

そして、その方向へと走り進める。



 目の前に無数の曲剣を持った大人の狂信者カルトども。普通の剣撃では突破できない。なら―――。



(少し怖いけど……俺の今の体なら追いつけるはずだ)


 剣を両手に握り、全身に力を入れる。

俺の体の中に流れる人並みの魔力を集中して指先まで通らせる。



 筋肉が瞬発的に膨れ上がり、剣を持つ手が固まる。

そして、それを一気に放つ。



「『強撃アタック』!!!」


 一度に振り出された剣撃が、恐ろしいほどの轟音を纏って前面の敵を吹き飛ばす。



 『強撃アタック』……。

それは冒険者が中級になってから覚える初の武技スキル


 効果はただひとつ。

"強烈な一撃"を繰り出す、それだけだ。



 だが、それだけが今の俺に出来た。

そして今、それだけのおかげで―――道が開けたのだ。




「なっ!?なぜこんな子供が武技(スキル)を!」


「カルトリーダー、お前の命を貰いにきた」


 ザシュ!とカルト小隊長の胸板を長剣が貫く。

思ったより体に負荷はない……いや、それだけ基礎が鍛えられたのだろう。




「しょ、小隊長がやられた!」


「ひ、ひいいいいい!!!」

 すると、周囲の連中が蜘蛛の子を散らすかのように逃げ始めた。






 だが、その時だった。

俺の目の前に、長身で黒衣の男が現れたのは。





 明らかに雰囲気が違うそいつ。

得物は槍。たった一本の、銀槍だ。






「クハハ、まさかこんな僻地に将来有望そうな子供がいるとはなァ」


「……あんたが、この連中の指導者か」



「いいや、俺はただの司祭さ。まぁそうだな……方面軍の指導者といえば――嘘じゃない」

 男は黒衣のフードを自ら外す。

するとそこに特徴的な褐色に幾何学模様の入れ墨を掘った男の顔が露出した。



 褐色。幾何学の入れ墨。

それが意味するのはこの大陸ではたった一つだ。



「サーシア人か……!」



「ほう、博識だな。ますます興味が湧いてきたぞ」

 男が銀槍をこちらに向けてくる。

サーシア人は幼少期より槍や弓に長ける。そして劣悪で枯れた砂漠の大地を駆け抜ける彼らの代表的な武器は―――。






「だが、死ね。俺の手に抱かれてな」



 パァン!!と破裂音が響いたと思えば、刹那にビュン!!!と穂先が飛翔。



 槍の中身が発破のように赤い炎に照らされ……穂先が俺に向かってどんどんと迫ってきた。





「不意打ちにしては下手くそだな、クソ野郎」


 だが、俺は長剣を振るって穂先を叩き落とし、すぐさまサーシア人の男へと下から潜り込むかのように剣を切り上げる。




  ガキィンッ!!!





 男の槍の柄と交差し、火花が散る。

男の顔は不気味なくらいに笑っていた。




「いいね、いいね、ますます殺したくなってきた!!」


「悪いが、俺はまだ死ねない」

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