第20話『寝取られ男と蒸気砲』
「これ本当に暴発しないんだよな……?」
俺は心配になりながら蒸気砲を近づいて改めて検分してみる。
中でピストンが蒸気圧でシュコシュコと上下する管がいくつも取り付けられており、おそらくこれで蒸気の調節とかを行ってるんだろう。
さっきボーグに聞いたとおり、構造自体は単純なはずだ。要するに蒸気をタンクに貯めて、それを一気に開放することで圧力が一気に装填された砲弾を飛ばす……。
だが俺の最大で心配な点は蒸気が爆発した場合だ。
開放した瞬間、ピストンが狂ってタンクごと破裂することもあり得る。混ぜ物まみれの金属製だし、正直頑丈さはあまり期待してない。
(まぁだけど、なんとかなるか)
当然心配事はまだある。
だが目を輝かせて俺……ってより蒸気砲を見るボーグを見ると、不思議と信じてやりたくなるんだ。
「それじゃあ、発射カウントダウンを頼む。照準はどこに合わせたらいい?」
「照準は川向こうの岩だ!あのそこそこ大きなやつ!」
ボーグに言われたとおり、川の向こうにある大きめの岩に照準をガチャガチャと重たい蒸気砲を支える荷車をじりじりと旋回させて合わせていく。
蒸気砲……前世では火薬砲をワイバーンに向けて撃った経験しかないから、文字通り人生初―――いや、蒸気砲なんて使っているやつはこの大陸どこにもいないだろうから、おそらく俺が初だろう。
しかし、重たい。
荷車自体はボーグが角材や金属の端材で補強してるんだろうが、それでもギシギシと非常に心臓に悪い音が響いている。
「照準合わせ完了だ!」
苦労しつつも、なんとか岩へと照準が合う。
蒸気砲の蒸気が早く早くと俺に急かすかのように隙間から沸騰したヤカンのように噴き出している。
「それじゃあ、カウントダウンだ!3!」
引き金に指をかける。
棒をそのまま突っ立てただけの照準器を岩に合わせる。
「2!」
引き金がブルブルと震え、それが指に伝わる。
わずかに漏れ出た蒸気が肌をジリジリと熱する。
「1!」
蒸気が震える感覚。
それが俺の体にガシガシと感じる。
「発射!」
発射するために引き金に指をかける。
オーケー、完璧だ。
その刹那。
村の方向から物々しい爆音が鳴り響いた。
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