第13話『寝取られ男と竜教会』
「竜教会、蜂起の知らせ……だと?」
792年2月。
雪の降り積もるクローヴィア城の中庭。
そこで辺境伯の放った言葉は、"史実"とは違った展開。
そしてなによりそれの問題点――――それは、史実以上に最悪の事態となり得ることであった。
「ふぁー、ひまだなぁ」
王国中央の砦。
一般的には山賊などに対しての見張りを行う小規模の砦。無論、ここへ配属される兵士たちは死への覚悟などは微塵も抱いてないことだろう。
――――爆炎が迸る。
それと同時に、兵士の数人が一気に石壁と共に弾け飛んだ。
「ンー、大した事なさそうだナァ。おイ、お前ら……あとは好きにしロ」
竜の紋章の刻み込まれた黒衣。
それと同時に、フードがはだけて幾何学模様のタトゥーまみれの顔があらわになる。その目は真紅に輝いている。
「な、なんでお前たちはこんなことをするんだ……王国が何をしたという!」
「なにをしタァ?異教を信仰してル……ただそれだけだヨ、まァ……それだケとは言えないもんだがサ」
衛兵の一人は火傷まみれで這いずり、男を見上げてそう叫ぶ。男はしゃがみ込むと、静かに見下すような目で衛兵を見下ろし――――――。
「ぁ」
ザクロのように、血が弾け飛ぶ。
黒衣の男はまたフードを被り直すと、燃え盛る炎を背景としながら手をニギニギと握り直す。
「さァて……いっちョやらねぇとナァ」
―――――竜神様のために。
北方。
氷雪海の影響で他の地方より雪の降り注ぐ王国の中でも特に極北の地のそこでもまた、血の嵐が起きようとしていた。
「アハハハハハハ!!!逃げ惑いなさい!恐れ震えなさい!!これがッ、これが竜教会の粛清よ!」
翼のみの紋章が刻まれた黒衣を纏った多数の者たちが剣で、斧で、魔術で、ありとあらゆる手段を使い氷雪の積もる砦を襲撃する。
兵士たちは成すすべもなくやられる。
なぜか?
唐突な襲撃、吹雪による視界不良。
なにより長らく北方の海賊や異種族に対する襲撃を受けてなかったことから、兵士たちの練度の低さが露呈したのだ。
「永遠に祈りなさい!我が主……竜神様に!」
その号令と共に砦が爆発する。
雪と共に震える爆炎……その衝撃はまたたくまに王国中へと伝え渡ることだろう。
長らくお待たせしました!私事で遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした!




