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第10話『寝取られ男と暴れ豚の決着』

 互い、交差し合う。

銀刃と猪牙、2つの光が進み合う。



 片方は頭半分を失い獰猛な瞳で。

もう片方はその双眸で確かに睨みつけている。







 最期は、呆気のないものだった。

刃が猪の頭を切り飛ばし、噴水のような鮮血と共に猪は頭を失ってその場に倒れ伏せた。



 ドク、ドクと鼓動とともに頭の切り離された首から血が放ち出る。




「ハァッ、ハァッ」

 だが、ジョンも無事ではない。

無傷ではあるが、その緊張と筋肉の強張りは一歩間違えば自身が殺されていたというプレッシャーを余すことなく感じさせる。




 ワイルドボアはわずかばかりに体を動かせば、そのまま息絶える。




 残ったのは顔の半分を切り飛ばされた生々しいワイルドボアの頭のみであり、血走った目がジョンを下より睨みつけていた。


 

「……」

 サラサラと小川が流れる。

枯れた水郷の生命の息吹、それを感じさせる水の流れ。



 だがジョンにとってはそのようなこと、些細なことでしかなかった。


 

 小川も、木漏れ日も、草の香りも、そんなことよりワイルドボアという獣を殺した事。



 かつて自身が苦汁を舐めさせられたそれを倒したこと、そのことが、その達成感と感動が今のジョンにとっての全てであったのだ。




 たった一太刀でも。

一つでも間違えばワイルドボアの命を奪い取るには至らなかったのかもしれない。



 だが、成し遂げた。

二太刀でワイルドボアを仕留めた。前世では何発も剣を当てても殺せなかったワイルドボアを。



 


「やった……やった」

 血のこびりついた刀。

それがジョンの功績を静かに讃えているのだけは確かであるのだ。

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