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第33話『寝取られ男は修道院跡に向かう』

 鬱蒼としげる森。

木漏れ日のこぼれ落ちるそこに俺はいた。


 ヴィクトリアの言っていた修道院跡のこと。

そこになにか根本の手かがりを探せないかと考えたんだ。


 それと錆び剣は父さんに取り上げられた。

必要だから、と言っていたが多分捨てたんだろう。ただ代わりに家裏にあった鉈をこっそりと持ってきている。


 ジャリ、ジャリと苔むした土を踏みながら森の中を進んでいく。

小鳥の鳴き声やいろいろな小動物や鹿の鳴き声や足音、木の葉のさえずる音も聞こえる。


 しかし、いかんせん足場が悪い。

足を大きく上げて、木の根を越えていく形でなんとか進んでいく。

超えられそうにないものは細かったら鉈で切り落としたりしつつ。


「うん?アレは……」

 なんだ、あれ。

疲れた足を時々横に揺らしていたらどこか違和感のあるものが見えた。目を細めて見てみるとガレキの跡のようなものがある。


「あれが修道院跡か?」

 目当てのものを見つけて高揚感がほのかに胸の中を温める。

とりあえずはなにかあるのかと思って進んでいく。

修道院跡に続く道はすっかり緑の苔に覆われているものの、下地に硬質な感覚の材質を感じる。石……だろうか。


 昔はさぞや使われてたんだろう。

とはいえ今の精霊教とは違う……古精霊教の修道院はやはり今のものとは全く作りが違う。


 ちなみに精霊教は主に四大元素から起因する四大精霊とその上に位置する光の精霊……いわゆる精霊神を信仰する宗教だ。古精霊教はその前身で、精霊神という概念はなく火水土風光闇の六大精霊を信仰していたという。


 まぁ今となっては信仰する人間なんてエルフかほんのごく一部の人間くらいの教派で、今はもっぱら精霊教が信仰されている。教会や修道院といった場所も精霊教が主なのだ。


 ただし今の帝国では精霊教は禁教とされているらしい。

もっとも昔は普通に信仰されてたらしいんだが……多民族宗教のような一面もある精霊教は都合が悪かったんだろう。


 今は帝国の北部で信仰されていたノルディア神話とかいうのが起源のノルディア教とか言う四大神教を国教として信仰してるらしい。

つまり王国と帝国は宗教でも対立しているということだ。


 閑話休題。

ともかく俺はそんなことを考えながら長い坂―――おそらく昔は階段だったのであろうそこを登っていく。


 そしてついにたどり着く。

まるで戦争で破壊されたかのように無残な姿で自然に溶け込んでいる修道院跡の前へと。


 昔は水道だったのだろう。

溝のようなところを少し遠くにある岩の裂け目から湧いた水が通り過ぎ、近くに流れる沢へとつながっている。


 おおよそ人間が生み出せる風景ではない。

まさしく自然と人工の融合した風景がそこには広がっていた。

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