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第20話『寝取られ男と竜神の戦い/中編』

 紅の魔力に滾る刃が俺の頬の直ぐ側をかする。

当たればただでは済まないことがひしひしと理解できる。


 師匠をあそこまで追い詰めた魔力の塊だ。 

剣の形をしているだけで、実際は化け物みたいな魔法と思ったほうが良い。


「どうしたの? 攻撃しないのかしら?」

 

 竜神の剣戟が激化していく。

我流で無茶苦茶な剣筋だが、有り余る火力がそれを補ってやがる。


「戦闘は順番だ。今はあんたの番、そして俺の番。そして相手の攻撃を抑えきれなくなったほうが負けになる」


「なら一生お前の番など来ないわね。逃げているだけだもの」


 左に袈裟斬り、後ろに3歩。

続けて横から一閃、しゃがんで避ける。


 上からの一撃、2歩横にずれる。

下からの切り上げ、右斜めにステップ。


 突き、体を捻らせ回避。

連続斬り、左にステップ、右にずれて素早く懐に潜り込む。


 刃が触れた途端に地面は小さな爆発を起こしていた。 

竜神っていうのは案外派手好きみたいだな。


「俺の番だ」

 事前に装填していた短銃の引き金を素早く引く。

火薬が弾け飛び、唸るような銃声が鳴り響いた。


「こんな玩具で私をどうにかできるとでも?」

 効き目はなし。

想定内だ。


「どうにかできたら今頃苦労してないさ」

 短銃のバレルをつかみ、グリップで殴りかかる。

紅い剣での防御。恐らく触れたら爆発するぐらいの想定はしておいたほうが良い。


「それごとお前を斬り裂いてあげる」

 

「ならお望みにやってくれよ、派手なやつをな」

 刃が触れる。

それと同時に俺はバレルから手を離し、素早く腰に着けていた弾薬袋を思い切り竜神のほうへと投げる。

 

 想定通り、刃が触れた短銃は激しく炸裂。

上等な品をわざわざあんなふうに使うなんて物凄く勿体ないが、それでも活路は開けた。



「怖気づいたのかしら………っ!!!!??? がッ、はァッ!?」


 火花が火薬を穿ち、爆轟。

それと同時に、中に入っていた大量の鉛玉が竜神の体を一気に貫く!


「ぐ、ぅッ!!」

 俺は後ろに飛んで受け身を取っていたものの、運悪く流れ弾が肩をえぐった。激痛こそ走るが、我慢の範疇だ。師匠の受けた傷に比べたら、屁でもない。



「卑怯な、真似を……してくれたものね……」

 

「さっきより美人になったな、竜神サマ」


 体の至る所に風穴が空き、ドクドクと真っ赤な鮮血を絶え間なく流す竜神。再生こそしつつあるが、あの傷すべてをすぐに治すことは不可能だろう。


「人形のッ! 人形の身でなければ、こんな男、赤子をひねるように容易に殺せるのにッ……はぁ、ハァ!」


「はは……そいつは、残念だよな。でも、俺はよかったって思うよ。あんたが本調子じゃないおかげで、勝ちの目がある」


 といっても、俺だって万全とは言えない。

イル・ファーストの戦闘で負った傷と負担が誤魔化しきれなくなってきた。正直、今はぎりぎり気力だけで無理やり持たせてるような状態だ。


 時間が経てば立つほど、竜神は再生して調子を取り戻していく。 その前に、こいつをどうにかして倒さなきゃならない。



「人形には、コアがある。それをぶっ壊してしまえば……いくら再生しようと倒せる」


「壊させはしないわ、断固として。ここで貴様を殺すから」


 満身創痍の状態で紅い剣を向けてくる竜神。

人形だって無敵じゃない。師匠のおかげで、ヤツ自身は相当な負担を貯めてるはずだ。


「そうか? ハッ、なら……勝ってみせるさ」



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