追跡開始!
SNSにあげられた動画に写っていたのはどう見てもカノン先輩で、先輩を乗せた車はそのまま何処かへ走り去って行った。
「この車を探せば見つけられるかも……!」
「いや、流石に無理っしょ。こんなん見つけられるわけ……」
《ちょっと待って、今調べてみる!》
カノン先輩……。
今頃どこにいるんだろう。
◇◇◇
「ちょっと! 私をさらってどうするんですの? こんなこと許されると思いまして!?」
「あー、ちょっと大人しくしてて下さい。俺たちだって上の命令には逆らえないんですから」
「きゃぁああ!! 触らないで下さいまし!! 触れたら後でセクハラ罪で訴えますわ!!」
「……先輩、俺たちなんでこんな仕事させられてるんですかね?」
「仕方ないだろう。奥様の命令には誰も逆らえないんだから……ほらお嬢様、危ないからシートベルトして下さい。誰もお嬢様のこと襲う気ありませんから」
「なぜ誰もいないと言い切れますの! やはり胸ですの? みんなスタイルで判断してると言うんですの!? やっぱりセクハラじゃないですの!! きぃいいいいい!!!」
「「はぁ……疲れる」」
◇◇◇
62:何でそう思ったの?
63:今から説明する。まず一つ目は、今朝からお嬢様のSNSの更新が途絶えていること。二つ目は、この子が着てるTシャツがまだ世間に出回っていないこと。
64:さっきのオタクだけど、この子のシャツよく見たら普通のキャラのイラストじゃなかったわ。服は似てるけど髪の毛の色が違う。
65:あ、コラボ商品か
66:なるほど
67:いや流石に偶然じゃない? 今時Tシャツくらいオーダーメイドで作れるっしょ
68:確かに
69:それもそう
70:デザインは公式発表されてるしな
71:なんだ勘違いか
72:危うく騙されかけたわ
73:取り敢えず車種は分かってるからSNSに貼っとくか
74:それで何か足取りが掴めるかも
◇◇◇
《すごい……情報がもう……》
「どうしたんです?」
「何の情報ですか?」
《二人ともSNSを見て!》
言われた通り見に行くと、同じ車種の車を近くで見たというコメントが散見された。
これを頼りに探すことは至難の業だが、何も手がかりが無いよりはマシだろう。
今はとにかく動かなければ。
「……父さん!」
「う……何? 何か事件でもあった? 危険なことに首を突っ込みたくないんだが……」
「お願い! 一生のお願い……!」
うるうる。
潤い度・当社比1.5倍で頼み込んでみる。
「い、いやダメだ。お前達のためにもここは手を引くべきだろう」
「そんな……」
その時だった。
「パパ、お願い!!」
「瑠、美……!?」
普段は素っ気ない態度を取る瑠美が父さんの腕を取って頼み事をしている。父さんの目が動揺によって見開かれた。
「そんなに……大事なことなのか?」
「うん」
「危険なことはダメだぞ。母さんが怒るし」
「分かってる。後でちゃんと怒られるから」
「えぇ〜、気が進まないなぁ」
言いつつ父さんは車の鍵を探しに行った。
……俺の時と対応違いすぎない?
◇◇◇
101:あ〜ダメだなこりゃ
102:全然情報が集まらない
103:まだ誘拐って決まった訳じゃないだろ
104:その通り、可能性はこの三つ。
① 誘拐されてSNS更新できない。
② 某ウイルスに感染してSNS更新できない。
③ マリモたんの我慢がついに限界を超えて、カノンお嬢様を手篭めにしかけたから事務所の謹慎処分が下されてSNS更新できない。
105:③……?
106:③だな
107:③が一番ありそう
108:(まあ実際は感染説も微レ存……)
109:いやそれだけは流石にNG。
110:②は無しでオナシャス
111:俺一応募金してくる。
112:さっき俺もしといた
113:今のところ2番が一番有力か
114:SNSでもそういう噂になってんな
115:募金額めっちゃ集まってて草
◇◇◇
父さんの車で外に出た俺たちは割と近所に住んでいるはずのマリ先輩と合流しに先輩達の家に向かう。
途中で一応ホノカにも何か聞いていないか聞くために電話をかけた。
「もしもしホノカ、今大丈夫?」
《何〜? 今ちょっと忙しいんだけど》
「カノン先輩について、何か聞いてない?」
《ああ、連絡先とか聞かれたヤツね? よく分からないから無視したわよ。あとネットで何かウイルスに感染したことになってるのを見たけど……》
「は? ウイルス?」
《見てみなさいよ。朝から凄いわよ。噂が噂を呼んで凄い額の募金が集まったんだから》
本当なら全く関係ないが、事実を公表するわけにもいかないし、別に悪いことではないので黙ってても問題はないか。
「忙しいって、何かあるの?」
《あれ、知らないの? 前に言ってなかったっけ? 今日はライブがあるって》
「ライブ? こんな時期なのに?」
《もちろん実際に行くわけじゃないわよ。事務所側のビルに電光掲示板があるでしょ? そこに私の配信映像を中継で繋げて、観客は前の広場に車を停めて見られるようになってるの》
「わざわざそんなことして人来るのか?」
《それが案外来たい人がいるみたいでさあ。社内で配信することになってるから近くで反応も見られるし、その触れ込みで宣伝したら結構人が集まったの。お金儲けじゃなくてあくまで宣伝のためなんだけどね。私もそんな大役にまさか自分が選ばれるなんて思わなかったわ》
既に会場には何台もの車が押し寄せている模様。某国の大統領選挙じゃあるまいし、何気にハンパない集客力だ。
そういえばホノカって以前のコラボの後から国内外で知名度が急上昇したんだっけ。
《これから準備もあるからなかなか繋がらないと思う。用があったらごめんね》
「いやいや、忙しい時にごめん。頑張って」
《あんがと! じゃあ、また後でね〜!》
◇◇◇
マリ先輩の家の前に着いた俺たちは先輩を乗っけて目撃情報のあった地点に向かう。
「初めましてマリ先輩。直接顔を合わせるのってこれが初めてだったよね?」
「うん、瑠美ちゃん! こちらこそはじめまして〜!」
「悠長なことやってる場合じゃないぞ、早く目撃情報のあった場所に向かわないと!」
「えっ……ほ、ホンモノのユウちゃん!? うわぁあ!! 本当にちっちゃぁい!!!」
やかましいわ。
悪かったな、合法ロリで。
「取り敢えず早く乗って。先輩、あれから何か分かった?」
「ううん、瑠美ちゃん。ネットの方も動きはないみたい。SNSの複垢でフォロワーに車の目撃情報を聞いて、あの動画を拡散しまくったくらいで他は特になんにも……」
「焦ってもしょうがない。とにかく情報を頼りに探すしかない」
「ユウちゃんの言う通りだね……あっ!?」
「……えっ、何!? どったの!?」
「間違えて本垢の方でやっちゃってた!? ごめんすぐに消す……これでよしっ、と」
「も〜、気をつけて下さいよ?」
◇◇◇
356:えっ……………………!?!?
357:やっっっっばーーーーー!!!!!
358:1の予想ガチやん。。。
359:みんな一瞬だったけど見てたよな?
360:すまん分からん
361:誰か画像貼ってクレメンス
362:これはヤバくなってきた
363:このスレも凄い勢いで伸びてね?
364:SNSの方もすごいよ
365:今拡散されまくってる
366:画像まだ?
367:今貼ろうとしてる
368:このページクッソ重いわ
369:鯖落ちしないか心配になってきた
370:目撃情報めっちゃ増えたな
371:一瞬で投稿数十倍くらいじゃん
372:早く貼って!!
373:自分で見に行けばええやろ
374:暴言禁止。ここで喧嘩すんな。
375:ごめん、やっと貼れた↓
<< 水田マリモ:この車知らない〜?>>




