表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/50

ユニット結成

 マリ先輩とのコラボの後、俺はカノン先輩に電話で分かったことを伝えた。


《可愛くて、頼り甲斐があって、真面目で一生懸命……それがマリのタイプですか。やはり吉田さんで間違いなさそうですわね》


「先輩の方で何か分ったことは?」


《申し訳ないですが、全くありませんの。事務所の知り合いにそれとなく聞いてみたら、噂自体は知っているものの、相手については誰も知らないようでした》


「うーん……発端になった出来事も特にないみたいだし、内部からの漏洩(リーク)がどうも発生源っぽいんですよね」


《まあ現代はSNSもありますし、情報がどこから広まるのか分からないご時世ですから。人伝(ひとづて)だってネットで拡散されれば立派な噂になりますわ……いずれ瑠美さんが炎上したりしなければいいのですけど》


 カノン先輩の懸念はもっともだ。

 バレる前に状況を把握しておきたい。


《いっそ本人に聞いてみるのもアリでは?》


「それが聞いたら"いない"の一点張りで、全然マトモに取り合ってくれなくて……」


《そっちもですの? 私もマリに聞いたら、なぜか"誰かなぁ〜?"と可愛くはぐらかされてしまって……》


 どうしたものかと頭を抱える俺たちの思考は同じ方向へ自然と向かっていく。しかし、それは長らく避けてきた選択肢でもあった。


「もうさ、あの人に聞くしかなくない?」


『でもあの方は大変口が軽そうですわよ? 質問した途端に吹聴する未来が見えますわ』


「でも他にどうしようもないしなぁ」


《確かに……手詰まりですわね》


 これは最終手段だ。噂に耳聡そうなアイツなら詳しいことを知っていそうだが、尋ねる代償としてこちらの情報も周囲に筒抜けになる恐れがある。


 だがそれでも、やるしかないのだ。

 ここまで来たら仕方ない。

 アイツを頼ろう。


「先輩……頼みましたよ?」


《ええ、私に任せなさいですわ!》


◇◇◇


 ということで。

 ホノカとカノン先輩のコラボである。


《くしゅんっ! さっきから誰かに噂されてるのかな?》


《き、気のせいではありませんこと?》


【婆さん身体に気をつけろよ】

【風邪も流行ってるからな】


《誰が婆さんよ!? 全く、ユウめ……!》


【すっかり定着してて草】

【天才的ネーミングセンス】

【天災的の間違い】


《きぃいいいい〜〜〜!!》


《さ、さあ今日の予定を発表しますわよ!》


【お嬢様が押されている……だと?】

【お婆さんの癇癪(かんしゃく)には敵わない模様】

【婆さん自重しろや】

【キレる老人】


《何ですってぇえええ!?》


《きょ、今日は歌配信ですわ! ホノカさんと雑談しながらお歌をお届け致しますの!》


《ハッ……そうだった。視聴者からの質問に答えつつ、歌をお届けするよ〜!》


【普通に楽しみ】

【ホノカ歌うまいからな】

【お嬢様の選曲も興味ある】


《歌の前に質問からだね。まずはコレ!》


<< お二人ともこんにちは。何気に今回が初のコラボとなるお二人ですが、お互いに対する印象はどうですか? >>


《えーと印象、印象ねぇ……カノン先輩は、いつも一生懸命で情熱的なイメージかな。ちょうど衣装も赤いし、とっても似合っていると思います!》


【炎上の赤】

【先輩に気を使ったな】

【空気の読める新入社員】

【日本人的で草】


《私のホノカさんに対する印象は、歌がとてもお上手な印象ですわ。定期的にやっている歌配信の動画も毎回チェックしてましてよ》


《え〜、本当ですか!? 嬉しい〜!!》


《ホノカさんの歌のセンスは本当に素晴らしいですわ。まさに才能ですわね》


《や、やだ、そんなに褒められると……》


《それに加えて、お笑いも上手ですわ!》


《え?》


《歌の合間に挟まれるユーモラスなリアクション芸には毎度思わず膝を叩いて笑ってしまいますの! 特にユウさんとの掛け合いは阿吽の呼吸と言って差し支えないですわね! 歌の才能に加えてお笑いのセンスもあるなんて、本当に羨ましい限りです。私が一目置く後輩なのですわ!》


《そんな、私……お笑い芸人だったの?》


【気づきで草】

【半分芸人・半分歌手】

【Vtuber要素ないやんw】

【堺◯章みたいだな】


《きぃいいい!!! 誰が孫悟空よ!?》


《おぉ……若干ジェネレーションギャップのあるボケにも反応する対応力。今日のキレも好調ですわね!》


《誰がツッコミ担当だ!?》


【この組み合わせすこ】

【何繋がりでコラボすることになったのか】

【え、お笑いライブでしょ】

【コンビ結成記念】


《まあ、私もですの!? 私、祖母がお笑い好きだったのもあって芸人さんには少し憧れてますのよ。嬉しいお世辞ですわ♪》


《って、私は芸人じゃないんだけど!?》


【ツッコミもうええ(笑)】

【早く歌えw】

【芸人に終始した歌手の末路】


 これが後に語り継がれる、Vtuber史上初のお笑いユニット誕生の瞬間であった。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほんとにコンビ組んだりして
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ