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魔法少女おばあちゃん 〜78歳のおばあちゃん、16歳の侯爵令嬢に転生?!〜  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍化進行中
第五章 魔境の森

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61、ハルちゃんが驚いたこととは……?

 白蜘蛛ちゃん……もといラーネは、私によく懐いた。

 コニーくん曰く、ダークウィーバーは非常に好戦的な種族で、肉食系の魔物なのだとか。マザーと呼ばれるメスのダークウィーバーは、一度に何千もの卵を産む。けれども、その中の一部しか育てることはしない。一説によれば、生まれた子ども達の魔力量を把握しており、魔力量の多い者たちを育てているのではないか、と言われている。

 ダークとついているのに、白いなんて……ホワイトウィーバーに改名したらいいのに、と呟いたら、コニーくんも「そうですね」って笑っていた。


 ラーネは肉食系ということなので、餌も当然倒した魔物の肉をあげることとなる。

 ただ、ここで問題が起きた。ラーネにあげるお肉は、浄化魔法を掛けた方がいいのかどうなのかということだ。私がマチルダちゃんからもらったお肉をじっと見つめていると、そこに現れたのは設営を終えたユウくんだった。


「クリス、どうした?」

「ああ、ユウくん。ラーネにあげるお肉は浄化した方がいいのかどうなのか……と思って」

「……それは流石にコニーが分かるわけないな……」

 

 いくら博識のコニーくんでも、そのような情報が元々ないのならばどうしようもない。私はため息をつくと、足をぶらぶらさせた。


「過去にダークウィーバーを飼ってる人がいたら良かったのにぃ〜」

「いや、無理だろ……」


 ユウくんの言葉に「まあ、そうだよね」と納得する。私たちはともかく、人を襲う魔物を飼育しようとは思わないだろう。怖いし。

 口を尖らせて、空を見ながらどうしようか悩んでいた私に、ユウくんが提案をしてくれた。

 

「なら、浄化した肉とそのままの肉をラーネの前に置いてみれば良いんじゃないか?」

「あ、それ良い! そうしよう!」


 幸い、手元にあるお肉はまだ浄化を掛けていない。私は先程使用した魔法――シェルブ=ラズール(草刃の奔流)――を使用し、ラーネが食べやすそうな大きさに切り分ける。

 そしてかまどを作り終えたコニーくんに事情を話し、片方だけに浄化の魔法を掛けてもらうよう依頼した。


 コニーくんは快く了承してくれたので、今ラーネの目の前には落ち葉を皿にした、浄化したお肉と浄化していないお肉が置かれている。

 ラーネは目の前に盛られたお肉を交互にキョロキョロと見ていた。そしてお肉の後ろで様子を見ている私に、まるで「食べて良いの?」と言わんばかりに私を見つめている。


「良いのよ、このお肉はあなたの食べ物だから。どちらが食べられそうかしら?」


 私の言葉を理解しているのか、ラーネは私とお肉を交互に見た後、おずおずと近づいていく。どちらを食べるか迷っているのだろう。器用に足で持ってみたり、顔を近づけてみたり……その様子が可愛らしくてつい笑みが漏れる。


 するとその時、懐かしい感覚が戻ってきたような気がした。


『やっほー、ミヤちゃん久しぶり……って、あれ?』


 やっぱりハルちゃんだ。最近は全然現れないので、少し寂しいけど……ハルちゃんも仕事があるから仕方ないよね。

 そう思っていたら、ハルちゃんは私の考えを読んでいたのか、盛大なため息をついた。

 

『そうなんだよー。ちょっと別世界のお仕事で厄介な話があって、そっちにずっと取り掛かってるんだ。やっと休憩が取れて、ちょっと覗いていたところー。あ、スタンピート鎮圧お疲れ様』

「ありがとう、ハルちゃん。あの時、時間を教えてくれてありがとう!」


 私は空を見ながら微笑んだ。

 あのお陰で辺境伯軍と私たちは準備を完璧に終えることができたのだ。あれがなかったら、夢見秘薬もできなかっただろうし。

 そう考えていると、ハルちゃんは申し訳なさそうな声色で呟いた。

 

『あの後急に接続切っちゃってごめんね……仕事が入っちゃったの』

「忙しいんだから仕方ないよ。ゆっくり休んでね?」


 風邪引いたら困るものね……と思って、私はハッと気づく。神様だから、風邪は引かないんじゃない?

 まあ、でも休憩は必要よね。


『ありがとう、ミヤちゃん。ところで、その目の前にいるの、ダークウィーバーだね? 珍しいねぇ』


 ハルちゃんは白蜘蛛ちゃんのことを知っているらしい。しかもコニーくんが言っていた種類で合っているようだ。本当にコニーくんは博識だ、と感動する。

 

「ラーネのこと? やっぱりダークウィーバーで合ってるのね」


 私まで心が温かくなってくる。コニーくんが褒められたような気がして、嬉しくなっていると、ハルちゃんが驚いたように声を上げた。

 

『あれ、カタカナ苦手なミヤちゃんが、ダークウィーバーを言えてる!』

「ラーネは何故か覚えていたのよね」


 ダークなのにホワイト、という下りがあったからだろうか。ラーネの種族は印象に残っている。と言っても、多分一週間も経てば忘れる気がしなくもない。そのことにも驚いていたハルちゃんは、白蜘蛛ちゃんがラーネという名前になったことを聞いて、さらに驚いていた。


『しかも名前が格好いいじゃん! どうしたの?! ミヤちゃん、悪いものでも食べたの?!』

「ユウくんに考えてもらったのよ。最初、シロ太にしようとしたのだけど、『犬みたい』って言われてしまって。流石に蜘蛛なのに犬みたいな名前をつけるのはねぇ」

『ああ、ユウくんなら納得したぁ……』

 

 なんか失礼なことを言われたような……? まあ気のせいよね。

 そこまで考えて、私は「あ」と声を上げた。

 

「ねえ、ハルちゃん。ラーネって肉食らしいじゃない? 浄化したお肉とそのままのお肉、どっちを餌にしたらいいかしら?」


 さっきIPに聞いたけれど、それは分からないって肩をすくめられてしまったの。もしかしたら神様であるハルちゃんなら知ってるかもしれない!

 ハルちゃんは私の言葉を聞いて待つように告げると、すぐに本を捲るような音が聞こえてくる。

 しばらくしてページを捲る音が聞こえなくなったと思ったら――。


『いや、流石に分からないなぁ〜。ごめんねぇ』


 悲しそうに話すハルちゃん。私は申し訳なくて慌てて言葉を紡いだ。


「あ、ごめんね! 分からなかったら仕方ないよね」

『僕も神とは言え、全てを把握しているわけじゃないからね……けど、きっとその子ならどっちでも大丈夫だよ!』

 

 その言葉に私はふと昔のことを思い出した。

 ハルちゃんが「大丈夫だよ」という時は、全然問題のない時ばかりだったことを。きっと今回も問題はなさそうね、と思い安堵していたところ……。


『ミヤちゃん、僕を信用しすぎてない? 大丈夫?』


 不安そうな声でハルちゃんが話しかけてくる。


『人を疑うことをしないと、悪い人に騙されちゃうかもよ?』


 まるでテレビのドラマに出てくる悪役のような笑い方をするハルちゃんに、私は我慢できず笑いが漏れる。そして空へと顔を向け、改めて満面の笑みを浮かべた。


「これでも、人を見る目があるから大丈夫よ!」


 ハルちゃんと遊んだ六年。ハルちゃんとユウくんじゃなかったら、あそこまで仲良くできなかったと思う。二人のことは大好きなのだ。

 そう考えていると、ハルちゃんの反応がないことに気づく。首を傾げていると、ハルちゃんは正気を取り戻したようだ。


『ミヤちゃん……ありがとう』


 心の篭ったありがとうを聞いて、私は空の更に先にいるであろうハルちゃんに向けて、改めて笑いかけた。


 

 

**

 

「お嬢様が空をずっと向いていらっしゃるのですが……」


 解体を終えたマチルダが俺に声を掛けてくる。指差した先には、空を見上げて楽しそうに笑っているクリス。あの表情はハルと話しているのだろうな、と当たりをつけた。


「ハ……ジェフティ様と話しているんだろうな」

「ああ、女神ジェフティ様とお嬢様は旧知の仲だと仰っていましたね」


 マチルダは納得したような表情で頷く。


「多分、ラーネのことでも聞いてるんじゃないか? 餌は何したらいいんだろうって」


 ミヤのことだから、神様は何でも知ってそうよね! って思いながら聞いているんだろうなと思う。

 流石のハルも知らないんじゃないか……いや、ワンチャン知っているかもしれないが……。そんなことを考えていると、マチルダがじっと俺を見ていた。


「勇者様も女神ジェフティ様をご覧になったことがあるのですか?」

「今世は会ったことがないが……前世ならな」


 あの時のハルを神様と言っていいのか分からないが。そう考えていると、マチルダの身体が揺れ始めた。珍しいな、と思って彼女の方へ顔を向けると、マチルダは何かを決意したようだ。俺の顔をじっと見つめてくる。


「どうした?」


 そう俺が訊ねると、マチルダはキッと目を釣り上げる。そして――。


「あの、女神様ってどんなお姿でしたか? 喋り方は?」

「え、あ……は?」


 目を点にして驚く俺の様子など全く見ていないのか、彼女は眉間に皺を寄せて凝視してくる。俺はその圧に負け、ポツポツと話し始めた。


 短い髪に、幼い顔立ち、そして極め付けは自分のことを「僕」という――そう話すとマチルダは頬を染めながら、天を仰いでいた。

 

 俺は思った。

 ――マチルダって、よく分からん。

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