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どうやら守ってくれているようです【4】

 私は早速、翌日真人さんと二郎くん、たまたま店に来ていた鞍馬さんに大福くんのことを話した。


「……ということなんですけど、私にはどうすれば良いのかわからなくて……皆さんの意見をお聞きしたいんです。正式な依頼の話でもないのにすみません……」


 私が申し訳ないと思いながらそろりと視線を上げると、真人さんは安心させるようににっこり笑う。


「優希さん、気になさらないでください。前にも言いましたが何か心配事があるなら、こうやって話していただいた方が私としても安心できるんです。優希さんが一人で悩まれているほうが心配になってしまいます」


「そうだよ! 優希さんにはいつも助けてもらってるし、気軽に話してくれて良いんだよ!」


 真人さんと二郎くんの言葉に胸があたたかくなる。


「ありがとうございます!」


 私は二人の優しい笑顔に頭を下げると、笑みを返す。




「ですが困りましたね……おそらく優希さんが嫌な感じがしないのであれば、優希さんの予想通りおそらく大福くんなりにご主人様を守っているんだとは思うのですが、直接見ない限りなんとも……」


「それにこういうのは真人より、二郎のほうが適任じゃないのか?」


 私は鞍馬さんの言葉に首を傾げる。



「二郎くんが適任なんですか?」


「そうですね。私もそうは思うのですが……」


「うん! 今回は僕に任して!」


 二郎くんが「ふふん!」と胸を張り、得意げに頷いた。私が不思議そうに首を傾げると、二郎くんがにっと笑う。


「僕は猫又って話したでしょう? だから動物の声はなんとなく聞き取れるんだよ。だから大福くんと会えれば何で物を隠したりするのか直接話が聞けると思うんだ!」


「そうなの!? 二郎くんすごい!!」


 私がびっくりして目を丸くすると、二郎くんは少し頬を赤くする。


「へへっ! なんだか手放しで褒められるとくすぐったいな」


「よかったな〜褒められること滅多にないもんな」


 鞍馬さんの揶揄(からか)う言葉にぷくっと頬を膨らますと、二郎くんは鞍馬さんの隣に立つと、小さくポカポカと鞍馬さん叩く。

 そんな二人に真人さんはため息をつく。


「まったく智風くんも大人気ないですよ。二郎くんも今は話しの途中でしょう?」


「ごめんなさい」


 二郎くんは反省したように俯き、鞍馬さんはバツが悪いというようにそっぽを向く。

 私は苦笑を浮かべると、話を戻す。



「それじゃあ今度先輩に会うときに二郎くんも一緒に会ってくれる? 実は来週水曜日の夜に先輩とご飯行く予定なんだけど、二郎くんその日は予定どうかな?」


「バイト終わりだよね? それなら大丈夫だよ!」


「私も気になるので、一緒に行っても構いませんか? もちろん少し話をしたら二郎くんと帰りますので」


「それは全然大丈夫ですよ! でも完全に巻き込んでしまってすみません……先輩にも話しておきますね」


 やっぱり自分の感覚だけでは頼りないが、二郎くんの力があれば解決出来るかもしれない。迷惑をかけて申し訳なく思う気持ちもあるが、なんとか解決できそうなことに安堵の息をついた。





「そういえば話は変わりますが、今日の午後買い出しに行こうと思うのですが、何か必要な物ありますか?」


「僕は特にないけど、真人さん何を買いに行くんですか?」


 そういえばつい先日真人さんは食材を買いに行ったばかりだ。


「消耗品が少なくなっていたので……あとコースターで汚れが落ちない物があるので、新しいものを買おうかと思って」


「そ、そうなんですね! それじゃ優希さんと一緒に行ってきてください! 僕それくらいの時間なら一人で大丈夫なので!」


 二郎くんははっとして焦ったように二人で行くように勧めてくる。


「え? 私も? 二人で行くような量じゃないんじゃない?」


 それにもし二人で行く量であっても真人さんは気を使ってあまり私に物を持たせないので、二郎くんと行ったほうが良い気がする。



「でもコースターとか買うなら女性の優希さんが一緒に行った方がいいと思うんだ!」


 真人さんはそれならばと納得していたが、私は何故かやたらと二人で行かせたがる二郎くんを疑問に思っていると、二郎くんが小さく手招きする。不思議に思いながら近づくと私の耳元で真人さんに聞こえないよう小さな声で話し出す。



「実は真人さん偶にすごい奇抜な物買ってくる時があって……ほら優希さんも戸棚の奥に眠ってる食器見たことあるでしょう?」


「え!? あれって真人さんが買ってきたの?」


 確かに戸棚の奥になんともシュールな感じの柄が入った食器を見たことがる。全く使われずずっと奥に眠っているのだ。まずこのカフェに全くもって似合わない。

 カフェの食器はこの店の昭和レトロ感にあったシンプルであり上品な食器で揃えられている。だから誰かからの貰い物で仕方なく置いているのかと思っていた。

 それがまさか真人さん自身が買ってきた物だったとは……



「いつもは店に合ったいい感じの物を買ってきてくれるんだけどね、偶にそういうことがあって……流石にお客さんには出せないから何度かちーくん用で使ってたんだけど、今はずっと奥にしまってるんだよね……それにきっと優希さんがこれがいいって言ったら真人さんなら絶対優希さんがいいと言ったもののほうを買うと思うんだ!」


「そ、そうかな……でもとりあえず奇抜な物は避けてもらうよう注意するね……」


 私は苦笑いを浮かべて、二郎くんの期待に応えられるよう頷いた。

 気のせいかもしれないが話の行方を見守っていた鞍馬さんもふっと安心したように息を吐いた気がした。実は鞍馬さんもそういった食器で出されるのは嫌だったのかもしれない……





「それでは先に消耗品から買いに行きましょうか?」


「はい」


 私たちは午後になり早速買い出しに出ていた。

 私は引き攣った笑顔で返事をしつつそっと息を吐いた。


(そっか……すっかり忘れてたよ……これは結構しんどいかも……)



 何がそれほど疲れるかというと、真人さんの隣を歩くと気になる熱い視線……

 店にいる時は常連のお客さんが多いことと、すぐにバイトと雇い主というのがわかるため、ここまで女性達の熱い視線と嫉妬の混じった厳しい目を向けられることがない。

 最近だいぶ慣れてきて忘れていたが、真人さんはその辺で滅多に見られない色気の溢れるイケメンである。人の多い道を二人で一緒に出歩くことがほとんどないので忘れていた。

 たまにバイトが遅くなった時自宅近くまで送ってもらうことはあったが、人通りがあまりないのでこれほど熱視線を向けられることもない。


(う……仕方ない。とりあえずぱっぱと買い物を終わらせて帰ろう)



 私がそんなことを考えていると、そっと真人さんが肩に柔らかく触れると自分のほうに私を引き寄せる。

 私がびっくりして真人さんを見上げると、真人さんは困ったように微笑んだ。


「いきなり触れてしまってすみません。もう少しでぶつかりそうだったので……」


 真人さんがそう言うと、ちょうど私の横をぎりぎりで男性が通り過ぎて行った。


「す、すみません! 考え事をしてました。ありがとうございます!」


 私は赤くなっているであろう頬を隠すよう俯くと、真人さんが私の頭の上でふっと笑う気配がした。


「気をつけてくださいね」


 私はそろりと視線をあげ、失敗したと後悔した。

 いつも店で見ている笑顔ではあるが、外でいつもとは違う状況で、引き寄せられた近い位置からの微笑は破壊力抜群だった。

 私は一瞬色気にあてられ、ふらっとなりそうなのを足を踏ん張ってなんとか耐える。

 そしてさらに厳しくなった刺さるような視線で我に返る。

 チラッと周りを見ると、周囲の女性たちが顔を真っ赤にしつつも羨ましそうな視線をこちらに向けていた。私はしっかりせねばと心の中で自分に喝を入れた。

 深呼吸をして心を落ち着かせる。もう一度視線を上げた時、見知った声が聞こえた。


「あれ? 優希ちゃん?」


 そちらに目を向けると香先輩が笑顔でこちらに手を振っていた。


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