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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
最終部 第六章
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決戦[crescendo] 14 —知的進化—






 叫びを上げながら、逃げるように砂へと潜る天使像。


 その砂地を冷ややかな視線で見ながら、マルテディは声を掛ける。


「……提案があるんだ。私と一対一で戦わない? みんなの足場を作っている私を倒すことができれば、あなたの勝ち。あとはみんなを流砂に飲み込むだけで、全部終わるよ」


 マルテディの、賭け。この天使像は、知性を持っている。少なくとも、模倣し、欺き、感情を露わにする程度には。


 そして——その提案に応じたかのように、天使像は微笑みを浮かべながら砂から浮上してきた。







 その様子を離れた場所から見るリナは、太刀を握りしめる。マルテディの気持ちは分かる。彼女はもう、これ以上の犠牲者を出したくないのだろう。だから彼女は、自身が矢面に立った。


 だが、それはリナとて同じだ。傍観者には、もうならない。マルテディには悪いが、介入も——


 しかしグリムは、手を横に広げてリナを制した。そして小声でつぶやく。


「……莉奈、ここは傍観しよう。私には見えるよ、この戦いの結末が」


 ゴーグル越しのグリムの瞳は、天使像とマルテディを真っ直ぐに見据えていた。







 マルテディは、走り始めた。彼女の駆ける足元に、次々と石英の足場が出来上がっていく。


 天使像は彼女に掌を向けてサンドブラストを放つ。石英の壁を作り防ぐマルテディ。その壁に向かってくる天使像、だったが——



 ——マルテディは砂嵐に乗って浮上し、石英の壁の上からサンドブラストを解き放った。


 天使像は砂に潜ってかわす。次の瞬間、砂の地面からマルテディの位置を越える高さの柱を突き出し——その上に乗る天使像は、両手を向けてマルテディへと飛び降りた。


「………………」


 マルテディはサンドブラストを放つ。天使像は砂の障壁を展開しそれを防ぐ。マルテディは飛び降り、地面に手をつけた。


 瞬時にして、地面から数多の石英の柱——先の尖った、クリスタル状の柱が生えてきた。


 天使像は攻撃を止め、その先端を掴み砂に還していく。天使像は『微笑み』を浮かべて、石の混じった強力な砂嵐を巻き起こし始めた。


 砂の障壁で防ぎながら、マルテディは観察する。


 そして——



 ——マルテディも自身を中心に、強力な砂嵐を起こし始めた。


 砂嵐がぶつかり合う中、マルテディは一歩ずつ前に出た。


「……言ったでしょ? あなたのやることは、私にも出来るって」


 砂の中に浮かび上がる赤い光が、天使像を睨む。忌々しげな表情を浮かべる天使像——。




 マルテディは互角に天使像と渡り合っていた。



 ——そう、互角に。



 天使像のやることは、マルテディも模倣できる。


 だが、逆も然りだろう。


 今は、『石英』を自在に扱える分だけ、マルテディが押しているが——。





 エリスとセレスは見守る。マルテディの戦いを。


 彼女たちの前面にはグリムの指示で、エリスたちを守るようにマッケマッケが立っている。


 魔素の復活はもうすぐだろう。天使像のとどめには、彼女たち『魔女』の魔法の力が必要だ。


 彼女たちが失われない限り、この戦いの勝利への道は続いている。



 それを、理解しているのだろう。




 狡猾な天使像は——



 欺きさえも行う、天使像『本体』は——




 ——彼女たちの背後に音もなく忍び寄り、この戦いにおける切り札を『風化』させるために——



 ——満面の『微笑み』を浮かべながら、二人を抱擁するために腕を伸ばした。







 マルテディの戦いを見つめるグリムは、一人、つぶやく。



「……さすがにね。行動パターン、動きの仕草……これだけ『観察』させてもらえば、視覚情報だけでも、どれが本体でどれが分身体か、私には丸わかりだ」







『…………ァァァアアアァァァッッ…………!』


 風化させようと伸ばした天使像の手は、二人の魔女には届かなかった。


 天使像の更に背後から振り下ろされた、一閃の太刀。


 そこには『空間跳躍』で瞬時に現れた、リナの姿があった。







「最初から気づいていたよ。マルテディと戦っているお前は、『分身体』だって。だから私は、お願いした。声を飛ばせる莉奈を経由して、この戦場にいる皆に、お前の狙いと対策を伝えてくれ、と。お前に気づかれないよう、無言でね」







 天使像の叫びに、エリスとセレスが振り向いた。


 リナは瞬時に退避した。



 ——そう、二人の言の葉は、既に紡ぎ終わっているのだから。







「何が怖いって、『理解』できない者の行動だ。全く予測がつかないからね。だが、お前は私たちを欺こうとし、私の土俵に上がった。残念だったな。お前を消すくらいの魔素は、もう、充分に満ちているだろうよ」








 二人の魔女の手が、両断された天使像に向く。


 二人は少しだけ目配せをし——



 最強の魔法の言の葉を、解き放った。



「——『渦巻く颶風ぐふうの魔法』!!」



「——『空間を削る魔法』!!」



 歪な空間が、天使像を包み込む。削れ、渦巻き、逃れられず、分子崩壊を起こす天使像の身体。



『…………ィィァァァアアアァァァ……ッッ…………………』



 天使像の断末魔が、徐々に薄れ掻き消えていく。



 やがて一片の欠片さえもが消え去った瞬間——




 ——この地を覆っていた砂は、綺麗に消え去った。







「……私のいる場で、知恵比べを挑んできたのがお前の敗因だ、天使像。知性的な進化を遂げたのは、失敗だったな」




 ——『砂の天使像』、完全に消滅。




 初期にいた六体の天使像は、数々の犠牲の果てに——ようやく、全て撃破となった。




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― 新着の感想 ―
多大な犠牲を払ってようやく6体終わった…… こんなん赤い世界じゃどうにもならんわけだ あとは火か〜 メタ的な読みで申し訳ないけど 年内完結ならあと9話くらいしかないわけで… 火にはそんなに時間かけて…
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