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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
最終部 第六章
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決戦[crescendo] 13 —『厄災』—






 戦場へと駆けるメルコレディ。『砂の天使像』戦で失った左足を庇いながら、それでも彼女は駆けていく。


「……はぁ……はぁ……」


 戦場は目の前。天使像の視線がメルコレディを捉える。即席で作り上げた氷の左足を踏み締め、彼女は氷を放つ。


 ——早く、みんなと合流しなきゃ。


 額に汗を浮かべながら、メルコレディが更なる道を作ろうとした、その時。


 彼女の身体は、一瞬にしてそこから消え去った。





「はい。メル連れてきたよ」


「……え、えっ……あ、リナちゃん……?」


 地上に降り立ったファウスティの結界内に、リナは『空間跳躍』で彼女を運び込んだ。


 メルコレディの氷の足を見て、ジョヴェディは眉をあげた。


「……なるほどのう」


 ジョヴェディは失われた左の足先に土をまとわせ、立ち上がった。右足の感覚はないが、それも土で包み込み、支える補助にする。


 ルーは牽制の氷のブレスを吐き続けている。ファウスティはメルコレディの前に歩み、腰を屈めた。


「君が『水曜の子(メルコレディ)』だな。俺はファウスティだ。話は聞いているかな?」


「……あなたが……うん、ファウスちゃんだね、聞いてるよ」


「……はは。よろしくな」


 呼ばれ方に困惑しながらも、ファウスティはメルコレディと握手を交わす。それを見たリナはうなずいて、二人に声を掛けた。


「じゃあ私、いったん『砂』の戦場に戻るよ。ファウスさん、もう少しの間だけ頑張ってね!」


「ああ、問題ない。この場は任せてくれ」


「……メルも……無茶しちゃダメだよ?」


「……大丈夫。ねえ、リナちゃん、一つだけ訊いていい?」


「……なにかな?」


 真剣な眼差しでメルコレディはリナを見つめる。リナはその視線を、真っ直ぐに受け止めた。


「——ルネディは、無事なの?」


 少しだけの、沈黙。しかしリナは、見た景色を正直に彼女に伝えた。


「ルネディはね、みんなを立派に守り切ったよ。最後の、最後まで」


「……そっか」


 メルコレディは目を伏せる。だが次には顔を上げ、天使像を見据えた。


「わかった、リナちゃん。行って。ここはわたしが、抑えるから」


「……よろしくね、メル」



 リナはそう言い残し、『砂』の戦場へと跳躍した——。



 彼女を見送ったファウスティは、メルコレディの肩に手を置いた。


「では、『水曜の子(メルコレディ)』。君の力で戦場を凍らせてもらえるか」


「……うん、わかった」


 メルコレディは一歩、前に出た。そして右手を広げ、ゆっくりと上げる。



 ——姉のように慕っていたルネディは、もう、いない。



 とても優しくて、少し意地悪で、いつもみんなの心配をしていて——



(……ねえ、ルネディ。見ててね、わたし、頑張るから)



 ——メルコレディの双眸が、赤く、染まった。



「……な、なんじゃ……」


 ジョヴェディは、呻き声を上げる。ファウスティもルーも、その光景が信じられずに目を見開く。



 守りの結界の外、この戦場は、瞬時にして猛吹雪に覆われた。


 地面は凍りつき、雪や氷が吹き荒び、視界を白が覆い尽くす。


 天使像は炎を広げようとする。しかし、その炎はだんだんと威力が弱くなってゆき——



「……何をしたんじゃ、メルコレディ……」



 ——天使像の動きは、まるで時間の流れを支配されたかのように、格段に遅くなっていた。







 ——『砂』の戦場。



 そこには再び、十体以上もの天使像の姿が現れていた。


「……くっ!」


 盾となるのはグリム。背後にいる魔法使い、エリス、セレス、マッケマッケは何としてでも守り切らねばなるまい。


 そう。『魔素復活』の兆候が見え始めた今は、絶対に。



 ——パン



 天使像の放つサンドブラストによって、次々とグリムの端末たちは失われていく。


 それでもマルテディは砂嵐を払い、天使像の接近を許さない。


 だが、先ほどよりも格段に素早くなっている天使像たちを前に、あっという間に戦況は劣勢へと追いやられていた。



 —— 閃



 光が瞬き、一体の天使像が掻き消える。到着したリナはグリムの横に降り立ち、眉をしかめた。


「……これは……マズいね」


「……莉奈……そうだね、魔素の完全復活までは、もう少し時間が掛かりそうだ。その間、何としてでも凌がなくてはな」


 その間にも、グリムの端末は天使像に触れられ『風化』していく。


 マルテディによって巨像を崩された天使像は——復活し始めた魔素を利用して、速攻を仕掛けてきたのだ。


「——『旋風の刃の魔法』!」


 風が吹き抜け、何体かの天使像を吹き飛ばす。リナたちの元へと駆けつけたマッケマッケは、杖を真っ直ぐに構えた。


「あーし一人くらいが魔法を使っても、供給の方が速いですよね。まだまだ威力は出ないみたいですが……」


「……助かる、マッケマッケ。だが君は『祝福』を受けていない。ここは無理しないで——」


「——そうです、下がっていてください」


 何者かが、前に出た。束ねた黒髪をたなびかせた、アラビア風の衣装をまとった女性、マルテディだ。


「ありがと、マルティ。一緒に——」


「ううん。リナさんも、下がっていて」


 そう言ってマルテディは、前へと歩み出す。向かってくる天使像たち。止めようとするグリムだったが——



 ——パン



 ——マルテディが腕を向けると、天使像が弾け飛んだ。それでも複数体の天使像がマルテディに向かって手を向ける。


 だが。



 ——パン、パン、パン……



 マルテディは次から次へと、天使像たちを消していった。


 彼女は歩きながら、つぶやく。



「——ずっとね、考えていたんだ。私が目覚めた『石英』の力。あなた、部分的とはいえ真似したよね」



 マルテディは広げた手を向け、新たに現れた天使像を『サンドブラスト』で消す。



「巨像だって、そう。どういうことか分からないけど、火竜の時に作ったやつや、『赤い世界』で私が見せたらしい『砂の巨像』、それも真似したのかな?」



 横から現れた天使像が、マルテディの腕を掴み取る。グリムはたまらずに叫んだ。



「マルテディ、『風化』だ!」


 その顔に微笑みを浮かべる天使像『本体』。そのままマルテディに抱きつこうとしたが——マルテディは天使像を振り払い突き飛ばした。


 掴まれたマルテディの腕には——分厚い砂がまとわりついており、天使像の『風化』を防いでいた。


「だからね、私、考えたんだ」


 微笑みを消し、真顔になる天使像。


 その腕を——マルテディは掴んだ。


『…………ィィアアアァァァッッ…………!』


 天使像の腕が、『風化』していく。腕を捨て、恐怖の表情を浮かべる天使像にマルテディは言い放った。



「——あなたに出来ることは、私にも出来るんじゃないか、って」



 ——奇跡の7号、『厄災』の力を与えられたマルテディ。



 天使像を見据える彼女の双眸は——赤く染まっていた。




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― 新着の感想 ―
前にも感想でちょろっと書いたけど 厄災と天使像は起源が同一だからやっぱそうだよね 勝ったなガハハ
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