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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第四部 第三章
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何も出来ない王 07 —国家転覆の一大事—





 私は言葉を失う。いや、だからって——。


「……あの、覚えてるって、国民全員を……?」


 待て待て。この国には何万人もいるんだぞ。さすがに不可能では? その私の言葉に、サラは少し寂しそうな微笑を浮かべた。


「……ううん。国民のことも本当は覚えたいんだけど、私が覚えられたのは家長の名前とどこに住んでいるのかくらい。しかも城からあまり出してもらえないから、顔と名前が一致するのは会った人だけ。ほとんどの人は名前を言ってもらわないと、誰だかわからないんだー」


「うぉい!」


 ハッ。思わずツッコんでしまった。はい、私、不敬。キョトンとしてしまったサラに、私は咳払いをして続ける。


「……あのね、サラ。普通、そんなこと出来ないから。何も出来ないどころじゃないと思うよ?」


「そう? でも話だと、そこのグリムはそのぐらいお茶の子さいさいって聞いたけど」


 ——しまったあ。そういやグリムならそのくらいは出来るかあ。って、元AIと比較してどうする。


 私が眉間に人差し指を当ててどう返そうか悩んでいると、さっきから興味深そうにやり取りを眺めていたグリムが、やっとこさ口を開いてくれた。


「ふむ。確かに私なら可能ではあるな」


「でしょ?」


「ただし、だ——」


 グリムはサラのことを、目を細めて見つめる。


「——それはあくまで『覚えよう』とした時の話だ。覚えようとしていない私とは比較にならないよ。キミは覚えようとして、更にはある程度覚えたのだろう? キミは何も出来ない王なんかじゃない。民に向き合う、立派な王だ」


 その言葉を聞いたサラは、真顔でノクスさんの方を向いた。


「ねえ、ノクス」


「おう、どうした」


「どうしよう。めちゃくちゃ気分いいんだけど」


「……良かったじゃねえか」


 ため息をつくノクスさん。サラはサラで、澄まし顔をつくろっているが、その口元は緩んでいる。


 癖の強そうな人だけど——民に向き合う王か。なんだか私は、この人を好きになってきた。




「じゃあ話を進めるね。ノクス、まずは色紙を」


「後にしろ」


「ぶー。約束だよ?……で、燕さん。この城に潜り込んだジョヴェディを倒してくれたんでしょ? 王としてお礼を言うね、ありがと!」


「……ううん、私の力だけじゃなかったし……」


 ようやく本題に入れそうだ。『厄災』ジョヴェディの、恐らく分身体。


 今回はグリムの機転で何とかなったが、この警備をすり抜けて城の中に現れるなんて——


「いやー。それにしても、びっくりしちゃったよ。私の部屋にまで現れるんだもん」



 …………沈黙。後。



「「はあっ!?」」


 サラのあっけらかんとした調子で告げられた衝撃の事実に、思わず大声を上げてしまう私とノクスさん。グリムやサイモンさん、エンダーさんまで目を丸くしている。


「……な、なに、急に大声出して。びっくりさせないでよ」


「サラ、聞いてねえぞ!」


 ノクスさんが怒鳴る。そりゃそうか。私に用があるなら、外でいくらでも機会はあったはずだ。



 ——ジョヴェディは、王に用があった。



「で、で、で、大丈夫だったの、サラ!?」


 私も声を上擦らせてしまう。これって、国家転覆の一大事ってやつじゃない!?


「あー、うん。ちょうどリョウカが遊びにきてたから。全然大丈夫ー」


「「はあっ!?」」


 サラのあっけらかんとした調子で告げられた衝撃の事実に、思わず大声を上げてしまう私とノクスさん。二回目。というか、どういうこと!?


「聞いてねえぞ!」


「言ってないもん。まあ、しょうがないから、今から説明するね——」


 サラは悪びれる様子もなく、ノクスさんに向けてため息をつく。こりゃノクスさんも手を焼く訳だ。


「——リョウカはね、たまに私の部屋に来て話し相手になってくれるの。あ、私が許可してるから別に不敬じゃないよ? それで、今日も遊びに来てて、燕さんの話で盛り上がってたんだー」


 ガクン。あの人、何やってんのよ。


「そしたら急にジョヴェディが現れてね、こう言ってた——」



 ——フン。王の命をとって焚きつけてやろうとやってきてみれば、随分と面白い話が聞けた。どれ、貴様らの始末が済んだら、ワシが一つ、その燕とやらの実力を見に行ってやろう——。



 絶句。『厄災』ジョヴェディ。彼は危険だ。ルネディ達とは根本的に違う。私は声を絞り出す。


「……そ、それで……」


「うん。そしたらリョウカが『ちょうどいい。白い燕は今、この城に来ている。行って、やられてくるがいい』って言って、シャキンとジョヴェディを一刀両断したの! カッコよかったなあ……」


「うぉい! じゃあ、ジョヴェディが私の前に現れたのって、リョウカさんのせい!?」


 うっとりとするサラに向かって声を荒げる私、不敬。


 にしても『やられてくるがいい』じゃないよ『やられてくるがいい』じゃ。危うくやられる所だったぞ! 責任とれんのか!?


「うーん。二体もいるなんてね。でも、リョウカの作戦勝ちってところかな。燕さんのところにまんまとおびき出されたみたいだし……って、燕さん?」


 もう、不敬なのを承知で私はテーブルに突っ伏す。サラにしろリョウカさんにしろ、私をどんな存在だと思っているのよ。


 振り回されている私を気の毒に思ったのか、落ち着きを取り戻したノクスさんが口を開く。


「……ったく。サラ、とりあえずしばらくは騎士団の連中に二十四時間体制で警護させてもらうからな」


「えー! 平等な自由の権利はー!?」


「んなこと言ってる場合か。ジョヴェディ倒すまで待ってろ」


 膨れっ面のサラさんに、頭をかくノクスさん。ん?『倒すまで待ってろ』?


 私はノクスさんの言葉に引っかかりを覚え、首を傾げる。ノクスさんは頭をかきながら私達を見渡した。


「——つー訳でだ。先ほど正式に決まった。ジョヴェディ討伐には俺が出る。よければお前さんたち、知恵を貸してくれねえか」





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