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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第四部 第三章
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何も出来ない王 05 —その謁見は突然に—






「いいのかい、サイモンさん。ギルドは中立の立場なんだろ?」


 サイモンさんの宣言を聞いたノクスさんは、腕を組みサイモンさんに問う。だがそのノクスさんの顔は、ニヤついていた。


「政治利用の可能性が出れば、さすがに手を引くがね。まあ体裁上はともかく、私だって人類の脅威は放っておきたくはない。せっかく相手がくれたチャンスだ。せいぜい利用させてもらうさ」


 フフフ……と笑い合う二人。楽しそうだな。


 と、そこでノクスさんは私に向き直る。その表情はさっきとは打って変わって、いたって真面目だ。


「なあ、リナちゃん。リナちゃんが動く、つーことは、セイジは動く気になったのか?」


 うっ、マズい。ついに聞かれてしまったか。なんかサイモンさんも期待を込めた眼差しで私を見る。やめて。


 私はグリムに目配せする。頼む、上手いこと丸め込んでくれ——。


 グリムは私に頷いて、返答をする。


「なに、考えるまでもないさ、ノクス。私も話には聞いたが、先の人身売買事件の時、キミはどう動いた?」


 そのグリムの問いに、ノクスさんは少し考え込む。


 そして——。


「……ああ、まあな。そりゃそうか」


「そういうことだ」


 どういうことだよ。あの時は確か、ノクスさんと誠司さんが館に乗り込んで——いや、さっぱりわからん。


 頑張って眉をしかめる私に向かって、ノクスさんは頭を下げた。


「すまねえな、リナちゃん。ただ、リナちゃんは危ねえことはしないでくれ」


「え? あ、うん。大丈夫だよ?」


 話が全く見えてこないが、とりあえず合わせておこう。なんかグリムも「うんうん」って頷いてるし。





 ということで閑話休題、話はジョヴェディ襲撃の件へと戻る。


「で、だ。今、グリーシアと魔法兵団がジョヴェディの探知をやっている。んで、その後は『姿を溶け込ませる魔法』を対象にした簡易的な結界を、城、そして街に張るって話だ」


 ノクスさんの言葉に、グリムは「ふむ」と頷いた。


「その探知とは、いったいどの程度のものなんだい?」


「ああ。なんでも聞いた話じゃ、『探知魔法』を使えば『姿を溶け込ませる魔法』を使って隠れていても、いる、いないぐらいは判別出来るそうだ。今、念入りにやってるが、とりあえずは大丈夫そうだとよ」


「そうか、それは何よりだ。しかし、時間がかかりそうだな。私達はこのままグリーシア嬢を待っていても大丈夫だろうか?」


「ああ。そのことなんだがな——」


 そう言ってノクスさんは立ち上がる。まあ、城内であんな事があったんだ。今日はきっと、お開きになってしまうのだろう。グリーシアさんにもっと話は聞きたかったけど、仕方ないか。


 しかし、そんな私の考えとは裏腹に、ノクスさんは親指で扉の方を示した。


「——サイモンさん、グリム、エンダー。すまねえが同席してくれ」


 ん? 待って。私、置いてきぼり? 泣くよ?


 と思ったのだったが——置いてきぼりになった方がマシだったんじゃないかと思わせる事を、このオヤジは言ってのけるのだった。それは——


 ノクスさんは私の顔を見て、申し訳なさそうに告げた。


「さて、リナちゃん。申し訳ねえがついてきてくれ。王がお待ちだ」


「……は?」









「じゃあ、すまねえがちょっと待っててくれ。王さん呼んでくるわ」


「は? え?」


 ノクスさんに連れられて、今、私がいるのは、迎賓室? 貴賓室? VIPルーム? とにかくそんな感じの部屋だ。


 さっきの応接間もキチンとした所だったが——なんだコレ、なんだコレ。高級感、半端ないぞ。


 私は侍女さんらしき人に促されるまま、椅子に腰掛ける。あ、椅子なのにフカフカだ。


 サイモンさんは流石に堂々としているが——エンダーさんやグリムは……いや、堂々としているな。落ち着かないの、私だけかよ。


 私はグリムに小声で話しかける。


「……ねえ、グリム。王って王様だよね」


「まあ、王様だろうね。それ以外だったら、私は驚くぞ」


「……なんでこんな事になっちゃってんのよ……」


「さあ? 先ほどグリーシア嬢は『キミの助けになることは王の願い』と言っていたからな。そのことじゃないか?」


「……なんなのよ、もう……」


 当たり前だが、私はこの国の王様とは面識がない。けど、私達が住んでいる国の王様だ。普段ノクスさんからも話は聞いているし、ある程度の知識はある。


 今の王様が即位したのは、かれこれ十年ほど前。十六歳になるのと同時に即位したらしい。


 なんかそれまでは王様不在——いわゆる空位だったみたいで、満を持しての戴冠だったとか。


 そして何があったかは知らないが、ノクスさんとの会話を聞く限りだと、どうやら誠司さんは幼少期の王様と面識のある口ぶりだった。まあ、若い時は色々あったみたいだしね、あの人。


 でも、偉い人なのは間違いない。若いとは言っても、一国の王様だ。失礼のないようにしなきゃ。



 確か、()()の名は——



 その時、部屋の扉が勢いよく開く。


 そして、白いドレススーツにアッシュグレーのミディアムボブが良く似合う、美しい女性が可憐に名乗りをを上げながら入って来た。


「やっほー! ありがとね、『白い燕』さん! 初めまして、私がこの国の王やってる、サランディア7世だよー。どうか親しみを込めて、『サラ』って呼んでね。さあ、まずはサインをちょうだい!」


 ——うおい! どんだけみんな欲しがるんだよ、私のサイン!


 私はテーブルに突っ伏したい気持ちをなんとか抑えて——


 そう、彼女が現サランディア国王、サランディア7世。ノクスさんも手を焼いているという人物、サラさん、その人だ。




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