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ライラと『私』の物語【完結】  作者: GiGi
第四部 第二章
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『白い燕』待望論 07 —軽食—







 ——翌朝。



「ようこそ、『白い燕』さん! サランディアはあなた達を歓迎します!」


「あはは……朝早くから、ありがとうございます……」



 森の中で仮眠をとりながらも急いだ私達は、無事、早朝にサランディアに着いた。


 見たことある衛兵さんに挨拶をした私達は、クロカゲを馬宿に預けて街の中へと入っていった。


「うーん。あまり長居は出来ないけど、眠いしね。一泊宿、とっちゃおうか」 


「賛成だ。人間の身体は不便なものだな。眠らないとすぐ、処理能力が落ちてしまう」


 隣でぶつくさ言いながら歩くグリムを引き連れて、私達は顔馴染みの宿、『妖精の宿木』へと向かう。


 万が一……本当に万が一、誠司さんが気づいて追っかけてきた時のことを考えると、あまりこの街に長居はしたくない。誠司さんは五百メートル圏内なら、私達を見つけ出してしまうだろうから。


 まあ、でも、何日かは大丈夫でしょ。私は一人頷いて、『妖精の宿木』の扉を開けた。



「……おはようございまーす」


「いらっしゃ……『白い燕』さん!」


 受け付けで眠そうにしていた男性は私の姿を見るやいなや、目を大きく開け声を上げる。


 私はツカツカと早足で歩み寄り、受け付けの男性——ヤントさんに声を抑えるよう促した。


「シーッ!……あの、二人一部屋、ベッドが二つの部屋をお願いしたいんですけど……あと、二人分の軽食も」


 声を潜め注文する私。ヤントさんはコクコクと頷いて、席を立つ。部屋を用意するために二階へと上がっていくヤントさんを見送った私は、ようやく息をついた。


「ふう……じゃあグリム。お昼ぐらいまで寝て、それから動こっか」


「そうだな。この街は初めてだ。楽しみだよ」


「うん。まあ、ゆっくりは出来ないけど……全部終わったら観光しようね」


「……ああ、そうだね。無事、終わらせよう」



 ——話を聞く限り、ジョヴェディは強敵だ。仮にアルフさんの言う通りだったとしても……タネがわかったところで、現状、手の打ちようがない。


 私達は考え過ぎた頭を休めるために、眠い目を擦りながら用意された部屋へと向かうのだった。





「さ、グリム。ここのカツサンド美味しいんだよ。食べてみー」


 今日用意された軽食は、初めて来た日と同じカツサンドだった。


 あの日、誠司さんと一緒に食べたカツサンド。グリムは目を輝かせパクついた。私も口に頬張る。


「……莉奈、大変だ。これはとても美味いぞ」


「……うん、美味しいね。でも、こんなしょっぱかったっけかな……」


 駄目だ。なんだか喉がキューってする。困ったなあ、色々と思い出しちゃうなあ。


「莉奈……」


「あ、グリム、ごめん。何でもないよ」


「……そうか。いらないなら、貰おうと思ったのだが」


 そう言って、心配そうに私の皿を覗き込むグリム。そっちかい。私は無理矢理、残ったカツサンドを口に詰め込んだ。


「……ごちそうさまっ!」


 急いでカツサンドを飲み込んだ私を、グリムは優しい目で見つめていた。もしかしたらこの元AIは、私に気を遣ってくれたのかもしれない。


 私はなんだか急に恥ずかしくなり、コップにドボドボと水を注いでグリムに差し出した。


「さて、グリム。今日はどう動こうか」


「そうだね。この街でやっておきたいことは三つ。一つは買い物。一つはジョヴェディと相対した当事者から詳しい話を聞く。そして残る一つは……是非とも協力して貰いたい人物がいるので、その人の行方を探りたい」


「ん? その人って?」


 最初の二つは私も考えていたことだった。しかし、最後の一つは初耳だ。私は尋ねる。この状況下で、グリムが何としても協力を仰ぎたい人物。その人の名は——


「——チートにも近しい力を持つ人物、『歌姫』クラリスだ」









「お邪魔しまーす……」


 昼過ぎまで睡眠をとった私達は、クラリスの行方を探るために冒険者ギルドの扉を開ける。


 確かにグリムの言う通り、クラリスの力を借りることが出来ればかなり戦いやすくなる。というか、彼女の力を借りてようやくスタートラインに立てるといったところか。


 私が恐る恐る中を覗くと、ギルドの中の皆さんの視線が一気に私に向く。やめて。


 ——そして案の定、皆さんはざわつき始めるのだった。


「——『白い燕』だ……」


「——あの噂は本当だったのか……」


 いや、あの噂ってなんなのよ。私はグリムの方に振り返った。


「よし。いないみたいだし帰ろっか」


「莉奈。ふざけるのも大概にしたまえ」


 そう言ってグリムは私の襟首を引っ張ってギルドの中へと入っていく。うー、ふざけてないもん。


 周囲の皆さんの目線を惹きつけながら、グリムは奥へと進んでいく。恥ずかしい。そして彼女は、あるテーブルの前で立ち止まり、私を前に押し出した。


 ちょっと待て。この人って——。グリムはその人に声をかける。


「やあ、久しぶり、と言っておこうか。こっちに帰って来ていたんだな」


「ヒュー、これは嬉しいね。グリムに『白い燕』。僕と食事でもしてくれるのかな?」


 その人は微笑みながら、キザったらしく指を振った。


 ——私の苦手とする人物、新しく三つ星冒険者になったエンダーさんだ。





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