15話 お嬢様とハムステーキ
「お嬢様、本日のお夜食をお持ちしました」ジュゥゥゥゥゥ
「う、うん」
ジュゥゥゥという音に遮られた私の声にお嬢様はかすかな反応を示された。おでんの時は蓋をしていましたが、今回は鉄板の上で焼けているのでもう何かはわかってしまいますよね。
「それは……何?」
「ええっ!? 見て分かりませんか!?」
「うん。初めて見る」
鉄板の音で焼かれているのは少し分厚くて丸い赤い肉。そう、ハムステーキですよ! 朝食に出てくるとテンションが上がるあれです!
「お嬢様は希少部位のお肉でしかステーキを食べられませんものね。こちらはハムステーキです」
「ハムステーキ……えっ、ハムスターをステーキに?」
お嬢様は泣きそうな顔で私に尋ねてきた。
「ちちち、違いますっ! ハムという豚肉を使った加工食品です!」
危ない危ない……このままでは私にお嬢様にハムスターの肉を提出した鬼畜メイドという肩書きがつくところでした……。
「よ、よかった……」
安心された様子のお嬢様。おっと、あまりお話ししているとせっかく鉄板に乗せたハムステーキが冷めてしまいますね。
「それではお嬢様、いただきましょう」
「ん。いただきます」
さすがお嬢様というべきか、ナイフとフォークを小学生ながらに見事に使いこなされており、迷うことなくハムステーキを一口大に切ってお口に運ばれた。
私も同じことをしているのに、どうしてもお嬢様のような綺麗なナイフとフォーク捌きができません。これが庶民の現実……!
くっ……と思いながらもハムステーキはこんがり焼けたいい感じの香ばしさで私を肯定してくれた。カリッとしたスナックに近いステーキはお高い牛肉のステーキでは決して味わうことのできない食感と味を感じさせてくれる。
「……美味しい」
「ですよね! これ小さい頃から好きなんですよ〜♪」
「……しずくの小さい頃、気になるかも」
「ええっ!? そ、それはちょっと……」
「なんで?」
「な、内緒です!」
い、言えない……いろいろ拗らせていて左目に眼帯をしていたとか、その他もろもろ全部言えない!
お嬢様に隠し事をするという心が痛む思いをするのでした。過去の自分を恨みましょう。




