12話 しずくとメロンパン
「お嬢様、本日のお夜食をお持ちしました」
「ん」
しずくは何やらお腹をさすりながら私の部屋に入ってきた。たぶん、昨日の家系ラーメンがまだお腹で暴れているのだと思う。歳をとるって、大変だ。
「お嬢様? 何か失礼なことをお考えですか?」
「そ、そんなことはない」
「そうですか……」
怪しげに顔を伺ってくるしずくから目線を逸らす。
「で、今日のお夜食は?」
「あ、はい。パン屋さんでフェアをやっていたのでつい買ってしまったこちらです!」
しずくが取り出したのは黄色くて丸いもの。でもまん丸じゃなくて、彫刻刀で彫ったような線が格子状に入っている。
ふわっと、不意に甘い匂いが漂ってきた。
「ん……いい匂い」
「そうでしょうとも。う〜ん……子どもの頃は大好きで良く食べていましたね〜」
「それは何ていう食べものなの?」
「こちら……メロンパンです!」
メロン……パン? パンの中にメロンが入っているってこと? それって美味しいのかな。
メロンは食べたことがある。食後のスイーツとして、高級マスクメロンがどうのとシェフが言っていたことが何度もある。でもあれがパンに合うとは思えない。
でもしずくが持ってきてくれるご飯にハズレはない。私はそう信じている。
「いただきます」
「はい♪ 私もいただきます」
メロンパンにかぶりつくと、まずサクッとした食感の上層部が強く主張してきた。続いてふわっとした内部が口の中ですべてを包み込んでくれる。
「美味しい」
美味しい。けどメロン要素はどこなんだろうか。私の舌をもってしてもメロンの味を感じ取ることができなかった。このパン、すごく繊細で緻密な料理なのかもしれない。
「それは良かったです……そんなに見つめて、何か気になることでもありましたか?」
「うん……メロンパンなのにどこにメロンがあるのかなって」
「えっ? メロンパンにメロンなんて入れたら邪道じゃないですか?」
「え?」
「え?」
……しずくの持ってきてくれるご飯は奥深いようだ。




