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11話 お嬢様と家系ラーメン

「お嬢様、本日のお夜食です。食券制です」

「食券?」


 お嬢様は食券というものを知らないようですね。まぁ当然ですか、偉大なる神舌グループのご令嬢たるお嬢様が食券制のお店に入られるところなど想像もつかないですしね。

 麺屋爆味には多くの客が訪れている。ただその大半は男性。その泥(失礼ですが)の中で輝くお嬢様の存在はいつもに増して光り輝いて見えます!

 おっといけない、思考が脱線してしまいましたね。


「食券制のお店ではまずこの機械で券を買ってから注文するんです。お金は私が払いますね」

「ごちそうさまです」

「ふふ、偉いですね、お嬢様は」


 とりあえずオススメというか、王道の醤油を2つ注文。それからライス小を2つですね。

 席に座ると店員さんがやって来た。ここからが家系ラーメンの醍醐味ですよ〜!


「はい脂・麺・味は?」

「多め、普通、濃いめで」

「????」


 お嬢様は大混乱。その混乱顔が見たくてこのシステムをあえて黙っていたんですよねぇ。裏切り体質で申し訳ない!


「はい! そちらのお嬢さんは?」

「え……えと……」

「お嬢様、こちらのお店では脂の多さ、麺の硬さ、味の濃さをそれぞれ3段階で選ぶことができます。お嬢様の好きにカスタマイズできるんですよ」

「そうなんだ……じゃあ、少なめ、普通、濃いめで」

「あいよ!」


 ふむふむ、お嬢様は脂少なめ派ですか。私も初心者の頃はそうでした。しかぁし! 今では指の第一関節くらいにまで浮き出る脂の層がないと満足できない身体になってしまったのです! これが恐るべき家系ラーメンマジック!


「お待たせしましたぁ! 多め普通濃いめの醤油と少なめ普通濃いめの醤油です」

「ありがとうございます」


 さてさて到着しました、家系ラーメンです!

 マストのほうれん草、海苔、チャーシュー。そして大きな味玉。素晴らしく無駄のない料理ですね〜。


「ではお嬢様、いただきましょう!」

「ん……いただきます」


 心なしか、お嬢様の目はいつもより輝いていらっしゃいますね。

 脂のベールに包まれたスープをレンゲですくい、口へ。脂がまろやかにしてくれているとはいえ、やはり濃いめにした豚骨醤油の味は一気に口の中で爆発。強い中毒性を持って私の脳に旨味の電波を送信して来ました。


「……美味しい」

「ありがとよ! お嬢ちゃん」


 お嬢様の呟きに、大将さんも笑顔で応えてくれた。客との距離が近いのも、家系ラーメンの良さですねぇ。


「お客さんの『美味しい』で喜ぶ」

「え?」

「たぶんそれが、料理人にとって1番求められることなんだと、私は思う」

「お嬢様……」


 深い! 深すぎる! 私には到底理解できない! でも数々の食事体験をされたお嬢様だからこそ思うところがあるのでしょうね。

 私はスープに浸った海苔でご飯を包み、食べるという技をお嬢様に伝授。それに対してもお嬢様は「美味しい」と言ってくださった。


 大満足でお店から出て、伸びをするお嬢様。


「美味しかった。……しずく? お腹痛いの?」

「い、いえ……ただ家系ラーメンは重くて、19になったくらいからお腹にくるように……グフ……」


 お嬢様との年齢差を、残虐にもラーメンと胃で味わうことになったのです。

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