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魔王様のご近所征服大作戦  作者: 京 高
第四章 解決!(元)魔王マン!?
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第二十八話 えー、鈴木弥勒でした

 すっかり大人しくなった神田から一通りの情報を聞き出した後、将は気になっていたことを口にした。


「弥勒さん、どうして魔法を教えた者がいると思ったんですか?」

「焦っていたのということを加味しても神田の使おうとしていた魔法は稚拙すぎたからな。わざと魔法の一端だけを教えたのではないかと思ったのだ」

「そしてその悪い予想は見事に当たってしまった、という訳アルな」

「残念なことこの上極まりないが、な。……どうしてこう、次から次へと面倒事が舞い込んでくるのやら」


 心が折れたままの状態で放っておくのは良くないだろうということで、再び気絶させている神田を見やる。


「まあ、愚痴った所で始まらないからな。これからどうするかを考えた方がいいだろう」

「そうだな。……よし、切り替えよう。それでまずは神田をどうするか、だ」


 あっさり切り替えることが出来たのは、実はそれほど思い悩んではいなかったからである。大袈裟に悲嘆することによって、狙われているのが弥勒であると印象付けていた。その思惑は上手く作用しており、他のメンバーたちは自分たちがどこの誰かも分からない連中に狙われているという恐怖感を感じないですんでいたのだった。


「どうするって?」

「背後に怪しげな連中がいることが分かったんだ。放置しておくと殺されるかもしれない。そうでなくてもこいつから俺たちの情報が漏れる可能性があるから、保護とまでは言わないが、確保しておいた方が無難だろう」

「負けた三下が口封じに殺されるのは物語・・の定番アルからな。私も連れて帰った方がいいと思うアル」


 リィは神田を皮肉って物語という部分を強調しながらも、身柄の確保に賛成していた。将や義則も「確かに」とか「それは言えている」と口々に言っているので、同じく賛成のようだ。とりあえず、神田本人と身分証の入った財布に端末、ノートパソコンを持ち帰ることにした。部屋の中の特に壁一面にはられた写真をどうするかで意見が分かれたが、時間がないということで一旦は放置することになった。

 そして約十分後、男女数人が侵入した形跡を一切残さずに弥勒たちは菜豊荘へと帰還し始めるのだった。


 事件が解決した、と喧伝しながらも必要以上に話が大きくなり過ぎないように、特に将との関連性が感じられないように後始末をするのは想像以上に骨の折れる作業だった。折良く隣接する市でも起きていた不審者騒動の犯人が捕まったので、その犯人の仕業だと噂することで、この一件は何とか終息へと向かわせることができたのだった。

 それでも菜豊塾は八月の間は休みとなり、遊び回っていた子どもたちは最終日になって残っていた宿題を見て青くなっていたのだそうだ。


「おっちゃんにとっては笑い話だけど、本気で焦ったんだぜ」


 と言って頬を膨らませているのは、佐原の孫で弥勒の部屋に遊びに来る常連となっていた子どもたちの一人である。

 今日は九月一日。夏休み明けの初日で学校は午前中で終わっていたのだが、早速出された新たな宿題を終わらせているところだった。

 幸いにも今日は宿題がない子は外でジョニーと遊んでいる。時折「え?雀さんが瞬間移動した!?」とか驚きの声が上がっていたのだが、弥勒はそれを全て聞こえなかったことにしていた。


「それで、他の子たちも無事に宿題を完成させることができたのか?」

「うん。夜の十二時までかかって眠そうな子もいたけど、ちゃんと終わらせたって言ってた」


 子どもにとって日付の変わる十二時とはまさに真夜中である。そんな時間まで起きていたとなると、眠くなっても当然だな、と弥勒は思っていた。


「不審者のせいで大変だったよ。捕まって良かった」


 その言葉につい天井の方を見上げてしまう。その先には二〇二号室があり、本当の犯人である神田が匿われていた。

 その神田であるが、大や祥子、イロハ!?のカウンセリングによってすっかり落ち着きを取り戻していた。今では弥勒が目の前でエアコン代わりの氷柱を、魔法を使って作りだしても怯えることはなくなっている。

 将に対しても怪我をさせたことを詫びており、当時は自分でもコントロールの出来ない精神状態であったことを明かしていた。さらに「今から思えばどうしてあんな怪しい指示に従ったのか分からない」とも語っていた。そういった経緯もあり、菜豊荘の面々で彼に対して遺恨を持つ者はいなくなっていた。安全面の確保という意味からも神田が二〇二号室の住人となるのはもうすぐのことだろう。


 一方で彼が使っていた部屋の片付けも進んでいる。壁全面に貼られていた写真は剥がされて、本の類いも必要のない物は処分された。その際、写真の後ろから指示が書かれた紙が一枚だけ発見されていた。

 書かれていた内容自体は大したことはなく、背後に潜んでいた連中を特定できるようなものではなかった。しかし、弥勒が解析を進めた結果、燃やすことにより精神の高揚が現れるような魔法が掛けられていたことが分かった。

 これを繰り返していたことにより、神田は正常な精神を保てなくなっていったのではないか、と考えていた。


 これらのことから菜豊荘メンバーに魔法を教えることは確定となった。イロハや将たちは「自衛の観点からも必須です」と力説していたが、本心はただ魔法を使ってみたいだけだろう。ブレーキ役に回ることが多い四谷夫妻や義則までも乗り気だったこともあって、既に一回目の魔法口座の日取りも決まっている。

 それに先立ってジョニーには本格的な魔法の指導を始めていた。その時に梟のムゲツが窓の外で見学していたのだが、あえて放置している。彼や仲間の子孫たちが将来ニンジャフクロウ集団として各国政府に恐れられる存在になるのかどうかは不明である。


 とにもかくにも、謎の魔法使いと言う厄介な敵を残しながらも、弥勒たちはまったりしつつも騒がしい日常へと戻っていく。季節はゆっくりと、しかし着実に秋へと向かっていた。


色々書きましたが、黒幕が出てくる予定は当分ないです。

謎の魔法使い「え?まぢで!?」

勇者たち「ナカーマww」



それと、四章各話タイトルの元ネタを一部伏字であげておきます。


ヒントは○つ、答えは一つ

マ○ニ○におまかせを

じ○ちゃんの名にかけて

うちのカ○さんがね

な○じゃこりゃあ

真○はいつも一つ

えー、○畑○三郎でした

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