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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・三章 幻獣保護区でのひと騒動

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出発地点まで戻るためには

 ここから先は慎重に進まないといけない。


「ナイフを所持した男と遭遇しないことが第一だろう」


 ならばどうすればいいのか。

 アリーセが控えめな様子で挙手する。


「わたくしの使い魔、キティでしたら、耳と鼻がよいので、警戒しながら進むことができると思います」

「アリーセの使い魔を危険に晒すことになるが、いいのか?」


 レナ殿下はアリーセがキティのことを溺愛し、自分の命よりも大切に想っていることを知っているのだろう。


「キティは頑張れるはずです。勇敢な子ですので……!」

「わかった。もしも何かあったときは、全力で守るから」

「はい、ありがとうございます」


 すぐにキティが召喚された。

 見慣れぬ森に呼びだされて、キティは困惑している。


「キティ、今、わたくし達〝にゃんこ大好き班〟は、たいへん困った状況にいますの。それであなたの協力が必要なのですが、頑張っていただけますか?」


 アリーセがそうお願いすると、キティは甘い声で『にゃあ!』と鳴いた。

 なんでもアリーセのキティは寮に引きこもってお昼寝するのが何よりも大好きで、一日の楽しみのようだが、私達のために頑張ってくれるらしい。


「キティ、この森にはナイフを持った危ない男がいるようです。察知できたら、教えてくれますか?」

『にゃあ!』


 そう返事をするやいなや、キティは大きな一歩を踏み出した。地面はぬかるんでいるので、キティの美しい毛並みが泥で汚れてしまう。

 それを見たアリーセは悲鳴をあげそうになったが、喉から出る寸前で呑み込んでくれたようだ。


「キティ、あとでお風呂に入れてあげますからね」

『にゃあ』


 アリーセは盛大に気にしているようだが、キティは初めての触り心地に少しわくわくしているように思える。

 これまでキティのことを深窓のお嬢様猫だと思っていたが、好奇心旺盛な性格のようだ。


『にゃ!!』


 キティは勇ましい鳴き声を上げ、進み始める。

 耳をピンと立てて、警戒しながら慎重に進み始めた。

 ゆっくり、ゆっくり進んでいるので、けっこう時間がかかりそうだ。

 けれどもこれくらい用心深く進むほうがいいのかもしれない。

 途中、揺れる葉っぱに心を奪われたり、空を飛ぶ鳥系の幻獣にカカカ! と鳴いたりするのは猫の本能なのでご愛敬だろう。

 しばらく進んだ先で、キティが立ち止まって鳴いた。


『にゃっ!?』


 キティは何か発見したようだ。

 彼女がジッと見つめた先に、ガサゴソという物音が聞こえてくる。

 どくん、と心臓が跳ねた。


「誰だ!?」


 鋭く叫び、草をかき分けるようにして私達のほうへやってくる。

 エアとレナ殿下が私達を守るように先頭に立った。

 相手はずんずん私達のほうへ接近し――姿を現す。


「なーんだ、エア達じゃないか」


 その声を聞いてホッと胸を撫で下ろす。

 やってきたのはクラスメイトの一人だった。


「驚かせやがって」

「それはこっちの台詞だ!」


 エアもドキドキしていたのだろう。胸を押さえながら言い返す。

 他のクラスメイトも続々と現れた。

 別の班である〝攻撃魔法を極め隊〟と遭遇してしまったらしい。

 彼らは薬草の採取をしていて、その手には草木を刈る目的でナイフが握られていた。

 キティはそれに反応したのだろう。


 そして、私達と同じように、この班の宿泊施設まで転移できる魔法札も、インクが滲んでいて使えないような状態になっていた。

 おそらくうちのクラス全員、同じような状況なのだろう。


 彼らに事情を話すかどうかは、リーダーであるレナ殿下に任せた。

 警戒に越したことはないだろうと思って、ナイフを所持している男について報告した。


「うわ、怖え」

「どうしてこんなところにいるんだよ!」

「先を急ぐといい。そして、宿泊施設まで到着したら、誰でもいいから先生に報告してくれ」

「わかった!」


 彼らとはここで別れ、私達は出発地点を目指すこととなった。

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