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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・三章 幻獣保護区でのひと騒動

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湿地エリアへ

 幻獣保護区は薬草が豊富だった。


「ねえ、ヒール薬草がたくさんあるわ!」


 状態もよく、高品質の魔法薬が作れそうな物ばかりである。

 私の隣にしゃがみ込んだノアは、眉間に皺を寄せつつ、ヒール薬草を睨んでいた。


「これ、その辺の雑草にしか見えないんだけれど!」

「でしょう? でも、ぜんぜん違うのよ」


 まず茎や葉が明らかにしっかりしている。さらに、光加減によってはキラキラ輝いて見えるのだ。


「キラキラって、その辺の雑草も太陽の日差しでキラキラしているんだけれど」

「まあ、そうなんだけれど」


 私は魔法薬を作れるから、普通の野草と薬草の違いがはっきりわかるのだろう。

 ヒール薬草を探していたエアが足を踏み入れようとした瞬間、アリーセが慌てた様子で声をかける。


「ん、どうした?」

「足下に火炎キノコがありますわ」

「うわ、やばっ!!」


 回避が間に合わず、エアは火炎キノコを踏みそうになった。

 次の瞬間、エアの使い魔であるリザードが出現し、火炎キノコをぱくりと頬張った。


「リザード!?」


 そんなものを食べて大丈夫なのか、と思ったのだが、リザードは上機嫌な様子でいた。

 そういえば、火属性の幻獣の大好物だとホイップ先生が授業で話していたのを思い出す。


「お前、火炎キノコを食べても平気なんだな!」

「それどころか、おいしそうに召し上がっているように見えます」

「みたいだ」


 何はともあれ、火炎キノコで火傷をせずに済んだのだ。

 レナ殿下が注意を促す。


「ここに来るまでにも、いくつか火炎キノコがあった。足下に気をつけて歩くように」

「はい!」


 傍にいたノアが真剣な様子で返事をしていた。

 その後、順調に進み、湿地帯へと入る。


「あ、熱い……」


 先ほどまで爽やかな森の中にいたのに、湿気を帯びるじめじめした環境へ早変わりする。

 またしても、エルノフィーレ殿下が幻獣を発見したようだ。


「虹ガエルです」

「なんてきれいなの……!」


 手のひらサイズのカエルだが、七色のボディの持ち主だった。

 角度によってさまざまな色に変化する様子を見せている。

 のんびり屋な性格のようで、私達が飽きるまでこの場に留まってくれた。


 幻獣保護区へ入ってから一時間半くらい経っただろうか。

 地図を見る限り、あと少しだけ湿地帯が続きそうだ。

 じめじめとした気候が、皆の体力を奪う。


「この辺りで少し休憩しよう」


 レナ殿下はそう言って、鞄の中からレジャーシートのようなものを取りだす。

 班のメンバー全員が座っても余裕があるような、大きなものだった。

 表面には魔法陣が描かれているようで、気配や姿を遮断できるものらしい。

 皆で腰掛け、しばしの休憩時間とする。


 ノアはハンカチを取りだし、うんざりした様子で汗を拭っていた。


「せっかく朝からかわいくしてきたのに……!」


 セットした髪は乱れ、化粧もぐちゃぐちゃだという。

 そんなノアの言葉に、アリーセも大きく頷いていた。

 そんな二人を見て、ピンと閃く。


「少しだけ雪を降らしましょうか?」

「いいの?」

「ええ!」


 杖を取りだし、呪文を唱える。


「しんしん降る、雪よスノウ!」


 宙に魔法陣が浮かび上がり、はらはらと雪が降ってくる。


「ああ、涼しい! ミシャさん、ありがとう」

「いえいえ」


 ノアやアリーセだけでなく、みんなも喜んでくれた。

 私の雪魔法が初めて役に立った瞬間かもしれない。

 いつの間にかジェムが出てきて、雪をぱくぱく食べていた。

 その様子を見ていたエアも真似をする。


「エア、食べ物じゃないから」

「なんかおいしそうだったから」


 それを聞いて、ピンと閃いた。


「だったら、かき氷でも作りましょうか?」

 

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