新学期の朝
新しい朝を迎える。
なんのも心配のない、心地よい目覚めとは言えないものの、今日から学校だ。
新学期を迎えるわけである。
一学年最後の三学期で、進級に響くような重要な試験もあるし、行者遠足と呼ばれる行事もある。
ヴィルと過ごすことができるのも、この学期で最後だ。
なんだか寂しい気もするが、ヴィルの門出を大いに祝って送り出さなければ。
朝から張り切って、朝食を用意する。
昨日のうちに作っておいたベーグルでサンドイッチを作り、新鮮な卵に生クリームを入れて、滑らかなオムレツを焼く。
アスパラガスを使ったポタージュに、ソーセージと豆の炒め物、ヨーグルトソースのサラダをワンプレートに添えて、春の朝食を完成させた。
テーブルに並べていると、レナ殿下がやってくる。
「おはよう、ミシャ」
「おはよう」
朝からレナ殿下はキラキラ輝いていてかっこいい。
こうして顔を合わせると、新学期が始まったんだな、とわくわくする気持ちが加速する。
「昨日、いただいた食材で朝食を作ったわ」
「ああ、ずっとミシャが作る食事を楽しみにしていた」
レナ殿下は高級食材を、侍女に頼んでどっさり届けてくれていたのだ。
ありがたく使わせてもらい、朝食を作ったのである。
「それにしても、長い長いホリデーだったわね」
「本当に」
ルドルフが邪竜を召喚したことによる被害は甚大なもので、修繕費用はリンデンブルク大公が出してくれたようだ。
「その彼が、行方不明なんだろう?」
「ええ……」
リンデンブルク大公家で軟禁状態にあったのだが、見張りの目を盗んで逃げだしてしまったのだ。
ルドルフが単独でできるとは思えないので、もしかしたら手引きをした者がいるのかもしれない。
「すまない。せっかくの朝食の席で、つまらない話をしてしまった」
それよりも楽しい話をしよう。
レナ殿下はそんなことを言ってくれた。
「三学期は行者遠足があるのよね?」
「ああ」
「いったいどこに行くのかしら?」
「国内にある、幻獣保護区に行くらしい」
幻獣保護区というのは、魔物などが入れないように整備された区画で、竜や鷹獅子などが生息しているという。
「魔石や薬草なども豊富で、採取の時間などもあるらしい」
「なんだか楽しそうだわ」
普通の遠足ではないと聞いていた上に、〝行者〟という言葉もついていることから、とてつもなくきつい行事なのではないかと思っていたのだ。
「行者遠足ではパーティーを組んで行動するようだが、ミシャさえよければ一緒に行かないか?」
「もちろん!」
アリーセやエア、ノアも誘おうという話になった。




