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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・一章 新学期を迎える前に

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新学期の朝

 新しい朝を迎える。

 なんのも心配のない、心地よい目覚めとは言えないものの、今日から学校だ。

 新学期を迎えるわけである。

 一学年最後の三学期エテタームで、進級に響くような重要な試験もあるし、行者遠足アウティングと呼ばれる行事もある。

 ヴィルと過ごすことができるのも、この学期で最後だ。

 なんだか寂しい気もするが、ヴィルの門出を大いに祝って送り出さなければ。


 朝から張り切って、朝食を用意する。

 昨日のうちに作っておいたベーグルでサンドイッチを作り、新鮮な卵に生クリームを入れて、滑らかなオムレツを焼く。

 アスパラガスを使ったポタージュに、ソーセージと豆の炒め物、ヨーグルトソースのサラダをワンプレートに添えて、春の朝食を完成させた。

 テーブルに並べていると、レナ殿下がやってくる。


「おはよう、ミシャ」

「おはよう」


 朝からレナ殿下はキラキラ輝いていてかっこいい。

 こうして顔を合わせると、新学期が始まったんだな、とわくわくする気持ちが加速する。


「昨日、いただいた食材で朝食を作ったわ」

「ああ、ずっとミシャが作る食事を楽しみにしていた」


 レナ殿下は高級食材を、侍女に頼んでどっさり届けてくれていたのだ。

 ありがたく使わせてもらい、朝食を作ったのである。


「それにしても、長い長いホリデーだったわね」

「本当に」


 ルドルフが邪竜を召喚したことによる被害は甚大なもので、修繕費用はリンデンブルク大公が出してくれたようだ。


「その彼が、行方不明なんだろう?」

「ええ……」


 リンデンブルク大公家で軟禁状態にあったのだが、見張りの目を盗んで逃げだしてしまったのだ。

 ルドルフが単独でできるとは思えないので、もしかしたら手引きをした者がいるのかもしれない。


「すまない。せっかくの朝食の席で、つまらない話をしてしまった」


 それよりも楽しい話をしよう。

 レナ殿下はそんなことを言ってくれた。


「三学期は行者遠足アウティングがあるのよね?」

「ああ」

「いったいどこに行くのかしら?」

「国内にある、幻獣保護区に行くらしい」


 幻獣保護区というのは、魔物などが入れないように整備された区画で、ドラゴン鷹獅子グリフォンなどが生息しているという。


「魔石や薬草なども豊富で、採取の時間などもあるらしい」

「なんだか楽しそうだわ」


 普通の遠足ではないと聞いていた上に、〝行者〟という言葉もついていることから、とてつもなくきつい行事なのではないかと思っていたのだ。


行者遠足アウティングではパーティーを組んで行動するようだが、ミシャさえよければ一緒に行かないか?」

「もちろん!」


 アリーセやエア、ノアも誘おうという話になった。 

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