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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・一章 新学期を迎える前に

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ドレスコード

 ひとまず今晩開催されるツィルド伯爵の仮面舞踏会の招待状の入手に成功した。

 知らない間にイカサマを働いていたようだが、相手もキューに魔法をかけて手玉を操っていたので、今回に限ってはお互いさまということにしておく。

 すぐさま夜会へ行く準備をしなければならない。

 招待状にはドレスコードが書かれてあって、〝夜を照らすような眩い装い〟とあった。


「えーっと、これはどういう意味なのでしょう?」

「単純に、夜会が盛り上がるように派手な格好で参加するように、とでも言いたいだけだろう」

「な、なるほど」


 仮面舞踏会に着ていくような、派手なドレスは所持していないのだが……。

 なんて話していたら、ヴィルが安心するように言ってくれた。


「レヴィアタン侯爵夫人に、仮面舞踏会のドレスや仮面を準備するように頼んである」

「そうだったのですね」


 レヴィアタン侯爵夫人は私のドレスの寸法なども把握しているので、問題なく着て行けるだろうとのこと。

 そんなわけで、ヴィルと一緒にレヴィアタン侯爵邸に向かったのだった。

 突然のことだったにもかかわらず、レヴィアタン侯爵夫人は明るく私達を出迎えてくれた。


「頼まれたものは、準備できておりますよ」

「レヴィアタン侯爵夫人、すまない」

「いえいえ、準備、とっても楽しかったので、お気になさらず」


 相変わらず、女神のようなお方である。

 ただ、衣装部屋で着ていく予定のドレスを見て絶句した。


「ミシャさんのドレスは、白ウサギをイメージしました!」


 胸元が大きく開いていて、スカートには大きなスリットが入っている。

 まさかと思って背中のほうへ回り込んだら、布がない!

 がっつり背中が露出しているデザインのようだ。

 それだけでなく、仮面はウサギの長い耳が付いていた。

 白一色で清楚なイメージだが、全体を見たら思いっきり派手な衣装だった。

 どうしたものかと思っていたら、私が何か言うより先に、ヴィルが物申す。


「露出が高すぎるのではないか?」

「首にこのファーのマフラーを巻くから、見えなくなるかと!」


 たしかに、このモコモコのマフラーを巻いたら胸元は見えないだろう。

 しかしながら背中は半分以上見える。

 まあ、胸元が見えないだけいいのか。


「ミシャさん、いかがでしょうか?」

「その、準備してくださり、ありがとうございます。とてもかわいいと思います」


 ドレスだけを見たら。

 これを私が着こなせるのか、心配になる。


「ふふ、そうでしょう? ヴィルフリートさんはこちらです!」


 続いてヴィルの衣装もお披露目となる。

 漆黒のサーコートだった。仮面は黒竜の翼をイメージしたものらしい。


「黒騎士をイメージした一着なんです!」


 ヴィルが絶対に着ないであろう、悪役を思わせる服装だ。

 レヴィアタン侯爵夫人のキラキラとした眼差しを受け止めきれなくなったのか、助けを求めるように私を見る。


「あの、すごくお似合いになると思います!」

「そうか?」

「ええ!」


 すると、ヴィルは黒騎士の衣装を受け入れたようだ。


「時間があまりない。着替えよう」

「わかりました」


 ヴィルは自分で着ることができるようなのだが、私は無理である。

 レヴィアタン侯爵夫人と侍女の手を借り、なんとか着替えることができた。

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