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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・一章 新学期を迎える前に

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話し合い

 ひとまず王宮に用意されたヴィルの部屋に移動し、話を整理することに。


「ツィルド伯爵が仮面舞踏会を今晩開催するとかで」

「どうせ、いかがわしい集まりだろう」


 仮面舞踏会というのは仮面で顔を隠すだけでなく、身分や名前をも偽り、一夜限りの恋の駆け引きを楽しむ催しだという。

 ロマンス小説で登場する仮面舞踏会は、ロマンチックなひとときを過ごすエピソードばかりなのに、現実はそうではないらしい。


「そんな場所にルドルフがいるとは思えないのですが」

「まあ、あの男は探しているのがルドルフ・アンガードだと知らないからな」

「そうでした」


 ジルヴィードはキャロラインの子どもが社交界に紛れ込んでいるのではないか、と思って探しにいったのかもしれない。


「顔も名前も隠している仮面舞踏会に、わざわざ人探しに行く神経が理解できないがな」

「たしかに……」


 エルノフィーレ殿下から振る舞いについて呆れられていたジルヴィードだったが、もしかしたら本当に捜索をサボって、夜な夜な遊び回っているのかもしれない。


「問題はどうやってツィルド伯爵の仮面舞踏会に潜入するか、ですね」

「それについては伝手がある」


 向かう先は紳士クラブだという。


「紳士クラブ、ですか?」

「ああ。そこには社交をめんどくさがる輩が大勢いる。交渉を持ちかけたら、招待状を譲ってもらえるかもしれない」


 ヴィルから紳士クラブについてくるようにと言われるも、あそこは女人禁制である。


「男装でもすればいい」


 王宮にある男性用のお仕着せを借り、髪をまとめるだけで男に見えるだろうとヴィルは言うが……。


 仕事が早いヴィルはすぐにお仕着せを調達し、私に着替えるように言う。


「私は廊下で待っているから」

「はあ」


 初めて男性ものの服に袖を通すも、胸の膨らみが少し気になる。

 矯正下着でもあればいいのだが、と考えた瞬間、ジェムと目が合った。


「あの、ジェム、よかったら、胸が平らに見える下着に変化できる?」


 ジェムは任せろ! とばかりにチカッと輝いた。

 服を脱ぐとジェムが私の体に巻き付く。

 少しひんやりしている上に、ぷるぷるとした触り心地が少しくすぐったい。

 なんて思っている間に、ジェムはいい感じに私の胸元を平らにしてくれた。


「え、すごい! ぜんぜん痛くない!」


 服を着て目立たないように胸を平らにするには、ぎゅっと潰さないと不可能である。

 そうなれば、潰された胸は痛みで悲鳴をあげていただろう。

 ジェムの矯正下着は痛みはまったくない状態で、完璧に潰してくれた。


「これ、コルセットにも使えるのかしら?」


 ジェムは当然! とばかりに光った。

 今度夜会に参加するときは、コルセットに変化してもらおう。


 服を着込んで、髪を解いて低い位置にまとめる。

 姿見で確認すると、従僕に見えなくもない。


「あの、準備ができました」


 ヴィルは私を見るなり、よく似合っていると言ってくれた。

 問題ないようで、ホッと胸をなで下ろす。


「では、行こうか」

「はい!」


 そんなわけで、ツィルド伯爵が開催する仮面舞踏会の招待状を得るために、紳士クラブのクラブ舎へ向かうこととなった。

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