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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・一章 新学期を迎える前に

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ジルヴィードの所在を掴め!

 ヴィルの監督生長の連絡網を使って魔法学校の校長先生から話を聞く機会を設けてもらう。

 そこでジルヴィードの所在を尋ねたところ、現在は教員ではないという。

 ルドルフが起こした騒動の責任を取る形で、辞職となったそうだ。

 しかしながら、ジルヴィードはまだ国内にいるらしい。

 ジルヴィードは一応貴賓扱いで、王宮の一角に部屋を与えられている。

 校長先生と別れて王宮に向かい、ジルヴィードの所在を調べた。

 面会を申し出たところ、ここ数日、王宮に戻っていないという。

 野放し状態なのかと思いきや、外出届が出ている上に、騎士の護衛もついているため、問題ないようだ。

 ジルヴィードもまだルドルフを発見できていないのだろう。

 きっと探しに出かけているに違いない。

 どこに出かけているのかと聞くも、答えてくれなかった。

 ヴィルが国王陛下から預かっている勅命権を使おうとしたそのとき、私達に声をかける者が現れる。


「あら、あなたは――」


 凜とした美しい声が聞こえて振り返ると、エルノフィーレ殿下が立っていた。


「お久しぶりですね」

「ええ、本当に」


 エルノフィーレ殿下とは一ヶ月近く会っていなかった。ホリデーに入ってからというもの、会う機会などなかったのだ。


「ホリデー中、あなたとお話ししたいと思っていたのですが、どうやって連絡を取ればいいのかもわからず」

「そうだったのですね」


 まさかそんなふうに面会を望まれていたとは。私も少しどのようにしてお過ごしか気になっていたのだ。ただ、私のほうからお誘いするなんて恐れ多いお相手である。


「今日はどうしてここに?」

「エルノフィーレ殿下の従兄殿に会いにやってきたのですが」

「ジルヴィードですか。あの人は相変わらず、遊び回っているようです」


 サーベルト大公の命令で動いているのに、遊んでいる扱いされる哀れなジルヴィードに笑ってしまいそうになる。

 勘違いされてしまうのは、完全に普段の振る舞いが原因だろう。


「どこに行ったか、わかりますか?」

「今日は仮面舞踏会がどうこうと話していたようです」

「仮面舞踏会、ですか?」

「ええ。なんと言っていたのか、ツィルド伯爵邸にて開催されるとかで……」

「ツィルド伯爵!」


 まさかここで有力情報が聞けるとは。


「ありがとうございます!」

「ジルヴィードに何かご用なのですか?」

「宝石魔法について、少し聞きたいことがありまして」

「そうですか。ジルヴィードは国内でも一、二を争う宝石魔法の使い手ですので、きっとお役に立てると思います」


 宝石魔法が使えるというだけで教壇に立っていたと思いきや、しっかり実力があったようだ。まったくそういうふうには見えない。

 もう少しへらへらした態度を改めたらいいのに、余計なことながら思ってしまった。


 とにかく、ジルヴィードの行き先は掴めた。

 あとはどうにかして捕獲するばかりである。

 エルノフィーレ殿下の記憶力に感謝しなければならないだろう。


「エルノフィーレ殿下、ありがとうございました」

「お役に立てたのならば幸いです」


 エルノフィーレ殿下はまだ私と話したい雰囲気を放っていたものの、ツィルド伯爵邸で行われる仮面舞踏会について調べないといけない。


「今度ゆっくりお茶でも飲んでくださいね」

「ええ、楽しみにしております」


 後ろ髪を引かれる思いで、エルノフィーレ殿下のもとを去ったのだった。

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