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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
幕間 楽しいホリデーを!

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パーティーの準備をしよう

 パジャマパーティーのドレスコードは着ぐるみ風パジャマ。

 参加条件は、ベッドの上でみんなと一緒にやりたいことをすること。

 普段であれば許されないようなメンバーでの開催ということで、時間が経つにつれてなんだかワクワクしてきた。

 夕食を一緒に囲んだのだが、皆、少しソワソワしている気がする。

 完全にパジャマパーティーが楽しみで、食事に集中できていなかった。


 ヴィルの姿がなかったのでノアに聞いたところ、紳士クラブからのお誘いがあって出かけたという。

 紳士クラブというのは貴族男性の集まりで、カードやビリヤード、ダーツなどをして遊んだり、情報交換や食事、お酒を飲んだりなど、さまざまな目的で集まって、気心が知れた仲間と楽しい時間を過ごすようだ。

 ヴィルが所属しているのは、会員制の選ばれた紳士しか所属できない集まりなのだろう。

 会員に紹介してもらえないと入れない上に、多額の入会金がかかるのはお決まりである。

 ヴィルはそういう場所に好き好んで行くとは思えないのだが、きっと何かしらの情報収集のために向かったに違いない。

 ノアが買った着ぐるみ風パジャマを渡すのは、明日以降になりそうだ。


 夕食を終え、手早くお風呂に入り、着ぐるみ風パジャマを手に取る。

 上下が繋がったつなぎみたいな作りで、フード部分に目が刺繍されている。

 この半開きのジトッとした瞳と、ムッとした口元がジェムにそっくりだった。

 背中のボタンを外して着てみると、魔法陣が浮かんで生地が一瞬動く。

 サイズ調整を魔法で行う仕様だと聞いていたので、自動で発動したのだろう。

 ボタンも魔法で締められるようで地味に助かる。

 ゆったりしたシルエットなのでかなり楽で、着心地もいい。

 頭巾を被って鏡を覗き込んでみる。なかなかかわいいのではないか、と自画自賛した。 着た姿をジェムにお披露目してみたが、「ふーーん」という感じで興味なし。


「これからパジャマパーティーなの。ジェムも行く?」


 一瞬チカッと光る。この反応は「まあ、ほどほどに付き合ってやるか」みたいな感じか。 そしてパジャマパーティーでやりたいことは決まっていた。

 ここにやってくる前に、滞在期間中にみんなでやろうと思って準備していたものである。

 喜んでくれるといいのだが。 


 そろそろ時間になりそうなので、ノアが作ってくれたパジャマパーティーの招待状を手に取った。

 場所について詳しく聞いておらず、迎えのメイドがやってくるものだと思っていたが――。


「え!?」


 招待状に魔法陣が浮かび、くるりと景色が入れ替わる。

 転移魔法だ! と気付いた頃には新たな部屋に下りたっていた。


「ミシャさん、いらっしゃい!」


 マオルヴルフを胸に抱き、着ぐるみ風パジャマを着たノアが迎えてくれた。


「ジェムも来てくれたんだ」

「あ、そうみたい」


 少し離れた場所にいたジェムだったが、きちんと転移魔法に捕捉され、ついてきていたようだ。


「ミシャさんのジェムのパジャマ、とても似合っている」

「マオルヴルフのパジャマも素敵だわ」

「ありがとう」


 念願のパジャマパーティーの開催だからか、ノアはとても嬉しそうだった。

 楽しいパーティーになりそうだ。

 なんて考えつつノアと会話していたら、ふと、背後に誰かが座っていることに気付く。

 真っ赤な着ぐるみ風パジャマを身にまとい、腕組みして腰掛ける人物に。


「なっ、あ、あのお方は……!?」


 あろうことか、リンデンブルク大公が紅竜に似た着ぐるみ風パジャマを着た姿でいたのだ。 

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