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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
幕間 楽しいホリデーを!

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想定外のパジャマ

 エアはノアと一緒に嬉しそうな表情で戻ってきた。

 何を選んできたのかと思えば、赤トカゲの着ぐるみ風パジャマがあったようだ。


「見てくれ、かっこいいだろう?」

「リザードにそっくりね」

「そうなんだ!」


 美意識が高いノアが、こんなパジャマの購入を許してくれることが意外だった。

 なんて思っていたら、ノアもパジャマを持っていた。


「ノアはどんなパジャマにしたの?」

「これ」


 少し照れたような表情で見せたのは、ノアの使い魔、モグラの魔法生物マオルヴルフにそっくりの着ぐるみ風パジャマだった。

 まさかノアも、こういうのを着たい願望があったなんて。

 意外に思っていたら、アリーセも食いついてきた。


「猫のパジャマもありました?」

「あったよ。スライムっぽいのもあった」


 ノアは他のバリエーションもしっかりチェックしていたらしい。

 アリーセがそれも欲しいというので、売り場を見てみる。

 目にした途端、瞳を輝かせて手に取っていた。


「キティですわ!!」


 アリーセはキティにそっくりな着ぐるみ風パジャマを実家の付けで購入すると言ったが、支払いのすべてはミュラー男爵勘定になるという。


「どうしましょう、わたくし、お金は持っていませんの」

「おじさんに会ったときに、アリーセの実家に請求するように言っておこうか?」

「よろしいのですか?」

「ああ」

「じゃあ、僕もそうしよう」


 ノアが手に取ったのは、一角馬ユニコーン聖竜セイント・ドラゴンの着ぐるみ風パジャマ。


「レナハルト殿下と、お兄様の分も買っておこうと思って」


 ちらりと赤竜の着ぐるみ風パジャマも発見してしまう。


「あの、ノア。その紅色の竜、リンデンブルク大公の使い魔に似てない? 買って帰ったら?」

「本当だ。でもお父様がこんなパジャマを着るわけないし」


 どうしてか、着ている姿しか想像できないのだが……。


「まあ、ミシャさんがそこまで言うのならば、買っていくけれど」


 私もジェムに似ているという着ぐるみ風パジャマを手に取ってみる。


「たしかに、かわいいかも」


 みんなでお揃いの着ぐるみ風パジャマでパーティーを開くのも楽しいだろう。

 最初に選んだパジャマは、夜の女子会のときにでも使わせていただこう。

 そんなわけで、パジャマを精算する。

 一着一着丁寧に箱に詰められ、転移魔法でリンデンブルク大公家の別邸へ送られたようだ。

 ドワーフ族の店員に見送られながら、お店をあとにした。

 宇宙空間へと戻ってくる。

 エルフの店員が待ち構えていて、優しく声をかけてくれた。


「他に必要なお品などはありますでしょうか?」


 皆で揃って首を横に振る。


「では、お出口はあちらになります」


 ブラックホールみたいな渦が発生した。なんでもリンデンブルク大公家の別邸に繋がっているらしい。

 転移魔法とは異なる形をしているので、少し戸惑う。

 エアはおかまいなしに、飛び込んでいった。


「怖い物知らずだ」


 ノアが呆然としたように言う。


「手を繋いで一緒に行きましょうか?」

「う……いいの?」

「ええ」

「ミシャ、わたくしも一緒に行きたいです」

「だったら、三人で手を繋いでいきましょう」


 そんなわけでノアやアリーセと手を繋ぎ、意を決してブラックホールへ飛び込んだ。

 転移魔法とは異なり、吸い込まれていくような感覚があった。

 けれどもそれは一瞬で、ぎゅっと閉じた目を開いたときには、リンデンブルク大公家の別邸に下りたっていたのである。


 無事、戻ってくることができたので、ホッと胸をなで下ろしたのだった。

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